オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

神話のメタファとロバート・パティンソンと~『ライトハウス』(A24)


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 黄金町のミニシアター「ジャック&べティ横濱」で『ライトハウス』観賞。つい昨日までレイトだったけど、今日から朝イチの回に変わったので早速行って参りました🎵朝の黄金町は夜の貌とうって変わって一種の廃墟感が漂い、「ツワモノどもが夢の跡…」とか呟きながら、映画館までの道を歩くヲタク(笑)

 

ライトハウス』は、良作・問題作を近来次々と世に送り出している映画プロダクション「A24」の製作によるもの。ここが製作した映画だと聞けば、ヲタクほとんど見に行ってますが、9割がたハズレがないもんね~🎵この信頼度はスゴいことだよ、うん😊今回の『ライトハウス』も、ただのスリラー映画ぢゃない、見るうちに人間の心の深淵を覗きこむ恐ろしさに戦慄し、古典や神話、聖書等の目眩くようなメタファに魅了される。さすがA24❗な1作であります。

 

  19世紀末、ニューイングランド沖の孤島にある灯台(ライトハウス)に灯台守として赴任した二人の男。灯台の主のようなトーマス(ウィレム・デフォー)に、無口な新人イーフレイム(ロバート・パティンソン)は奴隷のようにこき使われ、彼の心にトーマスへの憎悪が膨れ上がり、それが極限に達しようとした時、孤島は嵐に見舞われ、二人は恐るべき運命に見舞われることになります。

 

  モノクローム画面の凄絶な美しさ。映画『サイコ』や『めまい』を想起させる、神経に触るような禍々しい音楽をバックに、ロバート・パティンソンを乗せた船が荒れ狂う海を越えて島に近づいていくシーンは、まるであのサイレント映画吸血鬼ノスフェラトゥ』(ムルナウ)で、吸血鬼の城に馬車で近づいていくシーンのよう。…と思ったら、映画を見た後で読んだロバート・エガース監督のインタビューで、『ノスフェラトゥ』を好きなスリラー映画No.1に挙げていて、納得😅その後も、パティンソンの長い影が壁に映るシーンがあり、ムルナウの影響が大きいことを窺わせます。…そう言えば、彼の出世作は吸血鬼役だったっけ。大昔のことのように思える…(遠い眼)

 

  パティンソン演じるイーフレイム・ウィンスローは、絶対的な権力を振るうトーマスの前に、次第に常軌を逸していき、度々悪夢や幻覚を見るようになるのですが、そこには、彼自身が過去に犯した罪に苛まれているという心理的背景があるわけです。舞台がニューイングランド沖の孤島…というのが気になるな。ニューイングランドはメイフラワー号で清教徒(ピューリタン)の一団がアメリカ大陸に最初に入植した場所。ピューリタンは清貧を旨とし、厳格な戒律で知られます。容赦なき神の代理人の役割を、トーマスが担っていると感じるのはヲタクだけ❓😅

 

  一方、聖書における罪の概念に現代的な味付けもなされていて、彼の見る悪夢の内容は、フロイトの言うリビドーを表しているような気がしますし、トーマスの絶対的父権に対する憎しみと去勢恐怖はフロイト的なオイディプス・コンプレックスそのものでしょう。

 

  トーマスは、汚れ仕事は全てイーフレイムにさせ、「灯台の灯りを守るのは自分だけ」と言い捨て、灯台の最上部の小部屋(灯がくるくると回転している場所)から決して出ようとはしません。イーフレイムが暴力で脅そうと、膝まづいて哀願しようと。その後の恐るべき展開は、プロメテウス神話を思わせるものですが、ヲタクの想像は、美と恐怖が融合したおぞましきラストシーンの衝撃で決定的なものとなりました。この映画では、サイレント期からトーキーに移行する時期に流行したという正方形の画面が使用されていて、モノクロの魅力が最大限に生かされていますし、度々繰り返される絵画的な美しいシーンにもぴったりハマっています。

 

 そしてそして、何と言ってもロバート・パティンソン❗ 『トワイライト』シリーズで一世を風靡し、若くして億万長者になった時は、このままイケイケのイケメンアイドル路線で行くのかと思いきや、ネームバリューもイケメンイメージもなげうって、主役脇役チョイ役何でもござれの演技派に成長♥️特に最近では、Netflix『悪魔はいつもそこに』(トム・ホランド主演)の外道の牧師役や、『キング』(ティモシー・シャラメ)の尊大な小心者王太子ルイ(シャラメに決闘でメッタメタにされるカッコ悪い役😅)等々で、出番は少ないけど強烈な印象を残しました。今作でも、大ベテランのウィレム・デフォーを向こうに回し、堂々たる演技を見せてくれます。この二人の熾烈な演技合戦も見所のひとつ。

 

  今回の難役を演じるにあたり、監督のエガースと納得がいくまで話し合ったというパティンソン。DCユニバースでバットマンを演じることが発表されましたが、闇深く、正義と悪の間で綱渡りを続けるダークヒーローにはぴったり❗クリスチャン・ベールの跡目を継ぐのは彼しかいないでしょう😊

 

  黒澤明など日本映画の影響も大いに受けているというロバート・エガース監督の『ライトハウス』。A24がまたもや世に問う衝撃作です。