昨日(10月24日)にオープニングセレモニーが行われた第35回東京国際映画祭。ヲタクにとっては鑑賞第1作目の映画が、この『ラ・ハウリア』(フランス・コロンビア)。ラテンビート映画祭と銘打って上映される作品群のうちの1つですが、なんだかしょっぱなから強烈なボディブロー喰らったって感じで😅
主人公の少年エリウは、母親を虐待する父親を憎んでおり、彼を射殺するつもりが、間違って不良仲間マシアスの叔父を殺してしまい、友人エル・モノと一緒に熱帯雨林の洞窟に遺体を遺棄します。すぐに逮捕されたものの、移送されたのは刑務所ではなく、熱帯雨林の奥深くにある未成年犯罪者の実験的な矯正施設でした。十代の若者ばかりが収容されているその施設では、守衛の暴虐が横行し、食物もろくに与えられないまま過酷な肉体労働を課せられ、そうかと思えば一方では、怪しげなセラピーが行われる……という具合。大人たちの都合と欲望のままに翻弄される少年たち。そんな日々の中、少年たちは次第に不安と焦燥に駆られ、さらには精神のバランスを崩していき……❗
まずもって 収容されている少年たち(注・14~16才)の会話が恐ろしすぎる((( ;゚Д゚)))
家庭で虐待を受けた末に犯罪に走った彼らの主な関心事は、どんな麻薬が好きか、酒とどうミックスしたら一番ハイになれるかということ。まずもってこの矯正施設も名ばかり、土地のオーナーが金儲けの為に施設を建設しているので、少年たちはその為に過酷な重労働を強いられ、搾取されるという負のループ、絶望的な状況なのです。少年たちの中で唯一、(このままではいけない、自分が変わらなければ)と感じている(らしい)のが主人公のエリウ。しかし彼の望みも、唯一彼に理解を示していたセラピストが激情に駆られ、少年の一人を溺死させた末に自死してしまったことで、打ち砕かれてしまいます。
中南米諸国の中でも、ホンジュラスやエルサルバドルに次いで特に危険な国とされているコロンビア。Googleアースで検索したら、道に倒れている人が映った……とか。日常的にスリやひったくり、置き引きなどの軽犯罪だけではなく、殺人や誘拐、麻薬の密売などの重犯罪も多発すると言われています。東京国際映画祭のHPの紹介によれば、監督のアンドレス・ラミレス・プリードは、2016年の短編『El Edén』でベルリン国際映画祭ジェネレーション部門ノミネート、2017年の短編『Damiana』でカンヌ国際映画祭最優秀短編賞ノミネートを受けた、今注目の監督のようです。今作品『ラ・ハウリア』も、カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを受賞し、プリード監督自身もカメラドール(新人監督賞)にノミネートされたそう。
あまりの過酷な環境に置かれた為に、一切の感情も、言葉さえ失ってしまったかに見える主人公の少年エリウ。同時に浮き彫りにされるのが、大人たちの腐敗と無責任さ。エリウの硝子玉のような無気力な眼を通して、 母国の現状を、冷徹なタッチで描き出したプリード監督。全編を流れる、神経に障るような不穏な音楽の底に、彼の声なき叫びを聞いたような気がしたのは、ヲタクの錯覚だったのでしょうか❓
非常にマイナーな作品なので、果たして日本でこれから劇場公開されるか、また動画配信されるか否かは全くの未知数ですが、もし機会があったらぜひ見てみて下さい。日本から一番遠い国、地球の裏側で今、何が起きているのか知るためにも。