アマゾンプライムビデオにて英国ドラマ『フリーバッグ』鑑賞。面白すぎて止められなくて、シーズン1&2全12話、2日間で見終わってしまった……。会話の機微を読み取り、その隠れた面白さに度々爆笑しながら、しまいには心がジーンと熱くなる、お気に入りの場面を繰り返し見たくなる。……しかし夢中になって見終わった後はたまらない寂寥感が襲ってきて、(しょせん、ドラマという虚構の世界なんだから)と思ってみても、このある種の悲しさは拭い去れない……。シンからハマってしまった映画やドラマについては、ヲタクはいつもこんな感じ(^_^;)
※ヒロインは最後まで本名で呼ばれません。あだ名のフリーバッグは、「小汚い、みすぼらしい」の意。フィービー・ウォーラー=ブリッジはこの作品で制作総指揮、脚本、監督、主演を務め、大注目を浴びました。彼女は演劇の名門ロイヤル・アカデミー・オブ・ドラマティック・アート(RADA)卒、両親共に貴族出身という正真正銘のお嬢ですが、幼少期のあだ名がフリーバッグだったとか…(^_^;)そんなギャップも彼女の魅力のひとつ。
★シーズン1
ロンドンの街の片隅で小さなカフェを経営するフリーバッグ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)。店はいつも閑古鳥で、たまに入ってきた客には冷凍食品をチンして出すヤル気の無さ(^_^;)同棲中の彼ともいまいちうまくいきません。カフェの経営も行き詰まり、店を明け渡す期限が迫った為に銀行に融資を頼みに行く彼女でしたが、担当の中年オジサンとふとしたことで大ゲンカ、互いにクソ呼ばわりするはめに……。そんな彼女が逃げる先は人肌の温もり。セフレの彼や行きずりの相手と、所構わずヤリまくるフリーバッグ(^.^;しかしもちろんそんなことで心が満たされるわけではなく、時折激しい自己嫌悪の情が湧いてきて……。
※ドジでぶきっちょで直情径行型のフリーバッグとは正反対、弁護士でバリバリキャリア、冷静沈着な(頭でっかちともいう 笑)姉クレア(シアン・クリフォード)。フリーバッグとは一見毒舌の応酬のように見えるけど、お互いに深く相手を思いやっているところが滲み出ていて胸アツ。フリーバッグは日頃お姉ちゃんにアタマが上がらないんだけど、お姉ちゃんもじつはフリーバッグの無鉄砲ともいえる行動力を羨ましいと思っていたことがわかるシーン、姉妹あるある。
回を重ねるうち、彼女の無軌道とも言える奔放な毎日が、カフェを共に立ち上げたブー(ボクの可愛い彼女といった意…ジェニー・レインスフォード)の死に起因していることが次第に明らかになっていきます。ブーは付き合っていた彼に浮気され、彼の気持ちを取り戻すため車に飛び込み(彼女はただちょっとケガをするつもりだったのですが(^.^;)打ちどころが悪くて死んでしまったのです。ラスト、ブーの事故の真相が初めて明かされ、観ている私たちは(あー、そーだったのか❗)と、ヒザを打って納得するしくみ。
フリーバッグは美人でスタイルばつぐん、洋服のセンスもイケていて、一見自信満々に見えます。男たちはそんな彼女の外見だけを見て近よってきて、安易に肉体関係を結ぶわけですが、フタを開けると彼女は、自己嫌悪や過去のトラウマ、対人関係の不器用さに悩んでいる設定。これって、フィービー・ウォーラー=ブリッジの、男性社会へのある意味痛烈な皮肉と受け取れなくもありません。フリーバッグの「ホンネ」は、「※第四の壁と呼ばれる演劇手法を破る」ことで私たち視聴者だけに語られるしくみ。私たち視聴者はドラマを見ているうちに、フリーバッグの空想の友人(イマジナリーフレンド)化していくのです。彼女のホンネを知れば、彼女の隠れた優しさや一生懸命さがわかると思うのに、彼女のカラダだけがお目当ての男たちはそれを知ろうともしないのです。
※第四の壁は、舞台上の虚構の物語と観客の間に存在している「見えない壁」。 通常、観客は第四の壁の存在を意識することなく受け入れていて、あたかも現実の出来事を観察しているかのように劇を楽しんでいます。 第四の壁の存在は、観客が舞台上の虚構の物語を観劇する際の約束事の一つ。フリーバッグはその壁を軽々と乗り越え、私たち視聴者に直接話しかけてきます。
※フリーバッグの宿敵❓パパの後妻のゴッド・マザー(オリビア・コールマン)。親切そうに笑いながらじつは、その底にとんでもない悪意と傲慢さを滲ませるビッチを、コールマンが小憎らしいくらい巧妙に演じています。
★シーズン2
シーズン2では、紆余曲折の末銀行の融資担当のオジサンと仲直り、「カフェを地元の人たちの交流の場にする」というフリーバッグのアイデアが当たってカフェは繁盛、シーズン1では「愛の迷い子」…というか「愛の暴徒」❓だったフリーバッグがちょっぴりオトナになって登場します。(突如として予測不可能な行動に出るのはシーズン1と同様ですが(^.^;)
シーズン2で彼女は、人生で初めての恋をするのですが、お相手はなんと、カトリックの司祭。※カトリックの司祭は世俗の恋愛も妻帯も認められていませんから、言わば禁断の許されざる恋。「神さまと私とどちらを選ぶの❓」と、無神論者のフリーバッグは大胆発言を当の神父にカマしますが、しっかり者のお姉ちゃんクレアからは「あんたってホント(厄介事に首を突っ込む)天才ね」と呆れられる始末。
※2019年10月には、中南米から数百人の司教がバチカンに集まり、「既婚男性を神父として叙階する許可を、司教に与えてほしい」と願い出ました。この時点では、カトリック界にも変革が訪れるかと目されましたが、ローマ教皇フランシスコは2020年1月、この嘆願を却下しています。神父が結婚する場合は今のところ還俗するしか方法はありません。
……だけどねぇ、ヲタク的には、こと恋愛に関しては海千山千(…のはず)のフリーバッグと、ホット・プリースト(「イケてる神父」の意…アンドリュー・スコット)の純粋で不器用な恋愛模様がもう、胸キュンモノで。このトシになると恋愛ドラマってめったに見ないし、見ても大概は(ふーーん、若いっていいわねぇ)で終わっちゃうんだけど、今回はひさびさにドキドキしたなぁ(*˘︶˘*).。.:*♡
※可愛くて男前で、慎重で大胆で、真面目でフザケてるホット・プリースト(アンドリュー・スコット)。神父だからって、こんな魅力的なイケメンに恋しなくてどーする❗(笑)
そしてなんとこの司祭、登場人物の中で唯一、第四の壁を飛び越えて視聴者に語りかけるフリーバッグのホンネ、つまり心の声を聞き分けることができる設定。この事実だけでも、2人の恋の本気度がわかろうというもの。
※フリーバッグにとってホット・プリーストは、初めて彼女自身の人間性を丸ごと愛し、彼女の心の声に耳を傾けてくれる存在だったのですが……。
この何でもアリの世の中、SEX依存症ぎみのフリーバッグが恋する相手がよりにもよってカトリックの司祭……まずもってその奇抜なアイデアに脱帽ですが、ホット・プリーストを演じたアンドリュー・スコットは自身がゲイであることを公表しているので、プライベートな彼自身が妙にホット・プリーストのキャラとシンクロするんですよ。……だってゲイのイケメンって、カトリックの司祭以上に私たち女子にとって手の届かない存在じゃないですか。アンドリュー・スコットって、10年くらい前にあのプーチンが「反同性愛法」を制定した時に自身がゲイであることを公表したんですね。その時の発言がもう、めっちゃカッコよくてね。
嬉しいことに、今じゃみんなゲイのことを性格的欠点とは見なさないよね。でもこれは親切みたいな美徳じゃないし、バンジョーが弾けるみたいな特技でもない。ただの事実なんだ。勿論、ゲイだということは自分の特徴の一部ではあるけれど、これにつけ込んで何かしようとは思わないよ。
くーーっ、こんな発言聞いて沼落ちしない女子なんている❓フリーバッグの切なさともどかしさが胸に染みるわ(笑)
もっと巧く立ち回る生き方もあると思うのに、ありったけの情熱を傾けて、全力でロンドンの街を駆け抜けるフリーバッグ。彼女と一緒に泣いたり笑ったり怒ったりするうちに、いつのまにか彼女や彼女の周りの愛すべき人たちのことが大好きになっている……そんなドラマ。第3シーズン制作の話もチラホラ出てるみたいですね。さらに成長したフリーバッグの姿もぜひ見てみたいものです。彼女のイマジナリーフレンドとしては(笑)
※エミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞を総ナメ、話題を独占した『フリーバッグ』。
※『フリーバッグ』の共演がきっかけで大親友同士になったというフィービーとアンドリュー。ホット・プリースト役でゴールデングローブ賞にノミネートされたアンドリューが真っ先に電話をかけた相手はフィービーだったそう。2人が再共演するプロジェクトが進行中だということで、楽しみです♥