オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

母乳なみに溢れる才気〜石井裕也監督『愛にイナズマ』


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KINOシネマ横浜みなとみらいにて、『愛にイナズマ』(石井裕也監督)鑑賞。

 

 ヲタク的には、久しぶりの石井監督作品です。『生きちゃった』(2020年)以来かなぁ…。『生きちゃった』、早く見たくて、横浜に来るのが待てなくて、ニガテな渋谷まで行って見たんだっけ。(ヲタクは人混みがめちゃくちゃニガテなんである。あの有名なスクランブル交差点なんて、どこ歩いたらいいかわからなくて死にそうになる(^.^;)

 

 でも調べたてみたら、それから監督、『茜色に焼かれる』と『アジアの天使』撮ってるんだよねぇ。(現在公開中の映画『月』、公開は10月13日だけど、撮影時期は『愛にイナズマ』より後だったらしい)驚くほど多作。やっぱり天才なのね。ほら、モーツァルトって自分でうんうん苦しまずに、音が切れ目なく「降りてきた」って言うじゃない❓ユーミンの「才能=母乳」説、なんてのもあったね。搾れば搾るほど溢れ出てくる……ってヤツ。石井監督の作品もユーミンと同じ匂いがするのね(笑)どんなにシリアスで重厚な作品であっても、監督の作品にはどこか風穴が空いていて、爽やかな風が吹いている。「軽み」や「おかしみ」がある。天才の仕業と言わずして、何と言おう。
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※今宵のみなとみらい。暖かいからピンと来ないけど、もうすぐ師走なんだよねぇ…。

 

 ……って、前置きはこれくらいにして、監督の最新作『愛にイナズマ』のお話し。

 

 新進の映画監督折村花子(松岡茉優)は自主制作で映画を撮り続けている新進の映画監督。大学の映画研究会にいそうなタイプ(笑)自身のWikiページが作成されているのが密かな自慢❓でしたが、実は家賃滞納で退去を迫られているようなボンビーガール。そんな彼女のところに、制作費1,500万円で商業映画デビューという夢のような話が舞い込みます。全精力を注いで撮影に取り組む花子でしたが、一本気で理想家肌の彼女は、二言目には「この業界は、そんなもんじゃない」「若いねぇ」と彼女を小馬鹿にする、世間ずれしたプロデューサー(MEGUMI)や助監督(三浦貴大)と度々衝突するようになり、日に日に彼らとの亀裂は深まるばかり。そんなある日、花子は街角で、喧嘩の仲裁に入ったことで不良に殴られてしまった若い男を見かけ、心惹かれます。その直後、ふらりと立ち寄ったバーで、先程の若い男、舘正夫(窪田正孝)と運命の再会を果たす花子でしたが……❗


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※大御所俳優を演出する夢破れて、家族のドキュメンタリーを撮る羽目になった花子。花子の趣味で赤い衣装を着せられている男たちの表情が哀しくも可笑しい。

 

 正夫と、まさにイナズマみたいな劇的な出逢いをした後、さんざん所謂「ギョーカイのジョーシキ」に振り回された末に監督から外され、どん底に落とされてしまう花子。「ぬぉぉぉ〜〜〜❗絶対あきらめない、リベンジしてやるぅぅ〜〜」とこぶしを振り上げる花子の姿を見てヲタクは、(んん❓これは昨今流行りの女性のお仕事ドラマ「女版・半沢直樹」華麗なるリベンジストーリーか❓それとも「愛も仕事も手に入れてやる❗」な欲張り系❓はたまた「この出会い、1億ボルト」って言うくらいだから、全てを捨てて愛に走る系❓と、アタマぐるぐるさせながら見ておりましたが、どれも外れた(笑)

 

 一言で説明するなら、しごく真っ当な、心温まる家族愛の物語なんでした。……前半の、イマドキ女子のお仕事&恋愛事情、映画ギョーカイの裏ばなしを描くシニカルなタッチから一転して、ある意味予定調和的な、そして昔ながらの義理人情溢れる後半の展開は良い意味で予想を裏切ってくれてとても心地良かった❗そんな中にも、石井監督らしいシャレやユーモア満載で、ヲタクは何度もガハハと大笑いしたくてたまらなかったのだけれど、周りの方たちがしごく神妙な感じで見ているので、ずっと笑いを噛み殺して苦しかったのだった(笑)

 

 ヒロインの松岡茉優はもちろんのこと、社長秘書で高い車を乗り回し、物質主義のカタマリみたいに見えながらじつは誰よりもアツイ男、長男・誠一(池松壮亮)、生真面目で内向的、カトリック神父の次男・雄二(若葉竜也)、いぶし銀の魅力、父ちゃん役の佐藤浩市、心の闇を抱えた無名俳優役の仲野太賀、クズなパリピ社長の高良健吾、無表情なスマホショップ店員役の趣里……等等、主演級から脇役チョイ役カメオ出演に至るまで適材適所、よくもまあこんなに集めたな、っていうくらいゴージャスなキャスティング❗

 

 ……そしてそして、特筆すべきは窪田正孝ですよ❗石井監督の作品にはよく、打ちひしがれる主人公の心を救ってくれる、ピュアで真っ直ぐな、エンジェルみたいな神さまみたいな存在が出てくるんでしょう❓主人公が人生の道を踏み外しそうになった時、(道はこっちだよ)って指し示してくれる存在。大島弓子の『リベルテ144時間』で、主人公が山で遭難しかかった時に道しるべとなってくれた誰か……みたいな。(殆ど誰もわからないようなたとえ 笑)今作の窪田クンがまさにそれ。なんかもう、恋愛においても全く相手に見返りを求めない、アガペーの化身みたい。か、かわゆす……😍本来ならカトリック神父の修二(若葉竜也)がその役を担うべきなんでしょうが、花子に「このカルト❗」って罵られたり、停電中にお酒飲んじゃったり、長男・誠一がオレオレ詐欺を目論む悪い輩たちのところへ殴り込み❓に行くのを止めなかったり……で、かなりの破戒僧っぷり、あんまり役に立たないんでした(笑)

 

 殺伐としたニュースが世間を騒がせる今日この頃。『愛にイナズマ』は、ヲタクの乾き切った心をめっちゃ潤してくれたの。テーマソングはエレカシの『ココロのままに』。こちらもステキな、作品にぴったりの曲だった。

 

 石井裕也監督、ステキな作品ありがとう❗❗