オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想、推し活のつれづれなどを呟いたりする気ままなブログ。

あまりにも美しく、あまりにも残酷〜東京国際映画祭2023『異人たち』

 
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 ヒューリックホール東京にて、東京国際映画祭2023の正式出品作品『異人たち』鑑賞。

 

 ヲタク的には今年の東京国際映画祭、1番の目玉はこれ❗……もう1年くらい前から、海外のネット記事や雑誌に取り上げられ、ロッテントマトでも驚異の数字を叩き出し、あらゆるところで絶賛の嵐だったので、ヲタクの期待度はいや増すばかり(^.^; あー、今日の日を無事に迎えることができてよかったし、ウワサに違わず素晴らしい作品だった❗アンドリュー・ヘイ監督、本当にありがとう。上映の前に監督のコメントが流れましたが、「この作品は、日本の脚本家、山田太一さんの『異人たちとの夏』に着想を得て作られたものです。多大なご協力を頂いた山田さんのご家族に感謝申し上げたい…そして皆さん❗日本で最初にこの作品を見ることができるのは、皆さんなんですよ」というヘイ監督の穏やかで温かい語り口、多少無理してでも見に来てよかったという気持ちが溢れてくる。日本での一般公開は来年4月を予定されているそうですが、ヲタクはきっと、半年も待てなかったよ。



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※同じ喪失感と孤独を抱えながら、少しずつ心の距離を縮めていくアダム(アンドリュー・スコット)とハリー(ポール・メスカル)でしたが…。

 

 ロンドンの街を見下ろすタワマンに一人暮らす脚本家のアダム(アンドリュー・スコット)。同年代の友人たちは皆家族を持って郊外の一軒家暮しですが、独身でしかもゲイである彼は、今日も圧倒的な孤独を持て余しながら暮らしています。そんなある夜、同じマンションの階下に住む若い男ハリー(ポール・メスカル)が※ウィスキーの瓶を抱えてアダムの部屋をノックします。「もしよかったら、一緒に飲まない…❓」と。ハリーの少し不安げな蒼い瞳の中に、自分と同じ淋しさと哀しみを見出し、彼に心惹かれたアダムでしたが、過去のトラウマから新たな人間関係を作るのをずっと避けて生きてきた彼は、心にもなく「遠慮しとく」と答えてしまうのでした。傷ついた様子でしょんぼりと帰っていくハリー。後悔に苛まれて、益々孤独感を募らせるアダムは、古い家族写真を見つけて、ふと思い立ち、昔両親と住んでいたロンドン郊外の家を見に行くことにします。(今はどんな人が住んでいるのだろう❓)思わず家の扉をノックするアダム。出てきた人を見たアダムは驚愕して声も出ません。30年以上前に急死した筈の彼の母親(クレア・フォイ)が、若き日そのままの姿で現れたからです……❗

※ハリーは「日本のウィスキーなんだ。日本のウィスキーは世界一だって言うけど、どうなのかな」ってアダムを誘うんですね。原作者が日本人の山田太一一さんであるがゆえのコンプリメントかな?スコッチじゃないのね(笑)このウィスキーの瓶はラスト、一瞬だけ画面の端に映り、あらゆる伏線が回収されてまたもや涙腺決壊😭

 


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アンドリュー・スコットの名演を柔らかく受け止めるポール・メスカル(左)も素晴らしい。今回の2人、これほど美しくて儚く、残酷な男性同士のラブシーンをヲタクは知らない。


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※アンドリュー・ヘイ監督によれば、「ポール(メスカル)の撮影始めは、アンドリュー(スコット)にベッドでキスするシーンだったんだ。でもそれは、ポールにとってとても良いことだったと思う」だそう。んんん❓監督、それどーゆー意味❓(笑)

 

 アダムの両親(ジェイミー・ベルクレア・フォイ)はなぜ昔の家でアダムを待ち続けたのか❓そこに潜む謎を知った時、もうヲタクの涙腺は決壊、涙が溢れて止まりませんでした。そして、ハリーがアダムの元に姿を現した本当の意味がわかった時には、切なさで、哀しみで、胸が張り裂けそうになる😭「僕は人を愛したことがない」と言って憚らないアダムが、両親とハリーとの触れ合いを通じて少しずつ変化していき、彼の心のしこりはおそらく跡形もなく消え去るのではないかと、私たち観る側が抱くハッピーエンドへの淡い期待は、ラストで容赦なく裏切られる。アダムが真の意味で魂を再生させ、生きる勇気を得るためには、あの選択しかなかったのか❓……答えは誰にもわからない。


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※いつまでも少女の面影を残す母(クレア・フォイ)。人生に疲れて老成しているアダム(アンドリュー・スコット)との対比がシニカルで面白い。

 

 この世に生きている私たちは全て(All of Us)異人(Strangers)。LGBTというマイノリティとして英国に生まれ、この作品の主役アダムと同様、母国にあってもどこか「異人」であり、心の「しこり」が溶けないまま生きてきたであろうアンドリュー・ヘイ監督ならではの視点で描かれた、怪異譚の一級品と言えるのではないでしょうか。


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 しっかしこの作品は、間違いなくアンドリュー・スコットありきの映画です❗(断言)。暮れなずむロンドンの街を見下ろす、魂の抜けたような空虚な表情から始まり、亡くなった筈の両親と再会し、息子ほども年の違う若い恋人を愛することで次第に瞳に生気を宿して、アダム曰く、ずっと長い間心に抱えてきた「しこり」を次第に溶かしていく……その変化を的確に表現する、彼の演技の素晴らしさよ。『シャーロック』、『パレードへようこそ』、『否定と肯定』、『フリーバッグ』、『オスロ』、『パースート・オブ・ラブ』、『少女バーディ』……等等、あってあらゆる役を多彩に演じてきた演技巧者の彼ですが、今回の『異人たち』こそ、彼の代表作になるに違いありません(再び断言)。ヲタクの中では、今年の主演男優賞はアンドリュー・スコットで決まり❗(笑)

 

アンドリュー・スコットとポール・メスカル、美しきツーショット😍


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 ゲイであることを公表し、パートナーとの同棲経験もあるアンスコことアンドリュー・スコット。彼が「外見も中身も美しい人」と称賛するメスカルとのラブシーンは美しく且つリアルで、ヲタクは思わず暗闇の中で赤面(笑)

ある日のインタビュー記事。「ポールと親友なのはわかったけど、彼とのロマンチックなシーンを撮影するのはどんな感じだった❓」とインタビュアーが尋ねると、アンスコさまは「ラブシーン以外のシーンでも、相性は必要でしょ❓僕たちの化学反応は素晴らしかったと思うよ😉」と、スマートでオトナのご対応。やっぱりカッコイイわ〜、彼。……まあ、ポールがヘテロかバイかゲイか知らんけど(笑)、あんなガチなラブシーン演じてアンスコさま、撮影中一体どんな気持ちが動いたんだろう……って、ちょっと考えちゃうよねぇ。監督のアンドリュー・ヘイ監督(シャーロット・ランプリング主演『さざなみ』)もゲイを公表してるし、リアルな筈だわ。

 

 ヲタク的にはアンスコさまの語る「化学反応」という言葉に、それこそ反応しちゃいました。現在活躍中の英国の俳優さんたちって(アイルランド人やスコットランド人も含め)演劇学校を出て、シェイクスピアやピンター、T.S.エリオット等の舞台で研鑽を積んで、それから映像に進出するのが通常のパターン。アンスコさまもその例に漏れず。……だけど、ポール・メスカルは全然違う。突然彗星のように現れて衆目を集めたというか。だって、元々サッカー選手を目指していたのが怪我で断念して、その後マイナーな演劇学校で学んで、それほど舞台経験もなかったのに今年『欲望という名の電車』でいきなりローレンス・オリヴィエ賞主演男優賞受賞🫢『アフター・サン』で初めて彼を見た時(あ、『ロスト・ドーター』のほうが先なんだけど、チョイ役だったからほとんど印象に残っていない…スイマセン(^.^;)驚いた。なんというか、肌感覚で演技してる❓息をするように自然に演技していたから。天才……ってこういう人のことをいうのかと。演技的には正反対のタイプの2人がこの作品で魅せた化学反応を、来年春にはぜひ映画館で体感してみて下さい❗

 

★『異人たち』にまつわるアレコレ
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※左から、マット・ボマーアンドリュー・スコット、ジョナサン・ベイリー、ポール・メスカル。左の3人はゲイであることを公表しています。ポールは❓……でも、今作品のアンドリューとのめっちゃムード満点のラブシーンを見ると℉¥§◑%&@5‡(笑)

アンドリューもインタビューの中で"Paul is a good kisser."なーんて、しらっと言ってたしね(^.^;

 


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※『異人たち』のスペシャルプレミア。司会はアンドリュー・ガーフィールド❗左からアンドリュー・ヘイ監督、アンドリュー・スコットクレア・フォイアンドリュー・ガーフィールド。なんと、イケメンアンドリュー3人揃い踏み(笑)