オタクの迷宮

海外記事を元ネタにエンタメ情報を発信したり、映画・舞台・ライブの感想、推し活のつれづれなどを呟く気ままなブログ。

ベネディクト・カンバーバッチの『フランケンシュタイン』とジョー・ヒル=ギビンズTS

 
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 シネ・リーブル池袋にて、ナショナル・シアターライブ『フランケンシュタイン』(演出/ダニー・ボイルベネディクト・カンバーバッチ怪物版)鑑賞。

 

 ライブ上映の前に、『橋からの眺め』(アーサー・ミラー原作…PARCOプロデュース・東京芸術劇場伊藤英明主演で9月より上演)演出の為に来日中のジョー・ヒル=ギビンズ氏のトークショウが行われました❗ギビンズ氏は、サイモン・ラッセル=ビール演じる『リチャード2世』の演出を務めた方。この舞台、やはりNTライブで数年前に上映されましたよね。覚えてます。…だけど、もはやヲタク的にはリチャード2世と言えばもはや、熱烈推しのベン・ウィショーシェイクスピアの史劇をドラマ化した『ホロウ・クラウン〜嘆きの王冠』でリチャード2世を演じた)しか受け入れられないので、見ていません。リチャード2世は英国歴代の国王の中でも一二を争う美男子だったっていうし、暗殺された時は30代前半だしね…。サイモン・ラッセル=ビール、当時すでに50代だし、『ホロウ・クラウン』ではフォルスタッフだったよ❓(^.^;

 

 まあ、それはさておき(笑)ギビンズさん演出の舞台は、リチャード2世が幽閉されたロンドン塔を1つの密閉された箱に見立て、全編を、王位を簒奪されたリチャードの回想に見立てた、ひじょうにユニークでしかもスピード感溢れる舞台で、当時評判になったようです。英国だけでなく、ベルリンやハンブルグアムステルダム等で舞台経験のあるギビンズ氏、ウェストエンドに新風を吹き込んでいるもよう。そんな氏が演出する『橋からの眺め』、今日のトークショウがきっかけでヲタク、早速チケットを予約したので楽しみです😍……そしてそしてギビンズ氏は『フランケンシュタイン』主演のベネさまと、なんと※同級生なんだとか、ビックリです。

※ネットで検索したらギビンズ氏、ベネさまと同じ46歳、マンチェスター大学で演劇専攻してました🫢正真正銘の同級生だ…。

 

 冷徹な科学者フランケンシュタイン(ジョニー・リー=ミラー)が試行錯誤の末にやっと完成させた人造人間(ベネディクト・カンバーバッチ)。しかしその姿があまりにも醜かった為に、フランケンシュタインは彼を無慈悲にも荒野に追放してしまいます。彼を待ち受けていたものは、差別と虐めと蔑み……。彼はその過酷な月日の中、次第に憎しみを募らせ、果ては彼の創造主たるフランケンシュタインに復讐を誓いますが……。


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 まずは誕生後、四肢が意思に反し、てんでバラバラに動く様子、そして次第にそれが脳からの信号を受けて規則的に動作し始める……その長い長い時間を経て、ついには二本足で立ち上がるまでのベネさまの演技がもはや神🥰(上演前のインタビューで、例えば脳梗塞後リハビリに励む患者さんたちの動きを参考にした……とベネさまは語っていましたが……いやいや、そんな模倣を遥かに超えています)


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※母性愛に溢れた、フランケンシュタインの妻エリザベス(『007シリーズ』のミス・マネペニー役、ナオミ・ハリス)。愛する夫が創り出した「彼」を受け入れ、友人として愛そうとしますが、その優しさがさらなる悲劇を呼ぶことに……。

 

 自らの才に溺れ、人を愛せないマッド・サイエンティストが、誰よりも愛情を必要とする存在を創り出してしまった悲劇。苦難の果てに自分の親たるフランケンシュタインを見つけ出した人造人間が、獣のように「私はただ愛されたかっただけなのに❗」と咆哮する場面には、思わず涙が溢れます。


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 真の意味の怪物は一体誰なのか……❗❓

 

 観ているうちにそんな問いがヲタクの脳裏をグルグル回り始めましたが、自らの創造物を憎み、自らの手で破壊するために地球の最北まで彼を追い詰めるフランケンシュタインの狂気めいた姿にふと、あるギリシャ神話を思い出しました。いつも怒りと憎しみに満ちた表情を自分に向けてくる女テナンを、自分は憎まれていると思って殺してしまった男ピセアダイ。神がやって来て、死んだ女の心を切り裂いてみせると、そこにはピセアダイに対する愛で溢れていた……という。愛と憎しみは表裏一体である……という寓話ですね。ラスト、「愛ってなんなのか、ぼくには分からない」と呟くフランケンシュタインに、「おれが教えてやろう」と力強く断言する人造人間の姿に、2人の凄惨な関係の果てにある微かな、微かな希望を見たような気がしたのはヲタクだけ❓

 

 日によってフランケンシュタイン博士と怪物が入れ替わって演じるという、役者にとっては苛酷なWキャスト。しかし、ベネディクト・カンバーバッチとジョニー・リー=ミラーはその重圧を跳ね除け、英国演劇界の最高峰と呼ばれるローレンス・オリヴィエ賞主演男優賞をW受賞しました。

 

 こーなると、ベネさまの博士役も見てみたくなったなぁ。『イミテーション・ゲーム』のアラン・チューリングや『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』のタイトルロール等、アスペルガーっぽい役はお手のもの……なベネさま、きっとハマってるはず。…もしかすると、愛に飢えた怪物役よりもね😉