桜木町駅前のシネコン「ブルグ13」にて、映画『ミステリと言う勿れ』鑑賞。
ストーリーは…
ひろしま美術館で開催されているロートレック展を訪れた久能整(菅田将暉)。とても感動した様子の彼ですが、出てきたところで「あー、良かった、感動した。…でもモネは、年をとってから見たほうがいいのかな」とブツブツ呟いています。ヲタク的には、もうこの1発目の整くんの台詞でノックアウト(笑)ドラマ版でもそうですが、整くんの価値観や深い洞察力や数々の名言に魅了されているこちらとしてはこの1言で「整ワールドのあちら側」に連れてかれちゃいますね。ご存知の通りモネは光と水の描写に徹底的に拘ったフランスの印象主義の画家。日本文化を愛したジャポニズムの画家としても有名です。代表作の「睡蓮」も、水面や光の繊細な表現に、「侘び・寂び」を感じる日本人は多いと思われます。キャバレーの踊り子や娼婦を好んで描いたロートレックの世紀末な世界を堪能した後に、(モネを理解するにはもっと年を重ねないと…)と考える整くんの謙虚さと、芸術に対する深いリスペクトに沼オチしない女子はいないでしょう😍個人的には、※ド正論を粛々と述べる長台詞より、彼の人柄が垣間見れる何気ない1言が好きだったりします。……またね、巧いんだよね、菅田将暉が。ボソッと呟く1言に深みを滲ませるのが。
※「子供って乾く前のセメントみたいなんです」……子供の頃心に「落とされた物」は、潜在意識としてそのまま残ってしまう、というアメリカの児童心理学者ハイム・G・ギノットの理論その他は、様々な記事で触れられているので、ここでは省きますね。
…って、「ストーリーは…」とか言いながら、ぜんぜんストーリーについて語っていない。
…でもってストーリーは……
上述のひろしま美術館を出てきたところで、久能整は、犬堂我路(瑛太)の知り合いだという高校生の狩集汐路(原菜乃華)から呼び止められます。実家の遺産争いに巻き込まれた自分は命を狙われている。これまでも狩集家の遺産相続では、事故か他殺か、度々死人が出ているというのです。自分を守るボディガードを務めてほしいという汐路に、人の大切ないのちが関わっているとなれば、一見冷淡に見えて大いなるヒューマニストの整くんが断れるはずもありません(^o^;)
莫大な土地家屋を有する狩集家の当主であった汐路の祖父(石橋蓮司)が亡くなり、汐路の父を含む彼の4人の子どもたちが8年前不慮の事故で亡くなっているため、孫である汐路たちに相続権が回って来ることに。しかし祖父の遺言は、汐路をはじめ、狩集理紀之助(町田啓太)、赤峰ゆら(柴咲コウ)、波々壁新音(萩原利久)の4人の孫のうち、たった一人を「選抜して」全財産を譲り渡すというとんでもない内容でした。彼らには※それぞれに狩集家の敷地に立つ蔵の鍵が渡されます。『それぞれの蔵において あるべきものをあるべき所へ 過不足なくせよ』という謎かけの言葉をいち早く解き明かした者に相続権が与えられるというのです。汐路は問難の蔵(日本人形が9体)、新音は忠敬の蔵(宮島焼)、ゆらは温恭の蔵(座敷牢や拷問道具)、紀之助は明聡の蔵(髪の絡みついた鎧、血で錆びついた刀剣)と、禍々しい収集品で溢れた蔵をそれぞれ指定されます。と思う間もなく、早速遺産争いが勃発したものか、上から植木鉢が落ちてきたり、階段に油が塗られていたりと、汐路が命を狙われる事件が起こり……❗❓
まあこう書いてくるとおどろおどろしくて、整くんが思わず「……犬神家の一族❓」と口走ったように、横溝正史か江戸川乱歩か……といったストーリー展開になるかと思いきや、そこはそれナゾを解く人が整くんなので、正史や乱歩みたいなお耽美&不道徳方向にはいきません。サイコパスも登場しますが、約1名です(笑)
※メガネ男子の町田啓太〜〜〜❗
彼がスクリーンに登場するだけで女子たちは悶絶したに違いない(笑)
オールスターキャストで、モブキャラの末端に至るまでゴージャスな配役に埋め尽くされており、キャストの贅沢な無駄遣い感満載、犯人の目星もとんとつきません。これが火サスとかだと、配役でだいたい犯人の目星がつくんですが。何せラスボス感溢れる石橋蓮司御大が写真だけのご出演ですからねー(笑)ところで石橋蓮司、吉岡秀隆が金田一耕助を演じたNHK『犬神家の一族』で、犬神佐兵衛演じてたんじゃなかったっけ。(さだかではないけど)だとしたらイキな配役だね。
年寄りの映画ファンとしては、「犯罪は人の努力の裏側が出ているのだ」という『アスファルトジャングル』(ジョン・ヒューストン監督)の台詞が出てきて嬉しかった😍ヒューストンと言えばハンフリー・ボガートとのゴールデンコンビで『マルタの鷹』や『アフリカの女王』などが有名ですが、当時ハリウッドで全盛だったステロタイプの勧善懲悪モノを嫌い、人間の心の裏側を容赦なく抉り出す作品が出色でした。『黄金』とか、今回引用された※『アスファルトジャングル』とか。正義の名の下に断罪するのではなく、犯人の視点に立ち、犯人の心理を理解することによって事件を解決に導こうとする整くんのスタイルは、確かにヒューストンに合い通じるところがあるような気がする。
※宝石強盗犯たちが事件後、互いに疑心暗鬼になり、冷静さを失って自滅していくフィルム・ノワール。『黄金』に似たストーリー展開でしたね、確か。ヒューストン監督の最高傑作と言われ、各映画賞を総ナメにしましたが、悲しい哉、バディのハンフリー・ボガートは出演していません。
駆け出しのマリリン・モンローが注目を浴びた作品でもあります。
※『アスファルト・ジャングル』ギャング一味の情婦役のマリリン・モンロー。可愛かったなぁ。キラキラ輝いていた。……そんな彼女がじつは、性的に搾取され、子宮内膜症に悩んでいたなんて……😭(合掌)
蔵の名前が「論語」の『君子の九思』から採られたもので、そこにあるべき言葉が無いことから、整くんが事件解決のヒントを得るところなど、謎解き以外の小ネタ満載で見ていて楽しい🎵
結局見終わってみれば、整くんの温かさに癒やされ、感動で涙して終った(^o^;)……「癒やされるミステリ」ってなかなかないよね❓……あ、『ミステリと言う勿れ』っていうくらいだからミステリじゃないのか、これは(笑)