オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

日本初公開〜ロバート・アルトマンのニューロティック・スリラー『イメージズ』(1972年)


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 横濱黄金町のミニシアター「ジャック&ベティ」にて、ロバート・アルトマン監督の『イメージズ』鑑賞。「ジャック&ベティ」では「ロバート・アルトマン傑作選」と題して、日替りで彼の3本の映画を上映中。ヲタクは他の2本『ロング・グッドバイ』と『雨にぬれた舗道』は観たことがあるので、今回は『イメージズ』のみ鑑賞。なんとこの作品、本邦初公開っていうんですから、ビックリです🫢

 

 ハリウッドの反逆児であり、インディーズ映画のパイオニアロバート・アルトマン。内容も作風も多種多彩、いい意味で掴み所がないアルトマン監督。その中でも個人的には、大ブレークした『M★A★S★Hマッシュ』や『ザ・プレイヤー』など、ふざけ散らかしてて、その底に超大国アメリカの肥大したナルシズムや覇権主義を痛烈に皮肉った、アメリカン・ニューシネマの代表的作品が好きなんですが、今回日本初公開の『イメージズ』は、これまたガラッと作風が変わって、ヒッチコックばりのニューロティック・スリラーです。


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 観終わった直後のヲタクの偽らざる感想は…

 

やっぱりヒッチみが凄い❗

 

 ヲタクはアルフレッド・ヒッチコックの、英国人特有の、陰鬱でひねくれた、一筋縄ぢゃいかない意地悪さかげん(注・褒めてます 笑)が大好きなんだけど、この作品のアルトマン、ある意味ヒッチコックを超えてるかも。

 

 童話作家のキャスリン(スザンナ・ヨーク)は、一角獣(ユニコーン)を題材にしたファンタジーを執筆中。ある夜更け、帰りの遅い夫を待つキャスリンは見知らぬ女から、夫は仕事などではない、ホテルで浮気しているという謎の電話を受けます。ショックを受けたその瞬間から、彼女はありもしない幻覚に悩まされ始め、次第に錯乱状態に陥っていきます。彼女の状況を心配した夫と二人でアイルランドの(あの光景はたぶん、アイルランド www)世間から隔絶された別荘へ静養に行きますが、彼女の症状は酷くなるばかり。ついには、自分のドッペルゲンガーが現れて……❗

 

 夫の浮気にショックを受けた貞淑な人妻の錯乱かと思いきや、観ているうちに、彼女自身が実はニンフォマニアックなのでは……❓という疑問が、私たち観客の中に湧いてきます。ズームを多用し、徹頭徹尾ヒロインのキャスリンの視点から描いているので、(これはどこまでが現実でどこまでが幻覚なのか)次第にわからなくなり、こちらまで精神の迷路にずんずん入り込んでいくのがめっちゃ怖い。ヒロインのスザンナ・ヨークは実際に童話作家であり、舞台は「妖精の島」アイルランドだし、映画と並行して彼女の作品『ユニコーンを探して』のストーリーが思わせぶりに語られていくため、ラストのオチがもしかしてA24の『LAMB/ラム』(2021年)とか、北欧映画『ボーダー 二つの世界』(2018年…ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト監督)方面に行っちゃうのか❓とヲタクふと思ったけど……。そんなことなかった。ちゃんと理屈で説明のできる結末だった(笑)キャスリンが本当に憎くて、消したかったのは誰だったのか❓それが明らかになる、怖くて、しかも生きる切なさが滲むラストシーン。

 

 主演のスザンナ・ヨークは英国女優にしては珍しくベビーフェイスで、日本人好みの可愛いタイプ。…しかし彼女、王立演劇学校出身でガチの演技派なんですよね。ヲタク的にはブロンテ原作『ジェーン・エア』(1970年)のヒロイン役が印象的です。こんな少女っぽい人がニンフォマニアなんて、アルトマン作品らしいぶっ飛んだキャスティングですが彼女、この時の演技でカンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞しています。

 

 V・ジグモンドが映し出す緑滴るエメラルドの島アイルランドの美しさと、ヒロインの心の闇深さの対比が素晴らしいです。

 

 音楽担当はツトム・ヤマシタ。打楽器や尺八を多用した、神経を逆なでするような音楽は非常に不穏で不吉なイメージ効果があり、不安と恐怖感を倍増しております。