オタクの迷宮

海外記事を元ネタにエンタメ情報を発信したり、映画・舞台・ライブの感想、推し活のつれづれなどを呟く気ままなブログ。

きっと、それは名作〜『きっと、それは愛じゃない』


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 U-NEXTで、『きっと、それは愛じゃない』鑑賞。

 

 ロンドンに住むドキュメンタリー監督のゾーイ(リリー・ジェームズ)は、新人賞も受賞して将来有望と目されてはいるものの、新作の企画がなかなかプロデューサーからOKがもらえず焦燥を募らせる日々。そのイライラをお酒と行きずりの恋で紛らわしていました。(じつはゾーイ、かなりのだめんず・うぉ~か~らしいのです(^_^;)そんな折、幼馴染の(実家がお隣同士)パキスタン人医師・カズ(シャザド・ラティフ)から、近々親が薦める相手とお見合い結婚をすることになったと聞いて驚きます。「恋愛はいつか冷める。優先すべきは家族や子供、社会的貢献」と明言するカズに、心の底では「運命の相手」を求めているゾーイはかなりショックを受けたものの、同時にムラムラと「作家根性」が湧いてきて、嫌がるカズを説き伏せて、彼とお相手のマイムーナ(サジャル・アリー)の「パキスタンお見合い事情」をテーマにしたドキュメンタリーの撮影許可をとりつけます。そしていよいよ結婚式。ゾーイはパキスタンのラホールで三日三晩に渡り挙行されるカズの結婚式を撮影することになりますが……❗


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※直近で観たのが『パム&トミー』の、あのぶっ飛んだパメラ・アンダーソン役だったから、振れ幅凄すぎ(笑)彼女にはこういう、等身大の女性の役をもっと演じてほしいかも。

 

 今流行りの「異文化を持つ者同士あるある」のロマコメかと思いきや、ちょっと予想と違いました(^_^;)監督がパキスタン出身のシェカール・カプール(『エリザベス』)であり、脚本家も同じくパキスタン出身のジェミマ・カーンだけあって、ゾーイとカズのロマンスはむしろサブストーリーで、海外(欧米)で暮らす移民2世を取り巻く様々な状況に焦点が当てられているような気がします。ニューヨークに暮らす移民2世の複雑な心情を描いた作品としては、A24スタジオの『フェアウェル』や『パストライブス 再会』が印象的でしたが、今作はそのロンドン版と言ったところ。カズはロンドン生まれで医師という立派な職業を持っていますが、ゾーイに向かって彼が放つ「どこかでテロが起こるたびに謝らなきゃいけないような気持ちになるのは、君には理解できないだろ。君と僕の家は隣同士だが、47番地と49番地は別の大陸なんだ」という台詞からも想像できるように、現在に至るまで、彼が今まで移民2世であるが故の様々な困難に遭遇してきたことは想像に難くありません。彼が必要以上に「パキスタン式結婚」にこだわるのも、ロンドン生まれでロンドン育ち、すっかり英国人になってしまった彼の、パキスタン人のアイデンティティを失いたくない……という真意が透けてみえて、ちょっと切なくなりました。ヲタクもベルギーで5年間暮らした経験があるので、こういう、社会や伝統からどこか遊離したような、根無し草のような孤独感は理解できるような気がします。


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※ラホールで催されたカズの豪奢な結婚披露宴。まさにエキゾチック・パキスタン

 

 登場人物たちは、それぞれが大事に思う社会的風習や宗教、文化的背景の違いによって一時は対立しますが、大きな愛の力によってその困難な状況を乗り越えていくラストに、ホロリとさせられます。1番面白かったのは、自立している筈の英国人女性ゾーイがじつは精神的に不安定で恋愛依存症気味なのに比べて、カズのフィアンセで、寡黙で従順に見えたパキスタン人女性のマイムーナがじつは、誰よりも自我が強く、烈々たる自立心の持ち主であったこと^^; この設定って、イマドキのパキスタン事情を反映しているんでしょうかね❓しっかし、親のススメによってロクに知りもしない相手と結婚するにしては、離婚に関する確たる法律はなく、互いに(アラーの神の前で)「離婚する」って3回唱えれば離婚成立……って(^_^;)めちゃくちゃユルイんだけど大丈夫なのか❗❓


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※ゾーイのノンデリなママ役に、英国の大女優エマ・トンプソン。そんなママが、恋愛下手な娘をそっと慰めるシーンには思わずウルウル🥲エマさん、サスガです❗

 

 (お休みの金曜日、外は雨だし映画でも見るか〜〜)って軽く見始めたけど、面白かった❗思わぬ拾いものした気分よ。でも、プロデューサーは……❓と見てみれば、『ノッティングヒルの恋人』、『ラブ・アクチュアリー』、『ブリジット・ジョーンズの日記』の「英国ロマコメの帝王」サーティム・ビーヴァン。こりゃ、面白くないわきゃないわ(笑)