オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

息詰まる密室サスペンスをワンショットで〜Netflix『アウトフィット』


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 Netflixで映画『アウトフィット』(英米合作)鑑賞。

 

 1950年代のアメリカ、シカゴ。小さな紳士服の仕立屋を営むレオナルド(マーク・ライランス)。彼は英国人で、サヴィル・ロウ(メイフェアにある有名紳士服店が居並ぶ通り)で腕を磨いた「裁断師」。彼は「ある事件」をきっかけに妻と娘を亡くし、ロンドンから逃げてきたという哀しい過去を抱えていました。彼は自身の卓越した技術にプライドを持っていましたが、哀しいかな当時のシカゴでは、決して安いとは言えないオーダーメイドの紳士服を買いに来る顧客はダーティマネーで稼ぐギャングばかりで、彼の店には、街を牛耳るロイ・ボイル(サイモン・ラッセル・ビール)配下のギャングたちの連絡場として利用されている始末。その上、彼が娘のように可愛がっている受付係のマーブル(ゾーイ・ドゥイッチ)は、ボイルの息子リッチー(ディラン・オブライエン)と恋仲になっていて、彼の心配事は増えるばかりでした。そんなある日、ボイル一家と街の覇権を争うフランス系マフィア、ラ・フォンテーヌに撃たれて重傷を負ったボスの息子リッチーを、ボスの片腕フランシス(ジョニー・フリン)が店に運び込んできます。驚くレオナルドに拳銃を突きつけ、なんとフランシスは「弾は貫通してる。お前の針と糸で傷を縫え。拒否すればお前を殺す」と言い出します。それをきっかけに、レオナルドは否が応でもマフィア同士の抗争に巻き込まれていくこととなり……。


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 ※英国の名脇役マーク・ライランス。最近では『ダンケルク』の愛国心溢れた漁師、『シカゴ7裁判』の弁護士役が印象的でしたね。

 

 全編小さな紳士服店が舞台のワンショット映画です。数少ない登場人物が腹を探り合い、疑惑が疑惑を呼び、密室での息づまる心理戦を経た後に、あっと驚くどんでん返し。まるで上質な舞台劇を観ているかのような味わい。マフィアの抗争がテーマだというのに、最後まで派手なシーンは殆ど無く、会話だけで最後まで緊迫感を持続できたのも、主役のマーク・ライランスをはじめとして、サー・サイモン・ラッセル・ビール、ジョニー・フリン等、英国の芸達者たちが勢揃いしたためでしょう。主人公は英国人の設定なのでライランスがキャスティングされたのは当然としても、シカゴマフィアのボスにサイモン・ラッセル・ビール、その部下にジョニー・フリン(Netflix『EMMA エマ』)と、要となる役に英国俳優を配したのにはちょっと驚きましたが、よくよく考えてみると、英国の俳優さんたちはシェイクスピアの舞台で鍛えられてますからね、こういうまるで舞台劇のようなワンショットムービーにはぴったりだと思いました。

 
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※百戦錬磨の英国俳優に混じって若い恋人たちを演じたのは、アメリカのライジングスター、ディラン・オブライエン(左)とゾーイ・ドゥイッチ(右)

 

 題名の『アウトフィット』。従来は衣装の意味ですが、ここでは1920年代の禁酒法時代以前から古く存在していたと言われるシカゴマフィア「アウトフィット」とかけているんですね。作品中でロイ・ボイルは、大組織であるアウトフィットの後ろ盾を得ようと、ライバルであるフランス系マフィア「ラ・フォンテーヌ」を躍起になって潰しにかかっている設定になってます。


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※凶悪なシカゴギャング、フランシスを演じるのは、英国のミュージシャンであり俳優のジョニー・フリン。直近で見たのがNetflix『EMMA エマ』のエマ(アニャ・テイラー=ジョイ)のロマンスのお相手、生真面目さのカタマリみたいな英国紳士、ナイトレイさんだったので、イメージの落差にビックリ。


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※マフィアのボス、ロイ・ボイルを演じるのはなんと、サーの称号を持つ英国の名優、サイモン・ラッセル・ビール!ロイは英国びいきのギャングである設定。「ネクタイを結んで初めて人生を踏み出せる」なんて、オスカー・ワイルドの名言をさりげなく引用してみせたりします。

 

 その立ち振舞や会話術から、見るからに英国の紳士然としたレオナルド役マーク・ライランスが、ラスト5分に見せるあっと驚く変貌ぶり、ぜひお見逃しなく!

 

★おススメ度

★★★★☆(ぜひ見るべし!)