オタクの迷宮

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ポン・ジュノ監督もおススメ~黒沢清監督『トウキョウソナタ』

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  黒沢清監督演出による『スパイの妻』。放送をあと1週間に控え、気もそぞろな近頃のヲタク(笑)TVドラマはそれほど見ないので😅ドラマをこんなに心待ちにするのは久しぶりのこと。期待の映画やドラマの新作の公開&放送が迫ると、屋根裏部屋からやおらその監督や出演俳優の旧作のDVDを引っ張り出して見直したり、見逃していた作品を動画配信サイトで見て予習しておくのが常。

 

  今回見直したのが、同監督の『トウキョウソナタ』。『セブンスコード』や『散歩する侵略者』『岸辺の旅』も好きなんだけど、ロマンスものやSFぢゃなくって、なぜか家族の話を観たい気分だったんですね、今日は(笑)

 

  第61回カンヌ映画祭『ある視点部門』審査員賞その他、数々の映画賞を受賞、日本だけでなく世界にも認められた名作ですね。『パラサイト~半地下の家族』のポン・ジュノ監督が『世界一受けたい授業』で日本映画ベスト3を選んだんですけど、その中に入っている1本でもあります😊

 

  『トウキョウソナタ』に見られる家族の関係って、いかにも日本的というか。ポン・ジュノ監督の『パラサイト』では、家族同士ナマの感情剥き出しで、徹底的にやり合い、お互いを容赦なく突き詰める。だからこそ人生の悲劇も喜劇も異様な振れ幅で、運命が火の玉みたいに坂道を転がっていきます。

 

  『トウキョウソナタ』でも、発端は『パラサイト』と似たようなもの。両親と兄弟二人、小さな戸建てに住むごくごく平凡な家族。しかし、父親(香川照之)がある日突然会社をリストラされたことをきっかけにして、少しずつそれぞれの歯車が狂い始めます。父親の沽券に関わる…とばかり、リストラされたことを妻にも言えず、家の中では相変わらず息子たちを怒鳴り飛ばしながら、スーツを着て街をうろうろする父親。同じように失業中の学生時代の同級生(津田寛治)。携帯を自動的に鳴らすようにセットして、仕事のフリをし続けるエピソードも、滑稽で物悲しい😢母親(小泉今日子)は夫のリストラにうすうす気づきながらも、なぜかそれを追及することもせず、毎朝能面のような笑顔で夫を送り出すのです。『パラサイト~半地下の家族』と決定的に違うのが、この母親の描きかたでしょう。

 

  てんでばらばらにやりたい放題な男たち(父親=香川照之、長男=小柳友、次男=井之脇海)を、黙って陰で支え続けて来た母親は、ある晩突然プッツンしちゃう(笑)。なんと、強盗犯(役所広司)と一緒に、逃避行を繰り広げちゃうんです😮その晩は母親だけでなく、男たちもそれぞれ、命に係わるような散々な目に遭遇するんだけれども、結局翌朝にはみんな三々五々家に戻ってきて、いつものように黙って食卓を囲む。あの場面、ヲタク的には『パラサイト』の結末に負けないくらい、シュールで怖かったよ(笑)

 

…でもよくよく考えると、そういう、真実を白日のもとに晒さない、何事も突き詰めない、あえて曖昧にやり過ごすっていうのも、日本古来の美徳なんじゃないの❓悪くないよね…って今回観てそう思った。谷崎潤一郎『陰翳礼讚』の世界だわ…。まるで昨今世界中で話題になっている、日本のミステリアスな新型コロナ対策みたいに。それとも単に、年をとっただけなのか、じぶん(笑)

 

  次男坊の井之脇海くん(当時は小学校6年の役)。大人になってからも、『帝一の國』の生徒会副会長や『海辺の生と死』、『ザ・ファブル』のお間抜けヤクザなど、出演シーンは少なくても眼で語る、というか、とっても印象的な演技をする人なんですよね😊もっと注目されてもいいと思うんだけど…😅あっ、それから忘れちゃいけません、瞳に微かに狂気を秘めたかのごとき小学校教師役のアンジャッシュ児嶋一哉❗黒沢監督という方は、異分野の逸材を発掘する慧眼がスゴイ😮(『セブンスコード』の前田敦子然り)

 

  ポン・ジュノ監督は『日本の若者にもっと見て欲しい映画』って仰っていましたが、オジサンオバサンにも見て欲しい(笑)まあ、身につまされて苦しくなるきらいはありますが😅