オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

傷だらけのヒーロー、胡歌(フー・ゴー)~中国ノワール『鵞鳥湖の夜』


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 白鳥(『ミッドナイトスワン』)の次は、鵞鳥を見るヲタク(笑)まっ、実際に鵞鳥そのものは映画には登場しないんですが😅

 

  その昔ジャン・リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォーがそうであったように、現代中国映画のヌーヴェル・バーグとも言うべきディアオ・イーナン監督の最新作がやっと陽の目を見ました❗…実はこれ、アジア映画批評家協会賞では、ポン・ジュノ監督のあの『パラサイト~半地下の家族』を抑えて監督賞を受賞し、映画界に衝撃をもたらした作品。現代中国社会の闇(庶民の貧困)と、権力(特に警察機構)の暗部を鋭く抉った内容であるのは、同監督の前作『薄氷の殺人』(ベルリン国際映画祭金熊賞)と同様ですが、映像やストーリー展開はより鮮烈に、よりスタイリッシュ且つ耽美的になっている気がします。

 

  大がかりなバイクの窃盗を繰り返し、闇社会で生きてきたチャウ(フー・ゴー)。刑務所を出所したばかりだというのに、再び窃盗団のシマ争いに巻き込まれ、誤って警官を射殺してしまう。逃亡犯となって夜の闇の中を逃げ続けるチャウ。彼の首に懸かる多額の報奨金。それを狙って、窃盗団の対立相手も動き始める。次第に追いつめられていくチャウに近づいて来た謎の女(グン・ルンメイ)。彼女は鵞鳥湖のほとりで春をひさぐ水浴嬢(リゾート地の水辺で商売をする娼婦のことを中国ではそう呼ぶらしい)。果たして彼女は敵か味方か?その真の目的は…?

 

  廃墟のような美しさを持つ街並み。すりガラスを通して部屋の内部に射し込む、まるで血の色のような毒々しいネオンの光、夜のしじま、ゆらゆらと揺れる湖の水面、水辺の動物園、野生動物たちの闇に光る眼。陰翳と極彩色の鮮烈なコントラスト、そこに浮かび上がる、不吉な影、影、影…。ブライアン・デ・パルマに匹敵する、人の影の演出は見事で、何やら中毒性がありますね😅

 

  『薄氷の殺人』に引き続き、ヒロインを務めるグン・ルンメイ。この人こそ真の美魔女でしょう。ズブの素人からスカウトされたというデビュー作『藍色夏恋』の時と似たボーイッシュなショートヘアなんですが、あれから18年も経って、ほとんどイメージ変わってないってどゆこと~~❗❓😅娼婦の役で、フー・ゴーとけっこう激しい愛欲シーンとかもあるのに、清冽なイメージが消えないのは、同じように娼婦役を演じた『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘプバーンを彷彿とさせます。

 

  そしてそして、中国の歩くイケメン彫刻、フー・ゴーは満を持しての映画初主演❗「顔面崩壊」と言われた凄まじい自動車事故から、まさにヒロイックな奇跡の復活(100針縫い、形成外科手術は10回に及んだとか。たしか以前、世界仰天ニュースか何かで特集されていましたね)。復活後第1作のTVドラマ『琅琊榜 〜麒麟の才子』の時はまだ目の辺りの傷が痛々しかったですが…😢今回は、『琅琊榜 』の病弱で白皙の貴公子とはうって変わって、キレッキレのアクション、無精髭もセクシー😍、一見細身の体躯に見えるのに「ボク、脱いだらスゴイんです」的な萌えシーンも(笑)このチャオという男、5年も奥さんほっぽらかしてヤクザ人生歩んできて、最後くらいは奥さんに警察に通報させて報奨金を残していこうっていう…。クズ男の純情というか何というか…フー・ゴーの抑えの利いた演技が泣かせます😢

 

  脇役も素晴らしい❗『薄氷の殺人』では女性蔑視のクズ警官役だったリャオ・ファンが、本作でもチャオを追いつめる警部役。前作ではアル中の役だったから体重増量してたんでしょうね。本作ではかなり身体絞って別人みたい😅チャオの妻役のレジーナ・ワン、人生に疲れた、薄幸な感じがぴったりです。

 

  しっかし『薄氷~』も『鵞鳥~』も、そこで描かれる警察の内情って言ったら、ひどすぎるんですけど😮犯人を挙げる為には、被疑者も一般人も人権なんて考慮してもらえない…みたいな。二作とも時代設定がひと昔前になってるのはそのせい❓…今の中国は違うって逃げ道残しとかないとダメとか❓😅

…深読みのしすぎかな(笑)