オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

本命はいつだってゲイリー・オールドマン♥️~Netflix『Mank/ マンク』


f:id:rie4771:20210522124619j:image

(Hollywood from Pixabay)

f:id:rie4771:20210414171011j:image

  ゲイリー・オールドマン、『裏切りのサーカス』、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』に引き続きアカデミー主演男優賞三度目のノミネート❗(『ウィンストン・チャーチル』では悲願の初受賞)

 

  長い間、ハリウッドでは「無冠の帝王」だったゲイリー。『シド&ナンシー』で、セックス・ピストルズの伝説的ベーシスト、シド・ビシャスを驚くべき憑依的演技で演じ切り、鮮烈デビューを飾って以来しばらくの間、カミソリのような狂気を秘めた、あるいは心に闇を抱えた屈折した人物を演じさせたら右に出る者はいませんでした。幾つものラブアフェア、アルコール依存症、家庭内のトラブル…。様々な人生経験を経て、いつからか酸いも甘いも噛み分けた自由闊達な演技、声高に叫ばなくても目の表情だけで全てを語る抑制された演技を見せてくれるように。何かに開眼した…と言うか。その分岐点が『裏切りのサーカス』だったかな😊

 

  今作品では、頑固で皮肉屋の飲んだくれ、でもシンは優しくて憎めない反骨の脚本家ハーマン J  マンキウィッツ(愛称マンク)を、かなり体重増量して(チャーチルの時はハリボテ使ったみたいだけど😅今回はあのお腹回りはホンモノみたい=笑)愛嬌とユーモアたっぷりに演じています。

 

  第二次世界大戦前、ファシズムの不吉な足音が世界に響き出していた頃。マンクは、天才オーソン・ウェルズの依頼によって『市民ケーン』の脚本作りに没頭していました。ところが、そのモデルが当時の新聞王ウィリアム・ハースト(その強大な権力を行使して、政治介入や情報操作も行っていた)だった為、彼には映画業界の大立者ルイス B. メイヤー(MGMの創設者で、彼の怪物的エピソードは枚挙にいとまがない)から様々な圧力がかかってきます。(『市民ケーン』の配給会社まで買収して妨害しようとするんだから、何をか言わんや…)

 

  一方で、当時はカリフォルニア州知事選たけなわ。「カリフォルニアから貧困をなくそう」をスローガンに、作家のアプトン・シンクレアが世界恐慌後の生活逼迫に苦しむ民衆から人気を博しており、共和党候補は旗色が悪くなっていました。メイヤーやMGMのプロデューサー、アーヴィング・タルヴァーグたちは反シンクレアの一大キャンペーンを張り、なんと彼を陥れる為のフェイクニュースまで製作していたのです。その事実を知ったマンクは、何としても『市民ケーン』の脚本を書き上げようと決意します。当時の映画人たちはある意味、上層部の権力のままに、表現の自由を奪われていたわけですよね。(今でも世界のそこかしこで起きている出来事なのかもしれませんが😅)そこにマンクは筆一本の力で抵抗しようとする。かっこいい。太っちょで飲んだくれ、口から先に生まれたみたいなかなり変則的なヒーローだけど(笑)個人的にはシェイクスピアのフォルスタッフ、思い出すなぁ😊映画会社のお偉いさんたちが会食してるとこにマンクが殴り込み?に行って、『市民ケーン』の製作意図を滔々と演説するシーンがそのクライマックス。

 

  だけどヲタクは、メイヤーやハースト、オーソン・ウェルズと丁々発止と(アルコールのせいで多少足元ふらついてますが=笑)渡り合う反逆児のマンクより、彼の「女性に弱い」フェミニストの一面が好き♥️

 

  特に、脚本の口述筆記を担当する、親娘とも年が違うイギリス人秘書リタ・アレクサンダー(『エミリー、パリに行く』のリリー・コリンズ)が、婚約者が前線で行方不明になった知らせを受け、ショックを受けるシーン。彼女をさりげなく労るマンクの眼差しが限りなく優しい😊

 

  また、マンクにいつも献身的に尽くしている為、「可哀想なサラ」と呼ばれている妻(タペンス・ミドルトン)がそのじつ、自立したキャラっていうのもちょっとしたツボだった。『市民ケーン』公開のめどが立たず、窮地に立たされているマンクにサラは…。

「子供たちは私一人で育ててきた。あなたの自暴自棄なお酒やギャンブル、浮気にも耐えてきた。あなたは私に借りがある」

「じゃあ、なぜ俺と一緒にいる?映画スター並の顔?口の上手さ?」(←マンクはこの手のジョークをいつも言ってます😅)

「あなたといると退屈しないから。ここまで尽くしてきたからには、最後まで見届ける」

20年という夫婦の歳月の重み、大人の会話。大好きなシーン😊

 

あっ、あとハーストの愛人の女優マリオン・デイヴィス役を演じるアマンダ・サイフリッド(アカデミー助演女優賞ノミネート)がどこからどう見ても1930年代アメリカの退廃的な香りふんぷん。映画『市民ケーン』を模したモノクロ画面…っていうのもあるんでしょうけど。ジャズ・エージのビッチ感満載で『グレート・ギャッツビー』のデイジー役とか似合いそう。しっかし新聞王ハースト、女優を愛人にするならわかるけど、そのために?映画会社まで作って愛人を女優にするって…。当時の財界の怪物、さすがにやることがぶっ飛んでるわ(笑)

 

   アカデミー主演男優賞、愛しのゲイリーは全く下馬評に上がって来ないけど(笑)、ヲタクの本命はいつだってゲイリー・オールドマン