これは実話に基づく物語。
1966年、ベトナム戦争における救出作戦。米国空軍の落下傘救助隊の医療兵だったウィリアム・H・ピッツェンバーガーは、激戦の最前線で60人以上の兵士たちを献身的に救った末、自らは若い命を散らしました。この功績を称え、戦後、最高位の「名誉勲章」を推薦されたが、なぜか却下されてしまいます。しかしその後30年以上もの間、彼に救われた兵士たちはさまざまな形で、ピッツェンバーガーに対する名誉勲章授与を求める活動をし続けるのです。そしてついに1999年、米国国防総省のエリート職員、スコット・ハフマンが調査を担当することになります。しかし調査を続けるうちに、その裏に大きな政治的思惑と謀略が蠢いていることを知ります。その時彼がとった行動は……❗❓
戦場でピッツェンバーガーに助けられた兵士たちに、ウィリアム・ハート、ピーター・フォンダ、サミュエル L ジャクソン…と、アメリカを代表する名優たちが揃い踏み。たとえ命永らえても、いやだからこそ戦争は、彼らの心に深い、深い傷を残しました。それは30年経っても決して癒えることはありません。
彼らがなぜ、ピッツェンバーガーの名誉を求め続けたのか❓……彼らが戦後歩んだ人生と、彼らの心の奥の、いまだに消えない贖罪と慟哭が明らかになる時、見ている私たちの心にもそれはトゲのように刺さり、戦争の愚かさと残酷さを思わずにはいられません。
一人息子を若くして失い、30年もの間妻と悲しみに耐えながら社会の片隅でひっそりと生きて、今は病で余命幾ばくもないピッツェンバーガーの老いた父にクリストファー・プラマー。
この名画が、ピーター・フォンダとクリストファー・プラマーという、ハリウッドでひとつの時代を築いた二人の名優の遺作となったことも、感慨深いです😢
当初は、自分の出世にとっては傍流の仕事だと嫌々ながら始めた調査でありながら、当時の証人たちやピッツェンバーガーの両親の心の痛みを理解するにつれ、真の勇気とは何か、真の人生の目的とは何かに目覚めていく若きエリート官僚、ハフマンにセバスチャン・スタン(アベンジャーズの中でじつは、ヲタクのいち推しはウィンター・ソルジャーだったりするので、彼にスポットが当たり始めたのはとっても嬉しい😊)彼はお母さんと一緒に12才の時にアメリカに入国したルーマニア移民。訛りのせいで虐められたりして、デビューするまではバーテンダー等職を転々とした苦労人。その彼が今回の映画では堂々と合衆国の中枢で働くキャリア官僚を演じていて素晴らしかった❗彼はこれからキますね❗……って、もう十分キテるか(笑)
この映画は、戦争における英雄賛美の物語でもなければ、かといって声高に反戦を叫ぶ映画でもなければ、若き兵士の名誉勲章授与に潜む政治的思惑を暴く社会派映画でもない…と、ヲタクは感じました。当時の戦闘回想シーンはかなりリアルですけれど、ハフマンが様々な関係者にインタビューする過程は、どちらかというと激しい感情は抑制された形で、淡々と進められていきます。しかしだからこそ、深い悲しみと、戦争に対する静かな怒りが、見ている私たちの心の裡にも、沸々と沸き起こってくるのです。
クライマックスとなる感動的なラストシーン。題名の"Last Full Measure"とはエイブラハム・リンカーンの演説の一節で、「最後の全力を尽くして」という意味だそうです。戦場に散った若き兵士、残された戦友たち、その厳粛な事実を全力で受け止め、ピッツェンバーガーに負けない勇気を示す若き官僚、その夫を献身的に支える妻(『ファンタビ』のアリソン・スドル)、ハリウッドの名優二人の最後の名演……それぞれの"Last Full Measure"に思いを馳せる時、ヲタクはもはや、感動の涙が溢れて止まらなかったのでした😢