オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

福地桃子と岡山天音と海とサンダーソニア〜『あの娘は知らない』

 
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横浜黄金町のミニシアター、「ジャック&ベティ」で『あの娘は知らない』(監督・井樫彩)鑑賞。

 

 季節は夏。眼の前に広がる伊豆の青い空と紺碧の海。BGMは寄せては返す波と、海の底の泡の音。

 

 伊東の海辺、両親と祖母亡き後、一人で民宿「中島荘」を切り盛りしている中島奈々(福地桃子)。従業員には休みを出して民宿は閉館中。海を眼下に見下ろす高台の道端に今日もサンダーソニアの花束を供えた奈々が民宿に戻ってきたところに、一人の青年がフラリとやって来て、どうしても泊めて欲しいと言います。青年の、どこかただならぬ様子に思わず宿泊を許してしまった奈々。藤井俊太郎というその青年(岡山天音)は、1年前中島荘に宿泊し、直後に伊豆沖の初島で亡くなった女性の婚約者だったのです。死の直前の恋人の足跡を辿ろうとする俊太郎に、奈々は同行することを申し出ますが…。

 

 共に大切なものを失った二人。自分自身の生き方にも、懐疑的な二人。そんな二人が、互いの哀しみや痛みを少しずつ理解し合い、手探りでその喪失感を癒やしながら、明日に向かって一歩を踏み出そうとする姿は切なくも愛おしい(ToT)これは福地桃子岡山天音、二人を愛でる映画ですねぇ……。何より、祈りを捧げる二人の横顔と合掌の姿が美しいです❗

 

 福地桃子の白い肌の質感すら捉えて映し出すカメラワークが見事で、ヲタクはずっと、(……こんなに透明感のある、綺麗な人が世の中に存在するんだなぁ…)と、惚れ惚れしながらスクリーンに見入っておりました。そしてそして、相手役が岡山天音だもん❗これ以上のキャスティングは、無いよね。福地桃子の、ちょっと硬質な透明感を受け止める岡山天音の柔軟さ。特に、人間観察が鋭い奈々の発言にびっくりして、「オレって何にもわかってなかったんだね…」って呟くところとか、スナックで奈々が高校の同級生たちに心無い言葉をぶつけられた時の彼の表情(あまりにも男前すぎて、これを見た女子は、天音くんに惚れるわ、絶対)とか、傷ついたフリしておちゃらけるところとか、孤独に苛まれる奈々にたったひとこと「ここにいるよ」とだけ伝えるところ(…またねぇ、イケボすぎるんだわ、これが 笑)とか、配信が始まったら何度もリピしたいっす(笑)天音くんみたいなオールマイティの俳優さん、若手ではなかなか見当たらないもんね。喜劇もシリアスもアクションもホラーも主役脇役チョイ役なんでもござれ、緩急自在・硬軟併せ持つ個性は唯一無二、しばらくは一人勝ち状態でしょう。

 

 台詞を極限まで抑えて、愛しい人を置いて逝ってしまった女性の心情や、奈々と俊太郎の行く末をこちらに想像させたり、寡黙な奈々の※無意識下の願望を彼女の見る夢で表現したり…。こういう脚本、ヲタクは大好きです❤(脚本も井樫監督ご自身)

互いに惹かれ合いながら、ただの一度も「好き」と口に出さない二人。しかし奈々の夢の中にはしっかり俊太郎が存在してる 笑

 

 俊太郎の恋人が好きだった花、奈々が両親のために供える花、そして俊太郎が奈々に贈る花、サンダーソニア。劇中、奈々が「花言葉、知ってる?」と俊太郎に問いかけるけれど、答えは最後まで明かされない。(この辺りの演出もニクイ)

 

 ヲタクは帰りの電車の中で調べてみた。

……そして、新たな涙が溢れた。


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