オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

女縁バンザイ❗〜ホン・サンス✕キム・ミニ『逃げた女』


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 ホン・サンス監督の新作『小説家の映画』が、いよいよ公開の運びになりましたね❗監督の公私両面のパートナーであるキム・ミニが、再び主役を務めています。昨年の映画『イントロダクション』では主演に若手男優を起用した監督ですが(キム・ミニはカメオ出演)、今回は主演にキム・ミニ再び……で、彼女が監督の最高のミューズであることに変わりはないようです。ヲタクの行きつけのミニシアター「ジャック&ベティ横浜」でも公開が始まったので、近々見に行くつもりなんだけど、『逃げた女』(2020年)がヲタクのめっちゃ好みの映画だったから、今回も期待まんまん❤『逃げた女』は、ヒロインが知り合いの女性たちを次々と訪ね歩いて、自己確認を重ねていくという、言わば「女縁」ムービーでした。今回の『小説家の映画』も、その公式HPには

長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニが、音信不通になっていた後輩を訪ねる。ソウルから離れた旅先で偶然出会ったのは、第一線を退いた人気女優のギルス。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛ける。かつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えたふたりの思いがけないコラボレーションの行方は……。

……とあるから、『逃げた女』同様、「女縁バンザイ❗」な映画であることには間違いない。(やはりベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した『イントロダクション』は正直言ってそれほど響かなかったので(^.^;、ヲタクはサンス監督の女縁ムービーが好みなのかもしれないです)

 

 ……というわけで今日は、『小説家の映画』公開記念として❗❓、同じホン・サンス✕キム・ミニのゴールデンコンビによる前作『逃げた女』について、ひとくさり語ってみたいと思います。

 

 結婚して5年。「人を愛したら、片時も離れず一緒にいるべき」との確固たる恋愛(結婚)観を持つガミ(キム・ミニ)。彼女は夫が出張に出かけた間に、昔の先輩や友人を訪ねることを思い立ちます。

 

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 ※最初に訪ねたのは、バツイチで今は女性と暮らすヨンスン(ソ・ヨンファ)。ヨンスンのパートナーがテラスで作ってくれる焼き肉がめちゃ美味しそう(•ө•)♡2人は焼き肉をむしゃむしゃ食べながら、「食べられた牛さんはどんな気持ち❓」とか、「牛さんのヒトミが可愛い」とか、ナゾの会話を繰り広げます(笑)


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※2番目に訪ねたのは、売れっ子のピラティス講師として働きながら、絵画のように美しい街のデザイナーズマンションで暮らしているスヨン(ソン・ソンミ)。自立して、自由恋愛を謳歌しているようにみえるスヨンですが……。


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※3番目に訪ねたのは、昔恋人を奪い合ったことがある(らしい)同級生のウジン(キム・セビョク)。ウジンの夫はマスコミに度々登場するような著名な脚本家。しかし彼女は最近、スノッブな夫の言動に辟易していて…。

 

 誰に会っても、まるでオマジナイの言葉みたいに「私と夫は心から愛し合ってるの。愛があるなら、一時も離れるべきじゃない」と繰り返すガミですが、次第にそれは、元々は彼女の夫が言い出したことで、ガミ本人は夫から一種の洗脳を受けていて、無意識にそれに縛られているだけでは…❗❓と、思えてくる展開。「君、ホントにそう思ってるの❓」と、ガミにツッコミたくなります(笑)で、ラスト近く、「同じことを繰り返し言うことは、結局ウソになる」というウジンのセリフが、大いなる皮肉としてジワジワ効いてくるしくみ。……しっかしねぇ、5年もよくもまあ…ヲタクなら1年ももたんわ〜〜(笑)

 

 ガミが会いにいったのも、離婚して同性と暮らす女性(ヨンスン)であり、独身を貫き「韓国の男たちはダメよ❗」と言い放つ女性(スヨン)であり、芸術家と信じて結婚したものの、夫の俗物根性にウンザリしている女性(ウジン)。この3人を訪問先に選んだ事実だけでも、ガミの求める方向性がわかろうというもの。しかし3人に共通して言えることは、彼女たちは全員自立していること。花屋を経営しているガミが「客足が伸びなくて…」と愚痴っても、「ダンナの稼ぎがあるから大丈夫でしょ」と、軽くいなされてしまいます。

 

 強く靱やかな女性たちに反して、この作品に登場する男たちは残念ながらクズばかり(^.^; 迷い猫にエサをあげているヨンスンに、妻が猫嫌いだからエサをあげないでくれと言ってくる近所のクレーマー(翌年、『イントロダクション』で主演を務めることになるシン・ソクホ。後ろ姿しか映らない 笑)や、1度ベッドを共にしたからといって「僕の行き場のない気持ちはどうしてくれる」とスヨンに詰め寄るストーカー、使い回しのコメントでギャラを稼ぐ俗物脚本家のウジンの夫など……。女たちの洒脱な大人の会話とは正反対、男たちはひどく耳障りな不協和音を奏でており、しかもそれが、何かのきっかけでとんでもないカタストロフィに発展し、女たちの人生を台無しにするのではないか……という不穏さを秘めているのです。

 

 「逃げた女」とは誰のことなのか、彼女は何から「逃げて」きたのかは容易に想像はつくものの、果たして彼女がこれからどんな人生の選択をするのかは、私たち観客の判断に委ねられているようです。

 

 第70回ベルリン国際映画祭のコンペ部門に出品され、銀熊賞(監督賞) を受賞した、世界にも認められた作品。

しっかしこれ、脚本も監督自身が書いているんですよね。スゴイなー、この完璧なる女性目線。キム・ミニと組むようになってから監督の作風がガラッと変わった……ってよく言われているけど、キム・ミニと女友だちとの会話に、監督がこっそり聞き耳立ててる図が、『逃げた女』観ながらヲタクの脳裏に浮かんだんでした。その昔、喫茶店で周囲の会話を書き留めて作詞のネタにしてた……っていうユーミンみたいにね(笑)