オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

綿棒みたいな女〜Netflix『ザ・キラー』

 
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 Netflixで『ザ・キラー』鑑賞。

 

 これまでは100%の成功率を誇ってきたプロ中のプロの殺し屋(マイケル・ファスベンダー)が、どういうわけか依頼された仕事に初めて失敗してしまい、ターゲットを取り逃がした上に、関係のないコールガールを撃ち殺してしまうという致命的ミスを犯してしまいます。殺し屋にとって、失敗=自らの死。身の危険を感じた彼は急ぎドミニカにある自宅へ戻りますが、時すでに遅し、豪奢な屋敷はさんざん荒され、大量の血の跡が…。ドミニカ人の恋人は拷問にも屈せず、隙を見て逃げ出したものの、彼が駆けつけた時には病院のベッドの上で瀕死の状態になっていました。彼は、殺しのコーディネーターである弁護士から、自分に刺客を差し向けたであろう依頼主を聞き出そうと行動を起こしますが……。


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※イケメンの革手袋にめっちゃ弱いヲタク(笑)「ヲタクが選ぶ革手袋が似合う男」No.1は『エイジ・オブ・イノセンス』のダニエル・デイ・ルイスだったけど、彼は俳優引退しちゃったことだし、今はトムヒかファスベンダーかな❤

 

 ターゲットの住まいの向かい側のビルから、「その一瞬」のために昼も夜も目を光らせ、待ち続ける殺し屋。鍛え抜かれた肉体で静かにヨガのポーズをとり、指立て伏せを繰り返すその姿は、まるで肉体そのものが鋭利な刃物でもあるかのよう。ターゲットの人物は、カーテンや家具の陰に見え隠れして、なかなか「その一瞬」は訪れない。殺し屋の脈動が観ているこちら側にまでドックンドックンと伝わってきて、息苦しい。失敗した後の武器の始末の仕方やら逃亡の仕方やら、一切無駄のない身のこなし、時折呟く哲学的なモノローグに至るまで、ファスベンダー演じる殺し屋は、何もかもがスタイリッシュ❗

 

 任務に失敗したファスベンダーに差し向けられた殺し屋で、彼の恋人を半殺しの目に合わせたのがアノ人ですよ❗

 

綿棒みたいな女(笑)

 

 もう、言い得て妙とはこのことで、思わず笑ってしまったわ。ヲタクは大、大ファンの女優さんだから、いつもヲタクの記事を読んで下さっている方はすぐわかると思うんですが。……ってまあ、クレジットでは2番手だし、ネタバレでも何でもないんだけど、「綿棒みたいな女」って表現があまりにもツボってしまったので、今回の記事ではこれで押し通す(笑)映画の役柄や、参加するイベントのテーマによって髪の毛の色を様々に染め分ける彼女ですが、今作では地の色プラチナブロンドの、しかもショートヘアだから、さらに綿棒感がハンパないわけ(笑)


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 ニューヨークのレストランで相まみえる2人のツーショットが無機質な色気に溢れ、カッコいいことこの上ない。お互いに懐に武器を隠し持ちながら、淡々と会話を進めるところも。実はこの2人、長年の過酷な殺し屋稼業に疲れて、引退を考えていた……という設定。それが何の運命のいたずらか、殺り殺られるハメになってしまった。超演技派の2人のこと、そこはかとない哀愁が漂っているところも素晴らしい❗

 

 監督はデヴィッド・フィンチャー。『セブン』、『ファイト・クラブ』、『ソーシャル・ネットワーク』、『ドラゴン・タトゥーの女』等で、現代人の抱える孤独や狂気、生きることのシンドさを描き続けてきたフィンチャー監督。彼独特の陰鬱で暗い色調の映像の中(しかもロングショットの多用で、登場人物の顔があまり識別できない 笑)、何が起きても粛々とやるべきことを遂行していく修行僧のようなファスベンダー演じる殺し屋こそ、彼にとって理想のヒーローなのではないか……と思わせるような作品でした。

 

★今日の小ネタ

 この殺し屋、なんとあのモリッシーがフロントマンを務めるバンド「ザ・スミス」の大ファン……という設定で、全編流れる音楽は全てザ・スミス(笑)。ヲタクも、我が熱烈推しジャック・ロウデンが若き日のモリッシーを演じた『イングランド・イズ・マイン』を観た直後はザ・スミスにハマって毎日のように聴いていたけど…。あの殺し屋も、冷静沈着な仮面の裏に、モリッシーのような閉塞感や抑圧された欲望や煮え滾るような怒りを抱えているのだろうか。