オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

典型的な北欧サスペンス……かと思いきや〜WOWWOW『エンド・オブ・サマー 消えた少年』


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 WOWWOWプライムにて、北欧サスペンス『エンド・オブ・サマー 消えた少年』(全6話)鑑賞。

 

  ストックホルムの病院で、グループセラピーのカウンセリングを担当するヴェラ(ユリア・ラグナソン)。優秀な心理士である彼女は、男性の患者と不適切な恋愛関係を持ったという理由で、免許停止処分を受けていました。しかし、間もなく免許を取り戻せる……という時に、またもやその患者の家に押しかけ、自ら肉体関係を持ってしまうヴェラ。

 

何この人、自己破壊願望のアブナイ奴ぢゃん❗

 

…と思わず画面に突っ込んだヲタクでしたが、しばらく観続けるうちに、彼女の行動に潜む、少女期のトラウマが次第に明らかになっていきます。


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※今でも過去のトラウマに悩まされ続けるヒロイン、ヴェラ。

 

 スウェーデン片田舎のスコーネに住んでいたヴェラたち家族。優しく大人しい父と奔放で精神不安定な母、兄と5歳の弟。母マグダレナは弟ビリーを溺愛する一方で、ヴェラには冷たくあたります。ある夏の日、部屋でビリーとふざけて遊んでいたヴェラは、突然入ってきた母に「私の可愛いビリー❗ヴェラは出て行って」と部屋を追い出されてしまい、彼女は不満と失望を抱えながらいつもの買い出しに。「僕も一緒に行く」と後を追いかけてきた弟にヴェラは、心にもなく「あなたはママと遊んでればいいでしょ」と冷たく言い返したため、ビリーはヴェラに背を向け、畑の中を肩を落としてとぼとぼと帰っていきます。しかしヴェラが弟の姿を見たのはそれが最後でした。ビリーはその後ぷっつりと姿を消し、村を挙げての捜索にもようとして行方はわからず……。湖の側でビリーの泥に塗れた片方の靴が見つかり、誤って湖に落ちたかと思われましたが、一方で、過去にヴェラの母と恋愛関係にあり、最近までストーカー行為を繰り返していたという男がビリーを誘拐して監禁しているのではないかと警察に取り調べを受けますが、アリバイが成立して釈放されていました。しかしヴェラたち家族にとってその後さらなる悲劇が。ビリーの失踪に絶望した母親が、ビリーが眠っているのではと疑われるその同じ湖に身を投げて自殺してしまったのです……❗


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※あの夏の日、弟を一人、家に帰した自分を今でも責め続けるヴェラですが……。

 

こんな過去があれば、自己破壊に走ってもムリはないわな(^.^;

 

 しかし、そんなヴェラにもある日、大きな転機が訪れます。彼女がカウンセラーを務めるグループセラピーにふらりと現れたイーサク(エリク・エンゲ)と名乗る青年。彼は里親の元で育ち、幼少期の記憶は曖昧だと言いつつ、「小さい頃、友だちが行方不明になった」という衝撃の告白をし、スコーネの村の風景を言い当てます。彼の顔立ち、表情、瞳の色……。ヴェラはイーサクがビリーの友だちなどではなく、彼こそがビリーその人なのではないかと疑い始めます。


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※ビリーの面影を宿す青年イーサク。警察官であるヴェラの兄や伯父のハラルドは「マグダレナの遺産目当ての詐欺師だ」と疑いますが…。

 

 父親の還暦祝いの為、久しぶりにスコーネに帰郷したヴェラは、伯父ハロルドをはじめとする親族や当時の警察署長モンソン(シーモン・J・ベリエル)らと再会することで、自分が当時知らなかった事実が沢山あったことに驚きます。心理士の知識を駆使し、ビリー失踪事件を独自に洗い始めたヴェラが最後に知る驚愕の真相とは……❗❓

 

 北欧でミステリやサスペンスと言えば、現代の世相を反映し、社会が抱える病理を広く訴えるもの……という認識があるため、離婚率の高さやそれに伴う家族の崩壊、親子の断絶、若者に蔓延するドラッグ、幼児虐待や小児性愛等がリアルに描かれている場合が多いんですよね。そして、他の国のミステリに比較して、何故かサイコパスの登場する割合が異様に高い。「国民の幸福度指数」では世界でも上位を独占する北欧諸国にこんなにサイコパスいるの❓っていう(笑)


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※当時の警察署長モンソン(左)。彼は当時の村の権力者に阿り、ビリー失踪事件をうやむやにしたことを悔いてアルコール依存症になってしまいますが…。

 

 今回のドラマ、前半は北欧サスペンスあるあるの展開で、(今回のサイコパスはコイツか❓アイツか❓事件の根底には小児性愛が❓)等々、ヲタクも推理しつつ観てたけど、全部ハズレ(笑)……結局、そこにあるのは「愛」でした。まあ一口に「愛」と言っても、無償の愛、歪んだ愛、いろいろあるわけで、様々な愛がボタンの掛け違いで、結果的には悲劇を生んでしまった……というところでしょうか。最後のどんでん返しまで全6話飽きずに見られる、よく練られたサスペンスだと思います。ラスト、事件の真相が明らかになり、悲しみの中にも明日への微かな希望を見出し、新たな一歩を踏み出すヒロイン、ヴェラの姿が爽やかです。……まあ1つ難を言えば、周囲の男性陣をトリコにするファム・ファタル、マグダレナがイマイチ魅力に欠け、ただのメンヘラおばさんにしか見えないこと(^.^; 元はと言えば、彼女の存在が事件の発端となるキーパーソンなので、ちょっとその点は残念だったかな。

 

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