Netflixでスペイン発のミステリー『INFIESTO インフィエスト』鑑賞。
スペイン発ミステリーと言えば思い出すのが、去年観た同じくNetflixの『神が描くは曲線で』。『神が〜』は典型的なイヤミス作品で、観終わった後、横で観ていた夫が「うー、なんて結末だ、モヤモヤするー」って叫んでたのを思い出します。「イヤミス」とは、そのものズバリ、読んだ後あるいは観た後、イヤな気持ちになるミステリーのこと。人間の狂気や、心の闇の部分に焦点を当てているため、ナゾ解きも明確な回答が得られない場合があり、後味が悪い余韻が残ります。ヲタク的には、主人公かと思われた探偵や警官がじつは犯人だったり、あるいは謎を解くべき主人公が途中で犠牲になったり……というのはミステリーの禁じ手じゃないかと思うのですが、イヤミスの本場?北欧やスペインのミステリーは、そういった禁じ手をバンバン繰り出してくる感じがします。そんなイヤミスだけど…じつはヲタク、なぜかそういうの、嫌いじゃないんだよね(小声)。じつは性悪説の、暗い性格の人間なのか、じぶん(笑)。今回の『INFIESTO インフィエスト』もその例に漏れず、「イヤミス再び!」って感じの映画です。
コロナが猛威を奮い始め、ロックダウンが始まったスペイン。その第1日目、人通りが途絶えてゴーストタウン化した街を、裸足でボロボロの服を着た若い女性がふらふらと彷徨っているのを発見されます。その状況から、数ヶ月に渡り何処かに監禁されていたらしいことがわかります。しかも、彼女の背中には妙な形をした焼印が押されていました。調査の結果、近辺の街でも若い男女の行方不明事件が多発していることが判明、同一犯の可能性を疑う2人の刑事(イサック・フェリスとイリア・デル・リオ)が、自身もコロナ患者の家族を抱え、ロックダウンのため捜査の応援も得られない中(ロックダウンの違反者を警察が取り締まっている)、新たな犠牲者を出さぬために奔走する物語です。
ストーリー的には、ミステリー好きなら結構先読みできる部分が多く、謎解きの面白さは薄かったのですが(^.^;、それよりもヲタクは、ロックダウン下にあるスペインの当時の逼迫した状況や、刑事が被害者の女性に犯人像をいくら聞き出そうとしても、病院に常住しているPTSDの専門家が「今はまだその時機ではない」と拒否するなど、被害者の人権がしっかり守られる捜査事情等々、スペインの内情が克明に描かれている点が興味深かったですね。
スペインのコロナによる死者数は、2022年の時点で13万人にも達していたそうで、コロナ禍によるロックダウンを背景にしたこの作品に、色濃い厭世観が漂っているのも無理はありません。舞台は、アストゥリアス山脈のふもとにある小さな鉱山町インフィエスト。鬱蒼とした森の奥深く建つ廃墟化した邸宅に得体の知れない犯人を追って忍び込むシーン、深さ1キロ以上はあるかと思われる地下鉱山にエレベーターで下っていくシーンなど、ミステリーというよりむしろホラー的な要素が勝っていたかな。
スペイン人言えばラテン系で、私たち日本人から見れば陽気でお喋りでマイペース…なイメージですが、この作品を見る限り、全編が陰鬱で暗い絵面、つゆほどもそんな国民性は感じられず(^.^; ……それだけコロナ禍によるダメージが甚大だった……ということの現れなんでしょうね。
★おススメ度
★★☆☆☆(おヒマなら見てね)
★今日の小ネタ…スペイン・ミステリー
『神が描くは曲線で』(2022年)
スペインって、結構トリッキーなミステリーの秀作を生み出している国なんですよね。
『ロスト・ボディ 消失』(2012年)
ヲタクの観た中では、前述の『神が描くは曲線で』(オリオル・パウロ監督)、同監督の『インビジブル・ゲスト/ 悪魔の証明』、『ロスト・ボディ』、『マーシュランド』(2015年…アルベルト・ロドリゲス監督)などがおススメ!
『マーシュランド』(2015年)