オープニング、原始人たちが狩りの獲物を頬張っているところに、真っ白なスーツに身を固めたスタイリッシュなイケおじ2人(ゲイリー・オールドマンとアントニオ・バンデラス!)が出てきて「カネのない時代は物々交換だった。自分の持っているものを欲しいものと交換してた。ところがカネが生まれてからというもの、モノを持ち歩く必要がなくなった。それどころか未来を買うこともできる。債権、ファンド、ローン、デリバティブ、空売り、株……」と、おカネの話を滔々とし始めます(え?これ何の話だったっけ?)って頭ぐるぐるしてると、場面は突如変わってある老夫婦の話に。
※悪徳弁護士を演じるゲイリー・オールドマン(左)とアントニオ・バンデラス(右)
ジョー・マーティンは、妻エレン(メリル・ストリープ)と共に、結婚40周年記念の旅行に出かけようとしていました。老いて足元も覚束ないジョーを支えながら、遊覧船に乗り込みます。隣の客と会話を楽しみながら景色を眺めていた2人ですが、それも束の間、突然高波が起こり、船は転覆、乗客は次々と湖に投げ出されます。エレンはやっとの思いで泳いで助かりましたが、ジョーはそのまま帰らぬ人に。結果的に21名が死亡する大惨事となりました。エレンはあまりのことに呆然としますが、早速弁護士が家にやって来て、訴訟などは起こさず、船会社が保険に入っている筈で、賠償金が出るからそれで示談するように話し、エレンはそれを呑みますが、実際の賠償金の額の少なさに愕然とします。船会社が契約していた保険会社は、西インド諸島にある「ユナイテッド再保険」を再保険契約を結んでいたため、賠償額に納得のいかないエレンは「ユナイテッド再保険」を訪ねて直接交渉を行おうと決意、はるばる西インド諸島に飛びます。ところがところが、メモした住所を尋ねると、そこはなんと郵便局でした。「ユナイテッド再保険」は、じつは富裕層が税金逃れのために立ち上げたペーパー・カンパニーで、その種のオフショア企業の登録案件を一手に取り仕切っているのがパナマにある「モサク・フォンセカ」という弁護士事務所だったのです。共同経営者がモサク(ゲイリー・オールドマン)とフォンセカ(アントニオ・バンデラス)というわけ。
※金融業界の闇に気付いて調査を開始するにわか主婦探偵エレンを演じるのは、ご存知名女優のメリル・ストリープ。実は彼女、この作品では二役を演じていて、ラストの種明かしでビックリ仰天(゚Д゚)お楽しみに。
この2人の悪徳弁護士の悪事がバラされる顛末と、その顧客たちの、※色と欲にまみれたエピソードが、監督のスティーブン・ソーダバーグのブラックジョーク満載で、次々と(しかもどこかスタイリッシュに)展開していきます。
※娘の親友との不倫現場を娘に目撃された実業家が口封じのため2000万ドルの無記名株を譲渡するものの、果たしてその株の現在の価値は……!?といった話や、英国人実業家とペーパーカンパニーの取引をしていた政府権力者の妻が、政府当局にバレそうになったため、その英国人に殺鼠剤を飲ませる話など。
モデルになった「モサク・フォンセカ」はこの件が明るみになったおかげで解散に追い込まれましたが、さらにNetflixを「本作は極めて中傷的な内容である」と、名誉毀損および商標権侵害で提訴しているようですね。評論家や一般の映画ファンの間でも評価は真っ二つ、賛否両論のもよう。
ヲタクの場合は……
先日観た『ダム$マネー ウォール街を狙え!』は株式市場の「闇」を正攻法で、しごく真っ当に描いていたから、観終わってからも(何よ、株式市場も結局一握りの金持ちにいいように牛耳られてるんじゃない!)って憤懣やる方なかったんだけど、今作ではおカネの亡者化した富裕層と、それに取り入って甘い汁を吸おうとするワルのえげつなさと滑稽さをソーダバーグが思い切りふざけ散らかして描いているもんだから、(こんな生き方するくらいなら、よぶんなおカネなんていらないや。コツコツ働いて真面目に生きていこう)って思っちゃったんだよねー。
……ん?これってヲタク、まんまとソーダバーグの術中にハマっちゃったってこと!?(笑)
・おススメ度…★★★☆☆
評判通り、評価が分かれる作品かも。それにしてもメリル・ストリープがダサい中年のオバサン、ゲイリー・オールドマンとアントニオ・バンデラスがチンケな小悪党をノリノリで演じてる。(しかも3人とも群像劇のOne of Themで、演技力の発揮どころは少なし^^;)こんな贅沢なキャスティングはソーダバーグならでは。
……それにしても題名のランドロマット(コインランドリー)、作品の内容とどう繋がるの?ソーダバーグさん、おせーて!