オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

お子ちゃまは見ちゃダメよ♬〜R18『哀れなるものたち』


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 エマ・ストーンが見事2度目のオスカー、主演女優賞を射止めた『哀れなるものたち』(ヨルゴス・ランティモス監督…彼自身も監督賞を受賞)。ヨルゴス・ランティモス監督とのタッグでオスカーにノミネートされたのは、『女王陛下のお気に入り』(2018年)以来2度目。あの時はレイチェル・ワイズ助演女優賞にWノミネートされました。ヲタクは2人とも好きな女優さんだし、『女王陛下の〜』演技も甲乙つけ難かったから、発表まで凄くソワソワしたのを覚えてる。だって…だって…どちらが受賞してもショックじゃない?本人たちも気まずいと思う。結果的に2人で落選でかえってホッとした。同じ作品から同じ賞に2人ノミネートするなんて、今後は止めて欲しいわ。

 

 ……とまあ、前置きはこのくらいにして(笑)

 

 時代は19世紀ヨーロッパもしくはそのパラレルワールド(……たぶん^^;)世に絶望し、橋から身を投げた妊娠中の女性(エマ・ストーン)。遺体はマッド・サイエンティスト、ゴッドウィン・バクスター博士(ウィレム・デフォー)に拾われ、胎児の脳を移植するという人体実験を施されます。彼女はバクスターにベラ・バクスターと名付けられ、ロンドンのバクスター宅で同居するようになります。博士の教え子マックス・マッキャンドルズ(ラミー・ユセフ)が彼女の成長を記録するという役目を与えられ、バクスター宅を訪れた時には2歳児程度の知能と行動しか示さなかったベラですが、みるみるうちに目覚ましい成長をとげます。性の目覚めと共に自我も覚醒めたベラは、彼女に性の愉楽を教え込んだ遊び人ダンカン(マーク・ラファロ)の誘われるままに、バクスターやマックスが止めるのも聞かず、ポルトガルやエジプト、フランス…と、彼女の言うところの「冒険旅行」に出かけます。彼女は旅先で新たな知己に出逢い、様々に刺激的な体験をしますが、さて、その旅の果てに、彼女が得たものとは……!?


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※それぞれの形でベラを愛するゴッドウィン博士(右…ウィレム・デフォー)とマックス(ラミー・ユセフ)ですが、2人ともベラの知的能力を軽視し、愛情=自分の保護下に置くこと……と勘違いした為に彼女の反発を招き……!

 上流社会ではホンネと建前が大きく違うこと、男性の「愛してる」は欲望を達成するために口にされることが多いこと、自分はふかふかのベッドで寝ているが、一歩外に出れば、食物がないために次々と乳幼児が死んでいく世界があること(エジプト篇)など、ベラは現実世界の厳しさを実証学的に学んでいき、さらには、ベラに初めて読書の楽しさ(おススメはエマーソン)を読むことを教えた老齢の女性マーサ(ハンナ・シグラ)や、「人間は所詮残酷な獣性の生き物」とうそぶく虚無主義の若者ハリー(ジェロッド・カーマイケル)、娼婦としての稼ぎを社会主義運動につぎ込む黒人女性……等、様々な出逢いを通してベラは自力で知的能力を深めていきます。サイレント映画メトロポリス』でロボトミーを受けたヒロイン・マリアは男性たちの玩具に成り果てましたが、イマドキのマリアはそうは問屋がおろさない(笑)


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※ベラに最初の「知」を授けるマーサ役には、『マリア・ブラウンの結婚』のハンナ・シグラ。サスガの貫禄。

 

 

 ……とまあ、ストーリーだけ読むとドイツ文学のおカタいビルディングスロマンみたいですが、いやいやいや(笑)ギリシャ出身のランティモス監督、1人の女性の自我の目覚めと成長ストーリーに、文学で言えば『ボッカチオ』やその名も『艶笑滑稽譚』(バルザック)や、映画で言えば『日曜はダメよ』の艶笑喜劇の味わいを見事にミックスしてみせた!…え?艶笑喜劇って何?ですって?エッチなコメディってことっす(笑)女性蔑視の時代や社会をおちょくるには、艶笑喜劇は最適な武器なのです。エマ・ストーンの緩急自在、巧みな演技も相まってヲタク、全編を通じて笑った、笑った。またね、ハルク・ザ・ヒーローとは似ても似つかない情けないクズ男マーク・ラファロがめっちゃイイ味出してました!

 

 ギリシャ中流家庭出身のランティモス監督、ギリシャの経済危機をきっかけにロンドンに移り住んだそうですが、いろいろご苦労があったんでしょうかね。映画を観てると、階級格差社会や英国人気質へのディスリが度々出てきて興味深い(^_^;)

 

 結論としては…

とにもかくにもエマ・ストーン

後にも先にもエマ・ストーン

ですね!(なんのこっちゃ^^;)

アメイジングスパイダーマン』シリーズでグウェン・ステイシーを演じていた頃、誰が今日の彼女を想像できたでしょうか?

 

 

ギリシャ移民のはなし

 夫の仕事の都合でベルギーに赴任した時、最初に住んだアパートの下に住んでいたのが、ニコさんというギリシャ移民2世の青年でした。子どもたちが騒いだので謝りに行くと、「全然気にならないよ。元気でいいね」と言ってくれた気さくな青年でしたが、移民出身なりの色々なご苦労があったようです。

 夏休み明け、6歳の長女が学校でアタマジラミをうつされてしまい、急いでホームドクターのところへ行くと、「夏休み明けはシラミの相談が急に増えるんだよ。ギリシャとかポルトガルとか、南方の実家に帰った人たちが持って帰ってくるんだ……まったくね!」吐き捨てるように言うドクターの顔に、親切なニコさんが2重写しになり、ひどく心が痛んだのを今でも覚えています。