横浜黄金町のミニシアター「ジャック&ベティ」で、ベルギー映画『Here』鑑賞。
ヲタクはかつて丸5年間、ベルギーで暮らしたことがあるので、(あー、あのレンガ造りの家ベルギーっぽい!)とか、街の中心を離れるといきなり森になるベルギーの風景…etc.を見ているだけで胸がいっぱいになって涙が溢れそうになり、困った、困った(笑)……それに、バス・ドゥボス監督が描き出す小世界は繊細で、心地よくて……。
ベルギーの首都ブリュッセルで建設労働に携わるルーマニア移民のシュテファン(シュテファン・ゴタ)。きつい労働や、ルーマニア人しか友達がいない孤独な日常に疲れ、長い休暇をとってルーマニアに帰国する予定だけれど、頭の隅では、(もう、戻ってこれないかもしれないな…)とぼんやり考えているようです。シュテファンは姉や友人たちへ、別れの挨拶代りに、冷蔵庫の残り物で作ったスープを配って回ります。ある日、森を散歩していた彼は、以前中華レストランで出会った中国系ベルギー人の女性シュシュ(リヨ・ゴン)と再会します。シュシュは植物学者で、苔の採取に来ていたのでした。植物の素晴らしさを丁寧に説明してくれるシュシュの優しさに触れ、荒んだシュテファンの心も次第に柔らかく溶けていって……。
九州ほどの面積しかないのに、フランス語、オランダ語、ドイツ語の3ヶ国語が公用語で、移民の受け入れも昔から寛容だった為に、多種多様の民族が暮らすベルギー。中国人をはじめタイ人、フィリピン人などアジア系移民も多く、お陰で私たちが住んでいた頃も近所の人や娘たちが通う学校のお母さんや先生など皆親切で、アジアンヘイト等とは無縁の暮らしでした。しかしシュテファンは、看護師として働いているお姉さん(ベルギーに来て家庭を持って、子供もいる)に「休みの日はやることないから、外に出て疲れるまで歩き回って、帰ってきて寝るだけ。もうそんな暮らしに疲れたんだ」って愚痴るんですね。うーん、彼の気持ちもよくわかる。お姉さんと違って彼は独身だから、なかなか人間関係が広がらないんですよね。ベルギー人はだいたい親切で、あからさまに人種差別してくるような人はほぼいないけど、だからといって孤独感が癒やされるわけじゃないものね。
※その穏やかさと優しさで、シュテファンの乾いた心を癒やすシュシュ。
そんな彼がシュシュと一緒に森の中を歩き回って、木々と擦れ合う音に耳を澄ませ、木洩れ陽に目を細め、突然の雨に驚いて走り出すうちに、表情まで柔らかくなっていく様子を見るのは、気持ちよかった。何だかこっちまで、日々感じてる小さな苛立ちや負の感情が洗い流されていくようで。彼がベルギーに再び戻ってくるかどうかはわからないけど、異国での暮らしが、寂寞としたもので終わらなくて、本当によかった。
見ているこちらまでシュテファンと一緒に森林浴でマイナスイオンを浴びた気持ちになる……一種のヒーリング・ムービーでしたね(笑)