オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

【悲報】おとぎ話は続かない〜映画『プリシラ』


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 みなとみらいのミニシアター「KINOシネマみなとみらい」にて、『プリシラ』(ソフィア・コッポラ監督)鑑賞。

 

 恋も何も知らない純粋無垢な14歳の少女の前に突然、イケメンで長身の、白馬に乗った王子様が現われました。たちまち2人は恋に落ちて、王子様は彼女が大人になるのを辛抱強く待ってくれて、彼女が22才の時、周囲の祝福を受けて結婚式を挙げました。そして2人は末永く幸せに暮らしましたとさ。

 

……と、そう上手くは人生運びませんでした、というお話(笑)

 

 とまあ、こう書いてくると身も蓋もないんですが(^_^;)、キング・オブ・ロックンロール、エルヴィス・プレスリーの妻だったプリシラが、14才(!!)の時にエルヴィスに出会い、結婚、出産を経て、結果的に28才で離婚に至るまでの過程を描いた作品です。

 

 2年前にオースティン・バトラーがエルヴィスを演じた、バズ・ラーマン監督の『エルヴィス』にどハマリして、映画館で何度もリピしたヲタクとしては、妻のプリシラの視点から描いた2人の短い結婚生活は、とても興味深かった。出会った時に既に大スターだったエルヴィスは、何にも染まっていない、まるで真っ白なキャンバスのようなプリシラを「自分好みの女」に染め上げようとします。17才でメンフィスの「エルヴィス御殿」に迎い入れられたプリシラは、なんと結婚するまでの5年間、エルヴィスと同居していたんですね🫢……これってまるで光源氏と紫の上みたいだよね。今のご時世なら犯罪モノですが、舞台は平安時代の日本じゃなくて、1960年代のアメリカっていうのが、またまたビックリです。マスコミ対策の為、高校に通うほかは、プリシラはまるで軟禁状態。バイトはおろか、友達を家に呼ぶことも禁止。ツァーや映画撮影で長期間留守にし、たまに戻ってくるエルヴィスは、プリシラに「家の灯火を絶やさないようにしてくれ」(⇐このセリフもいまいちイミフだが 笑)と言って外出を禁じた上、髪の色から服から細かく注文を出します。新曲の意見を求められたプリシラが「何だかピンと来ない」と言おうものなら、モノが飛んでくる始末(^_^;)自分から聞いといて、モノ投げるなよ…。かようにイケメン王子は姫に対して、彼に対する盲目的な崇拝を強要するのでした。エルヴィスが、映画で彼の相手役を務めたウルスラ・アンドレスを「ゴツくて男みたいな女。亭主(監督・俳優のジョン・デレク)が最悪だ」、アン・マーグレットを「したたかで出世しか眼中にない」とディスってる場面が出てきますが、キング・オブ・ロックンロールは何らかのコンプレックスがあったのか、よほど自分の思いのままになる、か弱い女性がお好みだったもよう。ウルスラはドイツ人、アンはスウェーデン人なので、2人とも体格も立派なのよね(^_^;)

 

 エルヴィスの自分に対する感情は、決して愛ではない、アダルトチルドレンの独占欲と支配欲だと次第に気づき始めるプリシラ。その辺りは、同じ女性として、見るのが辛くて切なかったな。当のエルヴィスは、プリシラが意を決して別居を切り出してもぽかんとして、「何でだよ?君は誰もが羨む対象なのに。(キング・オブ・ロックンロールの妻なんだぜ)」と、彼女の気持ちを最後まで理解できないし。実際のプリシラは、趣味が空手…というところから見ても、芯の強い自立型の女性だったみたいですね。まあ原作はプリシラご本人の著書だし、映画の監修も務めているから、多少美化されている嫌いはあるかもしれませんが……。


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※エルヴィス好みの服や髪型に身を固めた時代(左)から、自分らしく生きるため家を出る頃のプリシラ(右)。彼女の心境の変化は、ファッションにも表れています。

 

 ヒロインを演じたのは、ケイリー・スピーニー。ヲタク的には、ケイト・ウィンスレットが神演技を見せ、エミー賞で16部門にノミネートされたHBOのドラマ『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』でケイトの娘役を演じた時の印象が強いですが、あれからさらに演技も磨いたようで、この作品では、プリシラがエルヴィスとの愛と結婚生活の真実を知り、怒りと絶望から諦観、そして自立に至るまでの過程を繊細に演じ切り、昨年度(2023年)のヴェネツィア映画祭で見事主演女優賞を獲得しました。


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※エルヴィスを演じたのは、ジェイコブ・エロルディ。オースティン・バトラーと違ってさすがに唄うシーンはなかったけど、エルヴィス特有の籠もったような南部訛りは完コピしてましたねぇ。ヲタク直近で彼を見たのが『ソルトバーン』(Amazonプライムオリジナル)でのオックスフォードの学生役だったから、よけいその落差に感動しました。(彼自身はオーストラリア人)

 

 なにせ監督がソフィア・コッポラなんで映像やセットがめっちゃキレイだし、1960〜1970年代のファッションもお洒落で素敵、それだけでも一見の価値アリ!

 

★今日の小ネタ

 エルヴィス役のジェイコブ・エロルディの元カノは、トップモデルのカイア・ガーバー。んで、そのカイアが現在熱烈交際中なのが、映画『エルヴィス』でタイトルロールを演じ、アカデミー賞にもノミネートされて一躍ハリウッドのトップランナーに躍り出たオースティン・バトラー。「2人のエルヴィスと付き合った女」カイア・ガーバー(笑)


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※仲睦まじかった頃のジェイコブ・エロルディとカイア・ガーバー(左)。右は、只今真剣交際中と言われるカイアとオースティン・バトラー。

 

★おススメ度…★★★☆☆

それでもあなたのことはキライになれないわ、エルヴィス❤