MI5の落ちこぼれ部署「泥沼の家」。本署のエリート街道からハズレたリヴァー・カートライト(ジャック・ロウデン)と、彼のひと癖も二癖もある、しかしどこか憎めない同僚たち、そして彼ら以上に「食えない」上司ジャクソン・ラム(ゲイリー・オールドマン)に降りかかり、否応なく彼らが巻き込まれる災厄や難事件を描いたAppleTV「窓際のスパイ」も、早や4シリーズ目。
※尊敬していた祖父ディヴィッドの認知症に悩むリヴァー。しかし祖父には誰にも言えない秘密が……。
MI5の長官を務めた経験もある伝説のスパイ、リヴァーの祖父ディヴィッドは寄る年波に勝てず、認知症が次第に深刻化していました。ディヴィッドは始終「誰かが自分を殺そうとしている」とリヴァーに訴えかけます。リヴァーはそれを認知症特有の被害妄想だと思っていたのですが、じつはそれはディヴィッドの妄想などではなく、ある夜リヴァーを装った暗殺者がディヴィッドを襲い、ディヴィッドはライフルで暗殺者を射殺……という、第1話めから観ているこちらのド肝を抜く展開。ディヴィッドは、長官時代に、「ある事件」に秘密裏に手を染めており、それが元で命を狙われているらしい。しかもその「ある事件」が、近頃ロンドンで勃発した大掛かりなテロ事件にも関係があるらしい……。ということで、リヴァーは単身その真相を探ることになります。
3シリーズめまで、リヴァーの出自は明らかにされておらず、(両親に捨てられて、祖父に育てられた)という短い説明しかなされてこなかったのですが、第4シリーズで、スパイとして耀かしい経歴を持ち、人としても尊敬してきた祖父の「黒い秘密」を掘り起こすことで、リヴァーは、知りたくなかった自らの出生の秘密に立ち向かわなくてはならなくなります。
「真実」を知った時のリヴァーの衝撃と、人生の皮肉な巡り合わせへの落胆、実の両親に対する愛と憎しみ、それでもなお貫こうとするいちスパイとしての正義感……その複雑な心情を、ジャックは数少ないセリフながら、見事に表現してみせました。
※ゲイリー・オールドマンのジャクソン・ラム役も、将来彼の代表作になるだろう……と言っていいくらいのはまり役。ゲイリーは、この役を最後に俳優を引退することを示唆していますが…。
だから、リヴァーはジャック・ロウデンでなくてはならなかったのです。
冷酷無比に見えながら、そのじつ部下たちへの愛に溢れたジャクソン・ラム役を心憎いばかりに演じているゲイリー・オールドマンの演技はむろん神領域だと思いますが、相対するジャックもまた同じくらいに素晴らしく、リヴァー・カートライト役は、これからの彼の役者人生において、確実にひとつの一里塚となるに違いありません。
第4シリーズのラスト、様々な感情を胸に収めて、それでも明日に向かおうとするリヴァーの、何とも言えない表情。そんな時、ラムからパブへ呼び出しがかかります。パブでゴソゴソと今回の事件の報告書を出すラム。「ここにサインしろ。(内容は)書いといてやった」「手当をもらうためだけに呼びつけた❓️」と呆れるリヴァーに、「……い、いやその、飲みたきゃ飲め。自分で注文しろ。何も話さんでいい」と照れくさそうに言うラムの顔が秀逸❗️肩を並べ、黙ってグラスを傾ける2人の男。くーーーっ、シビレる😻ヲタクが、どんなカッコいいスパイものより、「窓際のスパイ」を愛する理由は、実はこんなところにある(笑)
※プライベートでは本当の親子のように仲が良いゲイリー・オールドマン(中)とジャック・ロウデン(右)。