オタクの迷宮

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大正レトロなダークヒロイン、爆・誕❗~世田谷パブリックシアター『お勢、断行』


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  世田谷パブリックシアターで『お勢、断行』を観賞。

 

  いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)、美しき悪女‥‥いや、昔風に言うならば、毒婦の大行進、「目にも綾な悪の華~百花繚乱」‥‥といったところでしょうか。

 

大正末期、資産家の松成千代吉の屋敷に、ヒロインの女流作家、 お勢(倉科カナ)はある事情から居候の身。その屋敷には、千代吉の娘(福本莉子)と女中(江口のりこ)、そして千代吉の後妻(大空ゆうひ)が住んでおり、千代吉の姉(池谷のぶえ)もしょっちゅう入り浸っており、まるで女人の館😅
そんなある日のこと、千代吉に怨みを持つ代議士(梶原善)が、 松成家の財産を奪い取る計画を後妻に持ちかけ、千代吉を狂人に仕立て上げて精神病院に送り込もうとする。(この頃の精神病院というのは相当劣悪な状況だったようです)

 代議士と後妻は精神病院の医院長(正名僕蔵)や貧しい電灯工事夫(堀井新太)を巻き込んで悪巧みを働かせ、首尾よく計画は運んだかに見えたが、思わぬ事態が発生したことにより歯車が狂い始めた。そしてそれは、目を覆うばかりの血塗られた惨劇の幕開けだった‥‥❗

 

  赤と黒を基調にした舞台を背景に、女性たちの美貌と、大正レトロな着物をまとった立ち姿が眩しい。場面が変わる度に障子が開いたり閉まったり、からくり屋敷のよう。そして、障子に浮き上がる禍々しい殺人者の影‥‥私たち観客は、周到に用意された悪の迷宮に迷い込む。

 

  色と欲とにまみれて、「つい出来心で」罪を犯してしまう登場人物たちの右往左往には思わず笑ってしまうけど、ふと自分を振り返り、(果たしてじぶん、あの人と同じ立場だったら悪行への誘惑に勝てるだろうか❓)と考えたとき、じぶんの中にも確実に存在する悪の種子に気づいて、背筋が寒くなるしくみ😅

 

  ヒロインお勢(倉科カナ)は、そんな俗人どもの迷いや右往左往にはまるきり無縁の、即断即決で悪を為す、突き抜けたダークヒロイン。そんな悪女を、清冽で、まるで童女のような雰囲気の倉科さんが演じるのだから、魅力的でないわきゃない(笑)パンフレットの「どんな悪役を演じてみたい❓」との設問に倉科さん、「※ハーレイ・クインもいいですね❗」(※DCのダークヒロイン。ジョーカーの彼女。映画ではマーゴット・ロビーが演じている)と答えていて、ああなるほどな‥‥と。お勢よりさらに限界突破、ハーレイ・クインみたいな「イっちゃってる」ダークヒロイン役の倉科さんをぜひ見てみたいです❗あ、『プロミシング・ヤング・ウーマン』みたいな役もイイね。そういえば、倉科さんってキャリー・マリガンに似てる。大人の女性の色気と、キュートな少女っぽさが同居しているところ。


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  ‥‥そしてそしてヲタクご贔屓江口のりこ❗もうこの人は当代随一のコメディエンヌぢゃないでしょうか❓今回も彼女が喋るたび、動くたびに爆笑の渦、客席の人気はダントツでしたね。後妻役の大空ゆうひさんが彼女を「カッコよくて、面白くて、色気があって無敵」と評していますが(パンフレットより)、さもありなん❗100%異論はありませぬ😊

 

  艶やかファムファタール揃いの女性陣に相対するは、梶原善正名僕蔵のクセ者コンビ(笑)役者たちの演技のアンサンブルもお見事😊

 

  作・演出は倉持裕さん。お勢は江戸川乱歩がその短編の中で作り上げたヒロインだそうですが、乱歩の、人間の業や古い因習、きわめて日本的な湿った情緒はあまり感じず、どちらかといえばエッジの効いたブラックコメディの味わい😊独特の世界観を繰り広げています。

 

  2年前、開演直前に公演中止となったというこの作品。同じメンバーで再び上演できて、ほんとうに良かった❗何があってもきっと、演劇人の熱い魂は消せない。パンフレットの巻末に掲載された倉持さんと、世田谷パブリックシアターの芸術監督に就任された白井晃さんの対談は胸アツで必読ですよ😃

 


倉科カナ 2年前中止の作品に再び出演 加齢「如実に感じますね」(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース