チャールズ国王の戴冠式も間近(5月)に迫り、例のヘンリー&メーガン問題やら、記念コンサートにエルトン・ジョンやハリー・スタイルズから断られた、はたまた我が国でもどなたがご出席されるのか…etc、何かと英国が話題の今日この頃。…なので、今回は「映画で旅する世界の街」シリーズ、ロンドン編①です。
★トゥモロー・モーニング
★『トゥモロー・モーニング』ロンドン東部の街マッピングの美しい風景も見どころ。
離婚を決意した夫婦が財産分与で争い、明日の朝は裁判所で調停を控えている……という設定の、ある1日の物語。世界的なミュージカルスター、ラミン・カリムルーとサマンサ・バークスが、愛し合いながらもすれ違う夫婦を熱演❗珠玉の歌声を聞かせてくれます。
今までの生活も、これからの人生も、一変してしまうだろう「トゥモロー・モーニング」を前に何故か、二人の脳裏に去来するのは、出会いから恋に落ち、結婚に至るまでの耀かしい日々でした。現在と過去の二人が、それぞれのシチュエーションで同じ曲を歌う……っていう構成になっています。でもこれ、元々は舞台なんだよね?映画ではそれぞれ過去と現在、ヴィジュアルを変えてそれとわかるように演じているけど、舞台ではどんなふうになってるんだろう(-ω- ?)もしかして別々の俳優さんが演じてる?……将来、舞台も見てみたいものです。
あんなにアツアツの恋人同士だった二人が20年経ってなぜ離婚に至ったのか……。ストーリーが進むに連れ、次第に原因は明らかになっていきますが、まあ結局のところ、お父ちゃんの「遅くやって来た自分探しの旅」に、奥さんと10才のキュートな息子が巻き込まれちゃったっていう(笑)まっでもね、これはラミン・カリムルーとサマンサ・バークスありきの映画😊難しいことは言いっこなし!(笑)
そして何より、ロケ地となったロンドン東部の街、テムズ川沿いのワッピングの風景の美しいこと❗まるで絵画のようで、四季折々、主人公たちの心象風景を鮮やかに彩ります。
★ラストナイト・イン・ソーホー
トーマシン・マッケンジー(『ジョジョ・ラビット』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)とアニャ・テイラー=ジョイ(『クイーンズ・ギャンビット』)という、これからグイグイ来るであろう二大アップライジングスターのゴージャス競演❗サイコホラー的な要素に、きちんとミステリーの謎解きもあって、すごく楽しめた🎵ヒロインが現代と1960年代のロンドンを行ったり来たりする設定なので、「ひと粒で2度美味しい」ロンドンを堪能できます。
コーンウォールの片田舎に住むエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、両親を亡くしておばあちゃんと二人暮らし。美術大学の奨学生試験にパスして、憧れのロンドン暮らしが始まります。しかし、女子寮に入寮したその当日から、生真面目なエロイーズは、いわゆるアート系の同級生たちに馴染めず、一人ぼっちに。ひょんなことからとある古い屋敷に下宿することになったエロイーズ。ところがその夜から彼女は、悪夢にうなされることに…。夜な夜な1960年代のロンドンにタイムリープし、歌手志望で、カフェ・ド・パリの舞台に立つことを夢見るサンディ(アニャ・テイラー・ジョイ)の人生を鏡越しに追体験するようになってしまったのです。サンディは、ジャック(マット・スミス‥‥『ザ・クラウン』のフィリップ王配や『モービウス』等々、最近お目にかかる機会が多い)という男性と恋に落ちますが、このジャックがとんだ食わせ者で、彼はサンディにストリップショーへの出演や、果ては売春まで強要するようになります。エロイーズはいつのまにかサンディを自分の分身のように感情移入していきますが、鏡越しにサンディが絶望し、苦しむのを見ても、どうすることもできません。そしてある夜ついに、サンディが惨殺される現場に遭遇したエロイーズ。それはエロイーズにとって、恐ろしい悪夢の始まりでした…。
怖い怖い映画ですが、一方でエドガー・ライト監督の、60年代ロンドンへのオマージュ満載。エロイーズが初めて60年代のロンドンにタイムスリップした時、正面には初代ジェームズ・ボンド、ショーン・コネリー主演の『サンダーボール作戦』のでっかい看板が目に入って、ヲタク思わずニンマリ(笑)
そもそも『Last night in SoHo』という題名や、エロイーズという役名も当時の曲から取ったもの。サンディがオーディションの時に歌うペチュラ・クラークの『Downtown(恋のダウンタウン)』をはじめとして、 『A world without love』、 『Don't throw your love away』、『Beat girl』、 『Wishin' and hoppin』、『You'are my world』、『Anyone who had a heart』、『Heart wave』‥‥等々盛りだくさん❗(オールディーズは色々な人がカバーしているから、若い人でも、どこかで聞いたことがあるかも)
しっかし、ヒロイン・トーマシン・マッケンジーのブルーグリーンの瞳、まるで湖みたい。吸い込まれそう‥‥。映画界、久々に正統派美女登場❗‥‥って感じです。そしてそして、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのアニャ様はオーラすごいっす。今回、歌って踊って大サービス❤️
1970年代、米ソ冷戦時代の真っ只中。世界中のあらゆる場所にスパイが暗躍していた時代。この映画は、英国諜報部MI6の上司から特命を受け、重要な情報ごと西側に寝返りたいという東側のスパイと密会する為、ハンガリーのブダペストへ出向く一人の工作員(マーク・ストロング)の姿をカメラが捉えるところから始まります。この特命はなぜかソ連側に漏れており、彼はブダペストの路上で撃たれ、計画は失敗に終わります。この事件をきっかけに、どうもMI6の幹部の中にソ連と通じている二重スパイ(いわゆる「もぐら」)がいるらしい…という事実があきらかとなり、その隠密捜査の為に、一旦は引退した初老のスパイ、ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)がその任務に当たることになります。
※霧深いロンドンの街を歩くジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)
作者のジョン・ル・カレはMI6での勤務経験があり、恵まれない処遇の中、命を賭けて任務を遂行するスパイたちのリアルをその著作の中で時に冷徹な筆致で描き出しました。
※典型的な英国紳士のお洒落
スマイリーを演じるゲイリー・オールドマンがもう、その佇まいからお洒落の仕方からめちゃくちゃカッコよくて😍一見温厚な英国紳士に見えながら、MI6本部から重要書類を盗み出すよう部下のピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)に命じる時の非情さよ。かと思えば、上司のコントロール(ジョン・ハート)から絶大なる信頼を置かれていると自負していた彼が、ふとしたきっかけで自分すらも「もぐら」ではないかと疑われていたと知った時の表情❗無言のうちに静かな失望感とやりきれなさを滲ませて…秀逸です。ル・カレ原作のジョージ・スマイリーシリーズでは、スマイリーと敵国ソ連の伝説的スパイ、通称カーラとの頭脳戦と、男同士の奇妙な絆が描かれていますが、この映画の中でベネ様相手にカーラとの初めての出逢いを語る時のゲイリーの長いモノローグも必見❗この時アカデミー主演男優賞にノミネートされながら、惜しくも受賞を逃したゲイリー。この時獲らせてあげたかったよね…ゲイリー本人と認識できないチャーチル首相役よりもさ(笑)
※ゲイリー演じるスマイリーが、ことあるごとに泳いでいたハムステッド・ヒース公園の池。ロンドンでもゲイたちが集まるので有名な池らしい(^_^;)……まあこの作品そのものが、男同士の濃密な愛を描いた映画なんだけどね。
一方、「これから君を危険に晒すことになる。しかし失敗して捕らえられても、私の名前は絶対口にするな」とスマイリーに冷酷に言い放たれても、彼に心酔しているがゆえに何の疑念もなく危地に赴くピーター・ギラム役ベネ様のピュアな青さ、若さゆえの情熱😍あー、もうたまりましぇ~~ん(アホ😅)奇人変人の天才か、屈折した役柄が多い昨今のベネ様。彼の若き日の貴重な正統派イケメン演技と言えるでしょう。
二人以外にも前述のマーク・ストロング、コリン・ファースなど、渋い英国イケメン俳優総出演…といった趣。今や英国だけでなくハリウッドのトップ俳優に上り詰めたトム・ハーディが髪をキンパに染めて、MI6の下で汚れ仕事を請負う若い工作員役。東側スパイの内縁の妻と禁断の恋に落ちる熱い男を演じています。
※『否定と肯定』メガネ男子のジャック・ロウデン〜〜😍
この映画は実話に基づいた作品。
ホロコースト研究家アメリカのデボラ・リップシュタット教授(レイチェル・ワイズ)が大学の講義中、ホロコースト否定論者の学者アーヴィング(ティモシー・スポール)が突如として乗り込んできて、『ホロコーストはなかった。なぜなら命令書は残ってない。あるなら持ってこい❗』と叫び出す衝撃的な場面から始まります。デボラは、ホロコースト否定論者たちの嘘を批判した本を出版していたのです。あまりの理不尽な言いがかりに、デボラが茫然として反論できないのを見たこのクズなおっさん、これはイケるぞ、と思ったんでしょうね、今度は名誉毀損でデボラを訴えてきます。
ホロコーストはもちろん厳然たる歴史的真実なので、大元のドイツでは、公的な場でホロコーストを否定することを法律で禁じているのですが、言論の自由を謳うアメリカでは何でもアリ。だからアーヴィングはそこを逆手にとる。しかも、彼自身はイギリス人だから、『被告側が原告側の訴追内容の立証責任を負う』というイギリスのヘンテコな法律を利用して、アメリカ人の彼女が闘いづらいイギリスで訴訟を起こすんですね。アーヴィングはホロコーストが事実であることを充分承知していながら、自分自身の反ユダヤ思想、売名、ミソジニー等々を正当化するために、デボラを訴えたのです。それはデボラがユダヤ人であり、しかも女性だったから。
イギリスの法廷で裁判があるから、デボラは英国人の弁護団を雇い、裁判の度にロンドンに通わなくてはならない。初めて弁護団に会うために陽光溢れるアメリカからロンドンに着いた日は暗い空から土砂降りの雨が降っています。まるで彼女の心象風景のように。
何かの災害に遭遇したように理不尽な闘いを突然強いられたデボラが、当初はぎくしゃくした関係だった弁護団の面々と、国籍や『被告と弁護団』という立場を越えて次第に心を通わせ、奇跡とも言える大逆転を勝ちとるさまは、感動としか言いようがありません。
アンドリュー・スコットが弁護団のリーダーである英国でも有数のキレ者、事務弁護士ジュリアスを(ヲタク的には、彼と言うと、ベネ様の『シャーロック』めっちゃ魅力的な悪役モリアーティ😍)、英国の名脇役トム・ウィルキンソンが実際に法廷で弁護に当たる法廷弁護士ランプトンを演じています。この法廷弁護士、スコットランド人で、そのたくまざるユーモアと職務に対する誠実さでデボラのピリピリと尖った心を溶かしていくプロセスがね…とってもステキなんですよ~❗
さて肝心のジャクロくんはというと、いつものようにまずはビジュアルから全く変えて、ストレートの短髪にメガネ男子(…萌える😍)新進弁護士そのまま。デボラに、どういう論点で法廷で闘っていくか、説明する場面があるんですが、法律用語を多用した長ゼリフ、淀みなく流れるように喋るところはサスガです。正義感に燃えるストレートな役柄で、屈折したキャラが多い彼にしては、『ダンケルク』のパイロット、コリンズと並んで珍しい役です。
社会のそこかしこでフェイクニュースが、しかもSNSであっという間に拡散する時代。一国の大統領や首相ですら、この映画のアーヴィングのように、それが嘘だと知りながら平気で政治的な手段に使っている…。この映画が製作されたのは、そんな危険な時代に警鐘を鳴らす意図があったのか…と、そんなことをつらつら思うヲタクなのであります。
★ノッティングヒルの洋菓子店
ノッティングヒルを舞台にした映画…と言ったら、10人中8人が『ノッティングヒルの恋人』(1999年)と答えるでしょう。ハリウッドのスター(ジュリア・ロバーツ)と平凡な書店主(ヒュー・グラント)のロマコメ中のロマコメ。日本でも大ヒットしましたよね。……でもヲタクはだんぜんこっち。…ったく、どこまでマイナー志向なんだ、じぶん(笑)
優れたパティシエのサラは、親友のイザベラと共にロンドンのノッティングヒル地区に長年の夢だった自分たちの店をオープン。その当日、猛スピードでロンドンの街中、店に向かって自転車を走らせるサラ。この人がヒロインかと思ったら、事故に遭って亡くなってしまうという衝撃のオープニング😭
親友の死によって長年の夢を打ち砕かれたイザベラと、遺されたサラの一人娘クラリッサ(シャノン・ターベット)、そして娘と仲違いしたまま事故で失い、喪失感に悩まされるサラの母ミミ(セリア・イムリー)が、力を合わせてサラの夢だった洋菓子店を再び立ち上げようと奮闘する物語。パティシエがなかなか見つからないまま開店に向けて走り出した3人の前に、なぜかミシュラン二つ星レストランで活躍する一流パティシエのマシュー(ルパート・ぺンリー=ジョーンズ)が現れて、「僕に手伝わせて」と申し出る…。
ワケありマシューは、英国の法廷ドラマ『シルク~王室弁護士マーサ・コステロ』で、女たらしのクズ弁護士役で強烈な印象を残したルパート・ペンリー=ジョーンズ。(どこかの国の芸人ぢゃないけど、トイレで&Ⅹ%#[]≠≒する場面がアタマに焼き付いて離れないんですけど)この映画では、やっぱり女たらしではありつつ(イザベラに"You are a womanizer"って言われてた)シンは優しくて誠実なパティシエを好演。
※ロンドンの観光名所、ノッティングヒルのカラフルな街並み
お店の名前を"Love Sarah"(映画の原題)と名付けた四人の、それぞれ心に秘めた想いが胸を打ちます。また、店をオープンしたもののちっともお客さんが来なくて、ミミが起死回生のアイデアを打ち出すのですが、それも、ロンドンっ子ならではの、街や街に住んでいる移民の人たちへの深い「愛」があるんですね。(映画の中で、「なんで治安の悪いノッティングヒルで洋菓子店を開こうと思ったのか?」っていうセリフがあるんですが、多国籍の人々がひしめくこの地区だからこそ…の展開になっていきます)
人が挫折した時、深く傷ついた時、立ち直るきっかけを作ってくれるのは、自分自身の傷にこだわるよりもむしろ、いったん視点を変えて周囲に目を向け、他者の為に自分が何ができるかを考えてみること…。その時初めて、自らの心の傷が癒されていることに気づく…。この映画は、私たちにそんな密やかなメッセージを送ってくれているような気がします。
お店の将来に転機をもたらす存在として、日本人女性のタナカ・ユウナさんと、抹茶ミルクレープが登場します。(日本の代表的なお菓子がコレ…って言うのは論議を呼ぶところだと思いますが=笑)
詳しくは映画を見てのお楽しみ😉
今年に入ってから、自衛隊と英軍の相互往来を円滑化し、共同訓練と武器開発を可能にする「円滑化協定(RAA)」に署名した日英両国。第二次世界大戦後しばらくは、英国における反日感情も凄まじいものがありましたが、「日英同盟」の復活とも言われるRAAによって、今後両国の関係性にも変化が見られそうです。協定の賛否はさておき、同盟国の実情を知るためにも、映画で楽しく勉強してみませんか?