オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

わかりみがすぎる😍~映画『空に住む』

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   交通事故で突然両親を亡くし、天涯孤独になった直美(多部未華子)が、叔父(鶴見辰吾)が投資用に所有している天空の城のようなタワマンで暮らし始めるところから、このストーリーは始まります。

 

  渋谷や新宿の遠景を遥かに見下ろすそれは、直美がいみじくも呟いたように「まるで空に住んでいるかのよう」。両親を突然亡くしても「なぜか涙が出なかった。四十九日を過ぎても、まだ泣けない」と語る直美。一人娘なのに両親はなぜか彼女に対してあまり関心がなかったようで、そのせいなのでしょうか、昔からボヘミアン的な性格だったらしい彼女は、父親から「雲みたいな子」と呼ばれていたらしい…。

 

  人は所詮、一人で生まれて一人で死んでいく。周りからみたらそれは、寂しい生活なのかもしれないけれど、その、どこにも属さず、ネコのハルだけを相棒に空に浮遊しているような孤独だが自由な生活を直美は、達観とか諦め…というより楽しんでいるように見えるのはヲタクだけ❓😅…自分寄りに考えすぎなんだろうか(笑)ヒロイン役は、こういうどこかコジレた女子の、繊細な心理を演じたら右に出る者はいない、無敵の多部未華子❗(笑)もう、全編彼女の独壇場です。

 

  かようにモノクロームで淡々と続いていくかに見えた直美の生活に、ある日微かに色彩がかかります。ふとしたきっかけで始まった、同じマンションの住人である人気俳優、時戸森則(岩田剛典)との秘め事。それは浮遊する、地を離れた空の上で行われるからなのでしょうか、どこか浮世離れして見えます。

 

  この時戸という人物がなかなかのクセ者でして(笑)刹那的な恋愛を繰り返す快楽主義者で、人の心の隙間にするりと入り込んでくる猫のような男。しかし軽いヤツなのかと思えば存外、暗い瞳の奥には彼独自の人生哲学が仄見えて、変幻する魅力、女性を翻弄してやまないオム・ファタール。岩田剛典の、トム・ヒューズばりのblank eyesがセクシーでクラクラします(笑)

 

  「もう、こんな関係は終わりにしよう」と言いつつも、深いところでどこか共感しあっている二人の関係(本人たちは意識していないのかもしれないけど)が、苦くて辛口、フランス映画みたいでヲタク的には凄く好み😉時戸が、直美の叔母のある行動に激怒する場面があるのですが、それがひいては直美のその後のライフスタイルに大きな影響を与えていくことになります。…人と人との関係は、深く濃密で、長く続くことが是である、という思い込みが私たちにはあるわけですけれども、この映画は、決して声高ではないですが、そういう固定観念というか先入観に対して静かなアンチテーゼを示してくれているような気が…。

 

 助演陣も凄く豪華😮出版社で働く直美の後輩に岸井ゆきの。担当作家(大森南朋)の子を妊娠しながら全て隠してフィアンセと結婚するとんでもない女性の役(笑)しっかし『愛はなんだ』でも然りでしたが、現実にはとても存在しないようなぶっ飛んだ人物像を、ギャグではなくリアルに演じ切れる彼女の力量っていったいどこから来るんでしょうか?

 

  直美とのふれあいの時間は一瞬だけど、彼女にとっては特別な意味を持つ人物に柄本明永瀬正敏❤️うーーん、二人ともサスガの存在感。特に永瀬正敏は、「両親のお葬式でも泣けなかったサイテーなワタシ」と自嘲する直美が、彼の呟く名言に思わず涙する…という、ニクイ男として登場(笑)

 

 必死に突っ走ってきた人生、ふと足を止めて、来し方行く末を振り返ってみる。

深まり行く秋に相応しい一本。