オタクの迷宮

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

結末がいかにもフランス的な~『アプローズ、アプローズ❗』

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横浜のミニシアター「ジャック&べティ」で『アプローズ、アプローズ❗/囚人たちの大舞台』観賞。

 

 何をやっても上手くいかない舞台俳優のエチエンヌ(カド・メラッド)。親友や離婚した元妻は着々とキャリアを積んでいるというのに、彼自身は3年も俳優の仕事のお呼びがかからない崖っぷち。やっとありついた仕事が、刑務所の囚人相手の「寓話の授業」の先生。イソップなど寓話を暗唱する内容だけど、当の囚人たちは飽き飽きしていて、受講人数も減るばかり。そんな状況を見たエチエンヌ、何をトチ狂ったか(笑)演技ドシロートの囚人たちに英国の大作家サミュエル・ベケット作の不条理劇『ゴドーを待ちながら』を演じさせようと思い立ち、スパルタ特訓を始めます。当然口々に反発する囚人たちですが、エチエンヌの謎の熱意にほだされたのか❓一生懸命セリフの練習に取り組むようになります。みんな強盗とか麻薬の売人とか殺人とかビックリするような罪状なんだけど、人間誰しも、「生まれ変わりたい、より良く生きたい」という良心の種……みたいなものは持ち合わせているんだなぁ……と、こちらに思わせてくれるほのぼの展開。また、当のエチエンヌも、当初は自分自身が「もう一花咲かせる為に」囚人たちを1つの手段として見ていたようなフシがあるんですが、一人一人と触れ合って彼らの心情を理解するうちに、両者の間には深い信頼と絆が築かれるようになります。

 

  各地の小劇場で囚人たちによる『ゴドーを待ちながら』は、更正プロジェクトの枠を越え、大人気を博すようになっていきます。「囚人劇団」が発足して1年が経った頃、なんとパリのオデオン座から出演依頼が来ます。地方判事や法務大臣をはじめとして、各界お歴々の臨席のもと、ついにエチエンヌと囚人たちに感動のフィナーレが……❗

 

ところが、そうは問屋がおろさない(笑)

 

 

結末話しちゃうとネタバレになっちゃうんでここでは書きませんけど、フランス本国では大ヒット、フィガロ紙は「近年最高のフランス映画」、パリマッチ紙は「非の打ちどころのない完ぺきな映画」って絶賛してます。でもね、ヲタク思うに、アメリカや日本では違う反応だと思うの😅これ、スウェーデンで起きた実話の映画化らしいんだけど、そもそもアメリカや日本だったら、この事件はたぶん映画にはしなかったと思う。フランス人ってやっぱり……成熟してる。このどんでん返しを「感動的だ」と捉えるフランスって、大人の文化の国なんだと思う。クヤシイけど。

 

  フランスは個人主義の国ってよく言うけど、モノホンの個人主義とは、自分のワガママを通すことではもちろんなくて、どんなに自分と境遇や立場が違う相手であっても、それを排斥したり責めたりすることなく、互いに理解しようと努力することによって初めて成立するものなんだ……ってことを、改めて感じさせる映画です。

 

 この事件が起きた当時、ベケットはまだ存命で、「素晴らしい結末だ」と感想を述べたそう。うーーん、その懐の深さがまたカッコいいな❗