桜木町駅前のシネコン、ブルグ13で「不思議の国のシドニ」鑑賞。
最愛の夫を亡くし、大きな喪失感を抱えるフランス人作家シドニ(イザベル・ユペール)。彼女は日本の出版社から招聘され、不安と期待を抱えながらん人生で初めて※「不思議の国、ジャポン」(フランス映画なので、ニッポンじゃなく、ジャパンじゃなく、ジャポンでしょう 笑)へたどり着きます。 寡黙な編集者の溝口(伊原剛志)を案内役に、各地で開催されるサイン会で日本の読者と対話しながら、桜の季節に京都、奈良、直島へと旅をするシドニ。そしてなぜか、ホテルのはめ殺しの窓が開いていたり、シドニに届けられた筈の懐石弁当が食べられていたり⋯といった奇っ怪❓️な事件が発生。それが亡くなった筈の夫アントワーヌ(アウグスト・ディール)の仕業と知ったシドニは⋯⋯。
※在日フランス人のポール・ボネが「不思議の国ニッポン」シリーズを書き始めたのは1970年代。こんなにSNSが発達した現代においても、フランス人にとって未だ日本は異世界、「不思議の国」なんだろうか⋯。
ヲタクも以前旅したことのある京都、奈良、直島ですが、(え❓️こんな夢の国みたいな美しい場所だったっけ❓️)って⋯(笑)長編デビュー作「ベルヴィル・トーキョー」のプロモーションで日本を訪れ、その後も奨学金を得て京都に6週間滞在経験があるというエリーズ・ジラール監督の l'amour du Japon(ラムール・デュ・ジャポン 日本愛)サクレツ❗️の作品。アントワーヌの幽霊が語る「日本だから僕は姿を現すことができた」というセリフが、この作品を貫くテーマとも言えるでしょう。お盆には死者が帰って来ると信じて迎え火を焚き、霊もお腹がすくと言ってお墓や仏壇にはお花と一緒にお酒や食べ物を供える、生者と死者が共存する、彼岸と此岸の曖昧な日本特有の世界がここには存在します。似通った雰囲気を持つ山田太一の「異人たちの夏」も、英国人の監督によってリメイクされたばかり(アンドリュー・ヘイ監督「異人たち」2023年)。ヨーロッパの人たちは、善と悪、生と死、敵と味方⋯⋯全てがくっきりと明確に分けられ、対立する世界観に疲弊し、「日本的なるもの」に癒やしを求めているのでしょうか⋯⋯。
伊原剛志が、シドニの心を癒す寡黙で無骨な日本の編集者溝口健三を演じています。(全編フランス語のこの作品で、長台詞に挑戦した彼の役者魂に乾杯❗️🥂)それにしても、フランス人の女性の眼に映る日本の男性ってこういうイメージなのかな。フランスのミステリードラマ「アストリッドとラファエル」で、自閉症を抱えながらパリ警察の文書係として活躍するアストリッドの心の支えになるのがパリの日本食店主タナカ・テツオさん。寡黙で照れ屋なのにナゼか、まるで主君の姫に仕える武士のように身を挺してアストリッドを守るテツオさん。伊原さん演じる溝口が、テツオさんのキャラにソックリなのよ⋯。日本のどこかにこんな男性いるの❓️⋯いるならヲタクも癒やして欲しい、このササクレだった心を(笑)
伊原さんはもう、フランス語の習得から何から、頑張ってたよ❗️彼に惜しみない拍手を送りたい。それもあのイザベル・ユペール相手にさ⋯。「二十四時間の情事」(アラン・レネ監督、1959年のフランス映画)の岡田英次ばりに健闘してました。しかし、日本の俳優さんがフツーに海外の映画に出演する時代になったのね⋯。
★今日の小ネタ⋯溝口健二監督
伊原さん演じる「溝口健三」という役名は、言わずと知れた日本の誇る映画監督「溝口健二」をもじったもの。(作品中、溝口がシドニから「あの有名な映画監督の親戚?」と尋ねられるシーンが実際に出てきます)ネットで調べたところによれば、ジラール監督は小津安二郎や成瀬巳喜男のファンだそうですが⋯。ヲタクはだんぜん耽美主義の「溝口健二」派なんで、名前が出ただけでも嬉しかった。
1952年〜1954年3年連続でヴェネツィア国際映画祭で受賞を果たした溝口監督ですが、なぜか日本ではあまり認知されていない気がする⋯😭ぜひ今の日本の若い人たちにも見て欲しい❗️耽美な映像に潜むそこはかとない鬼畜さかげんを。ハマる人にはハマる⋯⋯はず(笑)