東京国際映画祭にて『ムービー・エンペラー』鑑賞。主演はあのアンディ・ラウ。言うまでもなく香港…いや、アジア、いや世界的大スターです。ジャッキー・チュン、アーロン・クオック、レオン・ライとともに四大天王と称され、一時期は無敵も無敵、破竹の勢い。出演映画数も凄くて、100本を越えるらしいんですが、意外やコメディは少ない印象。でもヲタク的には、若い頃トニー・レオンと共演した『インファナル・デイズ〜逆転人生』のコメディアンぶりや、『王朝の陰謀』シリーズのもっさりした迷判事❓等、肩にあまり力の入っていない役柄が好みなので、今回すごーく楽しみにやって参りました、会場のヒューリックホール東京🎵
……で、観終わった直後の感想と言えば……
ゆるいコメディ演技を期待……なんて生易しいもんじゃなかった😭
かなりブラックだった。正直言ってコワかった^^;
ストーリーは一言で言うと、ダニー・ラウ(アンディ・ラウ)は香港映画界の大御所で、香港のスカイスクレイパー群をさらに見下ろす大邸宅に住むセレブリティ。しかし映画賞レースではジャッキー・シェン(ジャッキー・チェン…写真のみのご出演)にいつも遅れをとり、無冠の帝王状態。今回の香港電影金像奨でもやはり受賞したのはジャッキーで落胆しているところに、悪乗りした司会者から代理でトロフィーを受け取るように言われ、2重の屈辱を味わうことに。奮起したダニーは、世界でも認められたアート系の中国人監督(ニン・ハオ監督自身が演じています)とタッグを組み、今度こそはと賞獲りレースに乗り出します。監督は「世界が中国映画に望むものは農村の生活だ。君には農民を演じてもらう」と言います。しかし、何しろ香港セレブなダニーには、カツラを被り、顔を泥で汚したところで、監督の望む、人生に追い詰められた農民の「粗野な荒々しさ」など望むべくもありません。実直な役者のダニーは、監督の望む農民像に少しでも近付こうと、北京郊外の豚農場に取材に訪れますが、その時から彼の役者人生は少しずつ歯車が狂い始め……❗
何しろ、香港電影金像奨の授賞式、英国式の皮肉たっぷりなジョーク満載、ヲタクも、なんも考えずワハハ笑っていたんですが、ダニーが取材で豚農家を訪れた頃から、内容がどんどんブラックになって行くんですよね。新種のホラーか❗❓っていうくらいに。豚農場の主人が、最初は大スターのダニーに感激して抱きついたり大盤振る舞いでご馳走したりしていたのに、自分がダニーに送った肉切り包丁(贈り物に肉切り包丁って……(^.^;)をこっそり捨てられたのを恨んで態度急変、どこまでも追いかけてきたり、いたるところに監視カメラが備え付けられていて、盗撮を恐れるダニーが次第に追い詰められて精神の均衡を崩していくところなど、社会・文化の違いがあるとはいえ、なんだか……コワい(⇐こればっか 笑)これを見る限り、香港と中国ってどこまで行っても平行線、水と油って感じがするよねぇ……。
※農民の扮装をしたアンディ・ラウ(左)と、監督役のニン・ハオ
昔ながらの農村の風景や、大スターのダニーが来るからといってアリンコみたいに群がる村人たちが映し出されるかと思えば、北京街中のタワービルの上では、煌びやかな夜景をバックにパリピたちがどんちゃん騒ぎ。お立ち台から札束バラまく成金社長って、今どきホントにいるのかいな(笑)古いタイプの「役者バカ」で、SNSも扱えず、コンプライアンスの知識も皆無、一生懸命になればなるほど空回りする大スターを、アンディ・ラウがノリノリで演じています。若い女性の脚本家には揚げ足とってネチネチ文句を言うクセに、スポンサーの都合でいとも簡単にセリフや設定を変えてしまう俗物監督役のニン・ハオ監督自身もイイ味出してます。この設定は、監督の、中国映画界への精一杯の皮肉かな❓
しっかし、観ているぶんにはめちゃくちゃ面白かったけど、こんな映画作っちゃってニン・ハオ監督大丈夫なんだろうか❓(^.^;
★今日の小ネタ〜ニン・ハオ監督とアンディ・ラウ
実はニン・ハオ監督の出世作は『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』ですが、これはアンディ・ラウが若手映画人育成のために立ち上げたプロジェクトの一環なんですね。肝っ玉の大きなアンディ兄貴がぽん、と自腹を切った制作費300万元(約5500万円)は、作品の大ヒットで興行収入2500万元(約4億6000万円)を記録、監督はアンディ兄貴の恩にじゅうぶん報いたわけです。17年前、アンディ兄貴はニン・ハオ監督に、「君が出世して名監督になって、僕が年を取ったら、君の映画に呼んでね」と頼んだそう。今では超売れっ子になったハオ監督、立派に約束を果たしたんですね。今回の作品、ラウの役柄は「落ち目の大スター」ですが、彼は落ち目どころか、未だに新作公開ラッシュの現役バリバリ。……まあ、実際に彼が「あの人は今」状態になってたら、シャレになんないよね(笑)役者としても、一人の人間としても懐の深いアンディ・ラウ、バンザイ❗