オタクの迷宮

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

映像化、見事なり❗~NHK BSプレミアム4K『雪国』

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NHKのBS4Kで川端康成原作のドラマ『雪国』観賞。原作はン十年前、大学生の時に読みました。まだ建て直す前の実家、応接間(昔の日本の家って、今みたいにリビングダイニングでワンルームって感じじゃなくて、居間と応接間、食堂‥‥と、別れている家が多かった)に大きな書棚があり、そこに父が揃えた日本文学全集や世界文学全集がズラリと並んでた。ヲタクは英文科だったけど、文学を志す以上は、日本文学を知らなくてどうする❗‥‥みたいな感じで、なんだか修行みたいに森鴎外やら夏目漱石やら川端康成やらの著名な作品を読み始めたのだった。『雪国』はそのうちの1つ。当時は『伊豆の踊り子』が好きで、ドキドキしながら帝大生と踊り子の淡い恋を読んだけど、正直言って『雪国』は(‥‥えっと、どこが面白いんだっけ❓)って感じだった。主人公の評論家・島村も、どっちつかずの自己チューなクズ男の印象しかなかったし😅

 

しかしどうでしょう、今回ドラマ見て、まんまとハマっちゃったわけよ(笑)

 

  それは、4Kの映し出す流麗な映像美と、蠱惑のクズ男・島村役の高橋一生はじめ、ヒロイン駒子の気性の激しさと底に秘めた哀しさを生き生きと演じた奈緒、純朴で薄幸な美女・葉子役の森田望智、清廉そのもの行男役の高良健吾‥‥魅力的な俳優さんたちの演技のアンサンブルに因るところが大きいでしょう。

 

  西洋舞踊の評論家・島村は、ふと立ち寄った雪国の温泉宿で、芸者駒子と関係を結び、彼女の、奔放に見えて貞淑、快活に見えて何とも言えぬ哀しさを秘めた魅力に引き込まれていきます。謎めいた彼女の言動、そして駒子の三味線の師匠(由紀さおり)の息子・行男(高良健吾)と駒子の間に潜む感情のもつれ‥‥等々がミステリー仕立てで語られていきます。そして、その謎の数々がラスト、駒子の日記によって明らかにされる時、私たちは驚きと共に、生きることのどうしようもない切なさに胸が締め付けられるしくみ。

 

  島村は言わば狂言回し的な役なのですが、「人生は全て徒労である」と断言する彼の徹底した虚無主義(ニヒリズム)を、高橋一生が心憎いばかりに適切に表現しています。彼は間違いなく、当代きっての優れた役者であることに間違いありません。一方、作者である川端康成は、日本人で初めてノーベル文学賞を受賞し、作家として頂点を極めながら、その四年後には謎の自死を遂げます。島村の姿に、その頃川端康成は自身の何を投影していたのでしょうか‥‥。

 

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

夜の底が白くなった。

 

  作品を読んだことがなくとも、この一節だけら耳にしたことがあるでしょう?‥‥と言うくらい有名すぎる冒頭の文章。ヲタクはずっと、機関車に揺られてトンネルを抜ける島村を想像していたのですが、ドラマでは彼は歩いてトンネルを抜けていましたね。そのゆっくりした足取りと共に、見ているこちら側としては、(トンネルの向こう、雪国には何が待ち受けているのか?)という期待感が徐々に高まっていく効果があり、映像ならではの素敵な演出だと感じました。

 

  昭和も遠くなりにけり。

 

次第に読者を失い、過去に埋もれつつある文豪たちの作品。

どうかこれからも、名作を掘り起こし、映像化して欲しいと、願ってやみません❗