1月で閉館を迎えるミニシアター「シネ・リーブル池袋」にて、NT Live(ナショナル・シアター・ライブ)『真面目が肝心』(オスカー・ワイルド)鑑賞。
★ざっくり、あらすじ
英国はヴィクトリア朝。住まいのある田舎では、真面目で厳正な後見人を務めているジャック(ヒュー・スキナー)。しかし彼には裏の顔が。ロンドンでは放蕩者の弟「アーネスト(真面目、真剣)」を名乗って、やりたい放題。しかし、ロンドンのワル仲間・アルジャーノン(チュティ・ガトゥ)の美人の従妹に恋して身を固めようと決意したジャックは、弟のアーネストを「死んだ」ことにして田舎へ戻り、「真面目な生活」を始めようとします。
ところがところが、アルジャーノンが「お前だけ身を固めるなんて許せない」とばかり、死んだはず❓️の「アーネスト」を名乗って田舎のジャックの元に現れたものだから、さあ大変。穏やかな田舎の村は上や下への大騒ぎに---------❗️

笑って観ていたはずの喜劇が、気づけば胸に苦さを残していた——そんな不思議な後味を残す一作。
★作品の軽妙洒脱さに潜むモノ
英国ヴィクトリア朝と言えば、質素堅実・厳格な倫理観で知られた時代。作者であるオスカー・ワイルド屈指の名作と言われる『真面目が肝心』は、そんな厳格なヴィクトリア朝に対する彼の強烈なアンチテーゼと言えるでしょう。
この劇の上演直前、オスカー・ワイルドは当時の愛人だったアルフレッド・ダグラスの父クィーンズベリー候爵から名誉を棄損されたとして候爵を告訴しますが、反対に同性愛者であることを理由に「重大猥褻罪」で有罪となり、2年間投獄されてしまいます。
結果、『真面目が肝心』は上演打ち切りの憂き目に合っています。この事件によって心身共にズタズタになったワイルドは、解放後間もなく急死。軽妙洒脱なこの作品、全編を通じて観客を大いに笑わせ、エンディングもこれ以上ないハッピーエンディング。それなのに、観終わった後、得も言われぬ「苦さ」を感じたのはヲタクだけでしょうか❓️
★クィア・コーディングで読み解く『真面目が肝心』

※偽名「アーネスト(マジメくん)」を使って自由を謳歌してきたジャック(ヒュー・スキナー…右)とアルジャーノン(チュティ・ガトゥ…左)ですが…。
……というわけで、作者オスカー・ワイルドの人物像や当時彼が置かれていた状況を鑑みれば、ヲタク的にはどうしても、『真面目が肝心』をクィア・コーディング(性的少数者であると明示的ではなくても、そのように解釈できるような様々なサブテキスト要素(コード)を埋め込むこと)作品と読み解く以外できなくなっちゃうんだよね(笑)
・そもそも原題が……。
邦題は『真面目が肝心』だけど、原題は『The Importance of Being Earnest(アーネストであることの重要性)』。アーネスト (Ernest) という名前は、表の意味は確かに「真面目、ひたむき」という意味ですが、ヴィクトリア朝時代のロンドンでは逆説的に、同性愛者を指す隠語として使用されることがあったそうです。まあ、ジャックもアルジャーノンも「マジメくん」という名前で好き放題やってきたわけだし(笑)この鋭い皮肉と風刺が、英国演劇の英国演劇たるゆえん。
当時の厳しい社会規範をかいくぐり、裏では自由な快楽を追求するジャックとアルジャーノンですが、それが突然うまく立ちいかなくなった2人のドタバタぶりに声を上げて笑いながらもふと、そんな彼らが醸し出す一抹の哀愁に、心がギュッとなったヲタクでした。

※ドラァグクィーンポーズのジャック😂
・あの小道具も…
ジャックが愛用しているシガレットケース。聞くところによれば、ゲイたちの間で求愛の小道具として使われることが多いらしいんですよね。プレゼントとして受け取ったらオッケーの合図…みたいな^^;(ミュージカル映画『キャバレー』(1972年アメリカ)の中でも、バイセクシュアルのブライアン(マイケル・ヨーク)が想い人のマックス(ヘルムート・グリーム)にシガレットケースを贈り、その後彼の想いに気づいたマックスがそれを受け取る場面が印象的)
・NT Liveのポスターも…
『真面目が肝心』のポスター、NT Liveにしては珍しく目の覚めるようなショッキングピンク😅--------そう、ピンク色のものを身につけて集まる「ピンクドット」イベントは周知の通り、性的マイノリティが生きやすい社会を求めるメッセージの1つですね。
(おまけにアルジャーノンがいつも履いている靴下もピンク、好きな花もピンクの薔薇 笑)
その他にも(劇中のバンベリー遊びとか)様々なクィアコーディングが登場しますが、長くなっちゃうので、また次の機会にね(笑)

※オープニング、ピンクのドレス❗️で歌い踊るアルジャーノン…もといアーネスト(笑)。彼本来の姿はこちら……というメタファー。
何しろ現代ではオスカー様、ゲイであるが故に投獄され、それが元で悲劇的な死…という激動の生涯から、LGBTQの方たちのヒーロー化しており、この『真面目が肝心』も、コーディング(匂わせ)ではなくて、明らかにクィアのマニフェストとして上演されるケースも多くなったよう。しかしヲタク的には、芸術とは、世阿弥様が仰る通り----------
秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず。
この分け目を知る事、肝要の花なり
肝心なところは隠れているからこそ色気がある…と思う。
その点NTLiveの『真面目が肝心』は、真面目で不真面目、明るくて暗く、上品で淫靡な「オスカー・ワイルドらしさ」が生かされた最高の舞台芸術です。
シネ・リーブル池袋での上映は、あと1月8日が最後となりますが、上映権が切れたわけではないようですので、また別の映画館で上映される機会はありそう。
その折はぜひ、笑いながら、そして少しだけ胸を痛めながら、オスカー・ワイルド最高の喜劇を体験してほしい。
★今日の小ネタ…最強のオタク女子セシリー

妄想の中で恋愛・婚約・婚約破棄まで済ませちゃう、
アルジャーノンの意中の人、セシリー(フィスン・デミレル)は私たちオタクの希望の星(笑)彼女が舞台に登場すると、パッと周囲が華やかに。ゲイだったオスカー・ワイルドだけど、女子の好みは---------実のところオタク❗️❓️😂