川崎駅から歩いて5分のシネコン「チネチッタ川崎」にて、アイルランド発のホラー『FRÉWAKA/フレワカ』鑑賞。米映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で、なんと批評家スコアが驚異の96%(2025年11月時点)を獲得した注目作です。

『FRÉWAKA/フレワカ』のタイトルは、ゲール語(アイルランド語)で、「根を張る」を意味する "fréamhacha"(フレーヴァハ)に由来します。単なる植物の根っこではなく、地中に複雑に絡み合い、容易に除去できない「土地に根付く過去のトラウマや呪い」を象徴していて、それはそのままこの作品のテーマともなっています。
★ざっくり、あらすじ
アイルランドの、人里離れた寒村。その村では、半世紀前のある夜、婚礼を前にして一人の花嫁が忽然と姿を消したという恐ろしい出来事が起きていた--------。
母親から虐待を受け続けた末に自死されてしまったトラウマから、いまだ立ち直れない看護師のシュー(クレア・モネリー)。彼女はその村に住む老女ペグ(ブリッド・ニー・ニーチテイン)の介護をするために村を訪れます。敏感なシューは、村に入った途端、何かただならぬ気配を感じます。それに呼応するかのように、妄想症を患っているというペグは「ヤツらに気をつけなさい。連れて行かれるから‼️」と叫び、家のどこからか謎の歌声や祈りの声が聞こえ始めます。
老女の言う「ヤツら」とは一体誰なのか?
半世紀前、花嫁はなぜ失踪したのか?
謎が謎を呼び、それが明らかにされた時、想像を絶する恐怖がシューを襲う-----‼️
★見どころ
その1 ケルト文化の色濃い土着ホラー
何と言ってもこの作品がアイルランド発のホラーであるということ。
闇の中に浮かび上がる禍々しい「妖精の木」、街を練り歩く、藁を被った異形の人々、一寸先も見えない濃い霧の中に蠢く「アイツら」の存在、まるで脳内をじわじわと侵食するかのような静かな恐怖---------。

アイルランドはご存知のように、アングロサクソンが攻め入る前の先住民族はケルト人で、ドルイド教を信奉していました。ドルイド教は樫の木、川、森、動物など、万物に亡くなった人の霊魂が宿ると信じる自然崇拝のアニミズム的な多神教で、寺院を持たず、森の奥深くなど自然の中で儀式を執り行ったと言われています。
『FRÉWAKA/フレワカ』に見られる、亡くなった人の想念が祟りを及ぼすというのもドルイド的な輪廻思想、霊魂不滅思想だし、ペグの家の近くで、まるで意思を持ったように蠢く「妖精の木」の存在もいかにもケルト的。
そういった意味ではこの作品、「神(善)と悪魔(絶対悪)の対立」という二元論的な考え方をテーマにした欧米のホラー映画とは全く違った趣がある、まるでその土地そのものが意思を持ち、人を支配していく土着ホラーである一方で、19世紀に起きたアイルランドのジャガイモ飢饉(英国政府がアイルランド農業に課した重税をきっかけとして起きた、人口の25%が死亡したと言われる大飢饉)や、独立運動の血塗られた歴史が語られるのも興味深いところです。監督の語りたかった真のテーマは、もしかして、長い間虐げられたアイルランドの「闇の歴史」だったのか------❗️❓️

その2 音楽的な言語…ゲール語
この映画は英語ではなく、ほぼ全編ゲール語(アイルランド古来の言語)で語られます。ゲール語はその表現豊かな抑揚や滑らかな発音から、しばしば「歌うような言語」と呼ばれています。それを堪能するためにも、ぜひ字幕版で鑑賞することをおススメします。
その3 ケルトロック爆・誕
半世紀前、忽然と姿を消した花嫁。その冒頭のシーンで鳴り響くは、70年代にヨーロッパの音楽シーンを席巻したホースリップス(アイルランドの民族音楽をミクスチャーしたプログレバンド)のケルトロック❗️
あらゆる場面に「きわめてケルト的なもの」が満ち満ちた『FRÉWAKA/フレワカ』なのでした。
★今日の小ネタ…我が愛しのアイルランド
ヲタクがアイルランドという国にハマったのは学生時代、もう半世紀近く前のこと。民族学者でもあったアイルランドの戯曲作家ジョン・ミリントン・シングの『Riders to the sea/海に騎り行く者たち』という、漁師の息子を荒海で喪った老女の、哀切極まりない悲劇、というか幻想劇。シングの、「自然には神に等しい強大な力が宿る。人間はその力の前には無に等しい」というテーマに強烈に惹かれたんですよね。大学の卒論にシングの戯曲を選んで、ゼミの教授に変人扱いされたよ(笑)
今思えば、あの頃からヲタク、「自然、あるいは見えざる強大な力に支配される人間」というテーマに惹かれていたのかもしれない。

※その奥には何が潜む…❗️❓️アイルランドの森
ヲタクはヨーロッパ赴任時代、大学時代からの憧れの国アイルランドを旅する機会に恵まれましたが、古代のお城の廃墟なんてそこここにフツーにあって(笑)たとえばダブリンにある聖ミッチャン教会の地下納骨堂には、当時の有力者の棺が多数納められていますが、破損した棺からはミイラ化した腕や足が飛び出ていて、その様子を『吸血鬼ドラキュラ』の作者ブラム・ストーカーは執筆時の参考にした……って言われてるくらい😅
ヲタクがアイルランドを訪れた30年前は、アイルランド人はいまだに妖精の存在を信じてる…なんて言われていて。宿泊したB&Bの女主人も「裏に妖精の住処がある」なんて言ってたし…。
そんなことを考えると、あながち『FRÉWAKA/フレワカ』も荒唐無稽な作品とも思えなくなってくる…。
もしかしてヲタクも、シューと同様、「アイツら」に意識を乗っ取られてしまったのかもしれない(笑)

※入場時には、素敵なポストカードが配られます。
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