オタクの迷宮

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名優ジェラール・ドパルデュー~『メグレと若い女の死』フランス国際映画祭

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『フランス国際映画祭 2022』の一環として、イオンシネマにて『メグレと若い女の死』(パトリス・ルコント監督)鑑賞。

 

監督は今回来日出来なかったとのことで、エルストナー・ユニフランス代表より、監督のメッセージの代読がありました。本作品を製作するに至った動機について。ジョルジュ・シムノン原作のメグレ警視シリーズのファンであることはもちろんのこと。警視の寡黙でありながらも人間に対する深い洞察力を持ち、しかも人間味のあるところが好き。……でも何よりも、ジェラール・ドパルデューという俳優の演技を映像として残したかったそうです。巨匠ルコント監督にここまで言わせるって、ドパルデューってどんだけ凄いんだ……笑

 

  もはや、ルコント監督のメッセージが、この映画の全てを語っていると言っても過言ではありますまい。フランスの誇る名優ジェラール・ドパルデュー。ヲタクが彼の映画を盛んに見ていたのは、『グリーンカード』や『シラノ・ド・ベルジュラック』、『岩窟王』、『ダントン』等々、ドパルデューがエネルギッシュな壮年の魅力に溢れていた頃。しばらく彼の作品見ていなかったから、恬淡とした……というか、枯れた、内面からそれまでの人生の軌跡がうかがえるような味わい深い演技がある意味衝撃でした。考えたらもう73才なんだものねぇ……。

 

 さて今回の『メグレと若い女の死』。年代はおそらく1950年代のパリでしょう。第二次世界大戦の痛手からまだまだ立ち直っておらず、労働者たちは貧困に喘ぎ、労働条件の改善を求めてストライキを繰り返し、美しい筈のパリの街もゴミだらけ……だった頃。そんなパリの街で発見された、20才そこそこの若い女性の刺殺体。ゴージャスなドレスを纏っているにもかかわらず、アクセサリーや靴、バッグは安物で、胃の中は空っぽ。身元がわかるものは何一つ身につけていませんでした。メグレが地道な捜査を続けるうち、彼女は、文化・芸術の中心地であるパリに憧れて出てきたものの、生活の術が見つからずにいつのまにか闇の世界に堕ちていく少女の一人だとわかってきますが……。

 

  容疑者を尋問するのに、口を軽くする為にサンドイッチとビールを出してやるとか、ご遺体を見るとすぐに「目を閉じてやれ」と部下に言う優しさだとか、さりげないセリフの応酬の中に、メグレの人柄が垣間見れる展開がイイです😊また、「被疑者の自白を引き出すコツはひたすら相手の話を聞くこと」や、「殺人者は自分が殺人する意識は持たない。自分が「生きる」為に、他者の人生を終わらせると考える」等々、メグレ独自の哲学が、ドパルデューの自然体で慈味溢れる演技によって嫌味なく語られます。

 

 メグレの人物像と合わせて、 殺人事件を捜査するうちに知り合った、娘ほど年の違う若い女性とメグレの心の交流も、殺伐として陰鬱なストーリー展開に、どこか温かい雰囲気を添えています。

 

まだ日本での公開日は決まっていないのかな?公開されたら、一人でも多くの人に見て頂きたい良作です😊