オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

新たなるスタア誕生!~映画『幻滅』のバンジャマン・ヴォワザン

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  フランスの文豪オノレ・ド・ヴァルザック原作の『幻滅』を堂々映画化、2時間半に及ぶ大作ですが、全く長さを感じさせない、さすがセザール賞7冠!ヲタク的にはフランス映画というと、人生の断片を独自の視点で切り取った、ミニシアター向けの小品が基本的には好きなんだけど、昨日の『エッフェル』といい今日の『幻滅』といい、商業的大作もやっぱり凄い!(主役のバンジャマンもインタビューで語っていたけど)さすがモリエールラシーヌを生んだ国、舞台演劇の屋台骨、ハンパない。

 

  19世紀前半のフランス。王政復古後、貴族と反体制派の対立は益々激化、ちょうどその頃印刷術の進化で新聞の発行部数が急激に増え、いわゆるジャーナリズムが世論を牛耳るようになっていました。驚くべきは、新聞記者たちは1つの事柄について賛辞と酷評を使い分け、料金を釣り上げる手法をとっていたこと。世論を分断して論争を巻き起こし、さらに部数をアップさせる。袖の下如何で記事内容をころころ変えるなんてお手のもの、特に演劇評に至っては、大勢のサクラを雇って、金額の大小でスタンディングオーベーションにもブーイングにも転ぶ業者がいる始末。……え?これって今ツイッターやヤフコメで問題になってることと同じじゃない?もしかして。ジャーナリストって、公正な立場で真実を伝える人じゃなかったのかよー!


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※今夜の会場は萬國橋のたもとにあるイオンシネマみなとみらい。橋の上から眺める夜景。

 

  ……そんな激動と混沌の時代、フランスの田舎町で印刷工として働きながら詩人になることを夢見る純朴な青年リュシアン(バンジャマン・ヴォワザン)が、地主である侯爵夫人(セシル・ドゥ・フランス)と禁断の恋に落ち、駆け落ち同然でパリに出奔、パリという野望と策略と欲望に満ちた魔都に幻惑され、翻弄され、飲み込まれていく様を、時にはユーモラスな皮肉を込めて、時には冷徹に、そして時には哀切に描いています。

 

 うたかたの成功に有頂天になって次第に暴走し、欲望にまみれながらも、どこかピュアさを失わない主人公に、バンジャマンはこれ以上の適役はないくらいピッタリで、『Summer of 85』の時と比べると格段に演技の深みと豊かさが増し、まさに「新たなるスタァ誕生」の瞬間を、※ひと足早くこの眼にした嬉しさでいっぱい!

※日本公開は来年2023年の予定だそう。


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  映画上映後、バンジャマン・ヴォワザンが登壇、客席から多くの質問が殺到しましたが、一つ一つに耳を傾け、真摯に答えてくれた彼。昨夜のオープニングセレモニーの時のヤンチャ坊やの面影は影を潜め、俳優という職業に真剣勝負を挑む、一人の生真面目な青年の姿がそこには在りました。

 

  若き詩人を演じるに当たり、彼の内面を個人的に深掘りするよりもむしろ(その作業は監督や脚本家がしっかり土台を作ってくれているから、素直にその指示に従っていればいい……というのが彼のスタンスみたい)、19世紀ロマン派の文学や音楽に親しみ、その時代背景そのものを理解しようと務めたそう。このバルザックの小説は彼のおじいちゃんの一番の愛読書だそうで、孫として誇らしいと語るバンジャマンはやっぱり可愛ええ……(結局そこ  笑)

 

  この作品の演技で、見事セザール賞新人賞を受賞した彼。その時の感想を求められて「これ、本物の金かな?幾らくらいするのかなって不純なこと考えちゃった」とジョークを飛ばしつつ、「受賞をきっかけに、優れた監督たちが僕を次の作品で使いたい……って思ってくれたら嬉しいな」と語るバンジャマン。

 

大丈夫!フランソワ・オゾンやグザヴィエ・ジャノリに認められた貴方のこと、これからきっと、大勢の監督たちが貴方に創作意欲をかきたてられるはず(断言)

 

次回の作品で、彼の更なる成長と進化を目撃することを楽しみにしていましょう😊

 

★おまけ

『エレファント・ソング』等、俳優としてはエッジーで屈折した役が多い印象のグザヴィエ・ドランが、今回は文学者の良心を代表するような端正な人物像を演じていて新鮮でした。また、名優ジェラール・ドパルデューが金の亡者みたいなモンスタラスな役。『幻滅』の直前に、メグレ警視を演じる彼の恬淡とした枯れた演技を見たばかりだったから、これまた新鮮。ヲタク的には、バンジャマン・ヴォワザンが語ってくれたドパルデューのエピソード(ワインと肉を撮影現場に大量に持ってきてみんなに振る舞うらしい。そのワインがまたあんまり美味しくない……というバンジャマンの感想のオマケ付き  笑)が「らしくて」好き♥️

 

あっそれから、セザール賞助演男優賞受賞のヴァンサン・ラコストも忘れちゃいけない!パリという魔界にリュシアンを引きずり込む、ある意味メフィストフェレス的な役割を担う新聞の編集長。従来なら、グザヴィエ・ドランの役なんでしょうけどね😅阿片を吸いながらリュシアンを悪徳へ誘うラコストの魅力には抗えない……っていう、ある意味オム・ファタール的な😍ヲタク的には、『ヒポクラテス』の、若くて青い、悩み多き青年医師以来だから、こっちも新鮮(笑)

 

それにしてもバンジャマン(Benjamin)、英語読みだとベンジャミン、ドイツ語だとベンヤミン。……やっぱりフランス語って色っぽい言葉だなぁ。ね?バンジャマン😍