オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

少女は永遠の謎~『Dear Moon』(今関あきよし監督)

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(From Pixabay)

  下北沢トリウッドで今関あきよし監督の最新作『Dear Moon』鑑賞。

 

  ツイッターで相互フォローさせて頂いている俳優の久保宏貴さんから情報を頂いて行って参りました、約30年ぶりくらいの下北沢❗南口商店街を抜けてちょっと寂しくなった角のビルの2階。隣がバー(…だったかな❓😅)で、「えっ❓こんなとこに映画館があるの❓」ってカンジはシモキタならではですね。ほら、よくディストピア映画であるじゃないですか、音楽も映画も演劇も禁じられた絶望的な世界。そんな世界で、映画愛好家たちが秘密裏に上映してる映画…みたいな。そんな隠れ家みたいな映画館で、今関監督の、「少女幻想」とも言うべきファンタジックな世界に一時身を任せる。なんとも贅沢な時間。小さな映画館なのに、しっかりひとつ置きに座席は空いてるし、上映後の舞台挨拶も、撮影タイム以外は、今関監督や原田親さん久保宏貴さん共にマスク姿。このコロナ禍で、日本映画人の心意気を見る思い。下北沢トリウッド、ばんざい❗🙌

 

  …さて、『Dear Moon』は、煌びやかな江の島の夜景から幕を開ける、現代の竹取物語の如き幻想譚。月夜に江の島の浜辺で延々と砂に埋まった硝子のカケラを拾い続ける男(原田親…その理由に胸が痛む😢)。男は、浜辺で倒れている(…というか、自ら寝ている?😅)少女(石井そら)を保護して警察に送り届けます。一方、偶然カフェで出逢った女子高生との再会を夢見て、夜の都会を彷徨い歩く女。行方不明になった恋人の少女を探して、なぜかウサギのキグルミを着て尋ね人のビラを配る青年(久保宏貴)。それぞれに孤独と人生の痛みを抱える彼らにとって、少女はいったい何者だったのか?

 

  見ているうちに、ヲタクのアタマの中には、予定調和な大団円が出来上がっていったのですが、少々苦いラストで、今関監督に見事に裏切られます。(あっ、心地よい裏切られ方ですよ。ヤられたな…っていう。念のため 笑)そして、あの鎌倉の海を背にした朝の光景は一体何だったのだろう…ヲタクの中で謎は深まるばかり。

 

  少女には名前がありません。監督にとって少女は固有名詞ではないんですね、きっと。少女…という概念そのものが謎であり、あくなき探求心をかきたてる存在なんでしょう。見る側からするとさまざまにその貌が違い、日毎に変化する月のように。それにしても、カメラに捉えられた月の、なんと美しいこと❗

 

  この映画を見て、ヲタク大好きなビー・ガン監督(『凱里ブルース』『ロングデイズジャーニー~この夜の涯へ』)の言葉~「自分の映画は夢と記憶と時間についてのみ描いている」を思い出しました。ビー・ガン監督は、伝えたいメッセージなど何もないと言い切ってますよね。謎解きは必要ないと。

 

  『Dear Moon』も、然り。

美しい月や、夜の江の島の磯の匂いや波の音に心地よく身を任せて、私たち観客もまた、少女の謎を心の中で反芻すればいい。

謎は謎のまま、白日の下に無理やりさらけ出さなくていい。

 

  『Memories』(2019年   主演・モトーラ世理奈)との二本立て。『Dear Moon』は、ロサンゼルス映画祭(JFFLA)と、国内の『JAPAN WORLD FILM FESTIVAL 2021』での上映が決まったそうで、ますますこのさざ波が広がっていけばいいな…と思った満月の宵。

 

  

 

  

 

  

あのイーロン・マスクが住んでるというウワサのタイニーハウス🏠

 個性的な物件を次々と紹介してくれて、そのユーモア溢れる語り口に癒され、思わず「ムフフ」と笑ってしまう『ゆっくり不動産』さん🎵(いつも見とるとよ  笑)

 

 さすが先鋭的かつ個性的なYouTuber『ゆっくり不動産』さん。時の人イーロン・マスク(宇宙開発企業スペースXの創設者およびCEO、電気自動車企業テスラの共同創設者)が住んでるというウワサの折り畳み式住宅『Boxable』のカッシーナをいちはやく動画にアップして下さいました❗折しもスペースX(SpaceX)による民間で初めての有人ロケットが宇宙ステーションから無事帰還、それに合わせて動画をアップ❔するなんて、ニクイ、ニクイ(笑)

 

  何しろヲタクは「 マイカー & マイホーム」をはじめとして、より高価なモノをより多く持っていることが幸せの象徴だと刷り込まれてきた世代。夫と共に巨額の住宅ローンを25年もの長い間払い続け、ほんの数年前にやっと繰り上げ返済した次第。法務局に抵当権の解除手続を申請した時には、何とも言えない安心感というか、脱力感に襲われたっけ😅

 

  この動画を見ると、もはや、さまざまな価値観が急速に変化しているのがよくわかります。「モノ」に執着して、それを誇示する時代は終わりを告げようとしているのかもしれません。自分自身を縛る不動産や巨額のローンは選択せず、自由なライフスタイルを志向する「風のような時代」が来ているのかも。

 

『ゆっくり不動産』さんが仰るように、好きな時に、好きな家を、好きな土地に持っていく……「不動産より可動産」の時代が。(……まるで『ノマドランド』ぢゃん❗笑)

 

  


【驚愕の狭小住宅】箱を開けるとすぐに住める戸建住宅を内見! - YouTube

ジャック・ロウデン、ゲイリー・オールドマンとサッカー場で2ショット❗

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(From Pixabay)

ゲイリー・オールドマンと2ショット❗

(ジャクロくんの公式インスタグラムより)

ああ、こんな日が来るなんて…(号泣)

推しと推しがプライベートで2ショット❗しかもマンチェスターユナイテッドにユニフォーム作ってもらって、二人でMAX笑顔😊(近くにいるお嬢さんたちが「あらっ、あれジャック・ロウデンじゃないっ❗?」っていう目でガン見してるのが微笑ましい😊)

 

 

  なにせヲタク、初めてじぶんの携帯持った時(もちろんガラケー)、メアドがgary_oだったんだもん😅ヲタクにとって、推し活の元祖はゲイリー・オールドマン🎵ヲタクの場合、よっぽどのことがない限り個人に対する推し活をぱったり止めちゃうことはないので、長い人生、推しは増えていくばかり(笑)…もっとも熱量はその時々で上下しますけれども😅そんな元祖推しのゲイリーが、ただいまヲタクの中で熱量1、2を争うジャクロくんとプライベートでサッカー観戦なんて、天にも昇る心地とはこのことだワ😍

 

この二人、英国保安部MI5を舞台にしたTVドラマ"Slow Horses(鈍足の馬たち)"でめでたく初共演を果たしましたぁぁぁ~~🎉✨😆✨🎊

 

試合を見に行ったのは撮影の合間かな、もう撮了したのかな❔

 

 

  原作は Mick Herronの スパイ小説"Slough House" 。日本で翻訳されている今作の邦題は「窓際のスパイ」ですが、直訳すると「泥沼の家」。米ソ冷戦時代、英国のスパイ活動の拠点といえば、国際的なスパイ活動を行っていたMI6(英国秘密情報部…あの007ジェームズ・ボンドはここの所属)と、国内問題を扱うMI5(英国保安部)。ドラマの舞台となるのは、MI5の中でも通称「Slough House(泥沼の家)」と陰口を叩かれる窓際部署。ドラマの題名「Slow Horses(鈍足の馬)」は、原作と韻を踏んでるんですね。

 

  あの名作『裏切りのサーカス』ではMI6の初老のスパイ、ジョージ・スマイリーを演じたゲイリー・オールドマン、今回はMI5の「鈍足の馬たち」、ワケありのハグレ者どもを束ねるリーダーのジャクソン・ラム役。そしてジャクロくんは、007に憧れ、伝説のスパイを祖父に持ちながら昇進試験で大失敗をヤらかし😅泥沼部署に左遷されてしまったリバー・カートライト役😍『裏切りのサーカス』で言えば、ベネさま演じたピーター・ギラムの立ち位置かな~~🎵まるで父親のように温かく後進の俳優たちに接するため、ブラピやクリスチャン・ベール等そうそうたる俳優たちから「神」と讃えられるゲイリー。

 

  ジャクロくんもいよいよ「ゲイリーの息子たち」の仲間入り❗❔

 

(ジャクロくんの公式インスタグラムjack.lowdenはこちらから⬇️)

https://instagram.com/jack.lowden?utm_medium=copy_link


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ダグラス・スミスの尊みがスゴイ♥️~『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン2

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(『ビッグ・リトル・ライズ』の舞台になったカリフォルニア州モントレーの海岸…Pixabay)


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  シーズン1で、があんまりモヤモヤドロドロしていたものだから(ラストの衝撃はスゴくて度肝を抜かれたが😅)、なかなかシーズン2に手をつけられなかったHBOのドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』。シーズン1を見終わって2年くらい経ったつい先日、シーズン2をやっと見終わったんだけど、ドラマの細部や人間関係をすっかり忘れていて、最初はかなり困りました😅…なので、まだシーズン1を見ていない人は、ドロドロドラマに心が折れても、間髪入れずシーズン2を見ましょう🎵

 

ここからはシーズン1のネタバレを含みますので、まだ見ていない方はすみやかにご退出下さい(笑)


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 ヒロインのセレステ(ニコール・キッドマン)の夫ペリー(アレクサンダー・スカルスガルド)が、子供が通う小学校のイベントの夜、階段から突き落とされて死亡する…という衝撃のラストで幕を閉じたシーズン2。セレステのママ友の1人が犯人だったわけですが、それも、階段の上でDV夫に暴力を振るわれ、命の危険に晒されていた彼女を救おうとして…の衝撃的な犯行。やむなくその場に居合わせたママ友5人が結束して、「事故だった。彼は誤って足を踏み外した」と証言し、犯人を庇い、事故死として処理される…というラストでした。

 

  シーズン2では、当の犯人は当然のことながら罪の意識に苛まれ、彼女を庇うために嘘をついたママ友たちの心にも、その秘密は当然大きな影を落としていきます。そして少しずつ、彼女たちの生活も綻びが出始め、人生の歯車が思わぬ方向に廻り始めるのです…。

 

  シーズン1と同様、彼女たちの心の中や人間関係(親子、夫婦、友人同士)の描写には、見ている私たち視聴者を欺き、ミスリードするさまざまな伏線が張り巡らされ、ひじょうにトリッキーな展開。関係者の中でもいちばんのウソつきは、脚本のデヴィッド E. ケリー(『ボストン・リーガル』ほか。最新作は、キッドマンと再びタッグを組んだ『フレイザー家の秘密』)じゃないの?って思っちゃうくらい😅

 

  しかしヲタクが1番印象深かったのは、「ウソ」に対する日米の感覚の違いでしょうか。日本ですと、「ウソも方便」という諺もあるくらい、その裏に相手に対する思い遣りがあれば、多少は許される…という暗黙の了解があるような気がします。しかし、アメリカ人の場合、理由はどうあれ、「ウソ」は許されないという強烈な概念が垣間見れます。言葉は神との契約であり、虚偽の言葉を吐くことは大いなる罪なのでしょう。このドラマの中でも、ある登場人物が、ある出来事で夫にさんざん助けられ、支えてもらった後に、夫に向かって「ごめんなさい。私、ずっとウソをついてたの。私、あなたを愛してない。結婚してからずっと愛してなかった」って言った時には思わずのけ反りました😅謝るの、ソコなんか~~いっ❗って(笑)

 

  まっ、そんなこんなでシーズン1に引き続きシーズン2もモヤモヤドロドロ、ときどきビックリ😮の展開でしたが、1番の収穫は、最近ヲタクが注目しているカナダ人俳優、ダグラス・スミスくんが出ていたことかしらん♥️レイプの被害者で、その結果生まれた息子を必死で育てるシングルマザーのジェーン(シャイリーン・ウッドリー)の同僚で、次第に彼女に惹かれていく青年の役。聖母マリアみたいなジェーンともども、まるで、ドロドロな沼の中に咲く一輪の蓮の花😍

Netflixのドラマ『エイリアニスト』でも、正義感の強い警官の役を好演していた彼。次回作は、フローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、ジェンマ・チェンなどオールスターキャストのサイコホラー『Don't worry darling』。めちゃくちゃ楽しみ❗


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(『エイリアニスト』のマーカス・アイザックソン役。これで36才❗この年にしてこのエンジェルみ😮)

 

 

 

 

  

 

  

『精油とわたし』顔マッサージと『行ってはいけない危険な国』の思い出


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 何がなんだかわからない題名で恐縮です(汗)キーワードは、小林邦弘さん。……えっ?ますますわからなくなった?すいません、ちょっとガマンして読み進めて下さい😅

 

 You Tube最近のお気に入りは、「旅するビジネスマンチャンネル」小林邦弘さんの動画。東大を卒業して大手商社に勤めながら、数年後には起業し、年間100か国以上を旅してきたというユニークな経歴の持ち主。さまざまな国の情報を「良し悪しではなく、日本との違いを認識する」という冷静且つフラットな視点から発信する彼の旅動画や世界のニュースは、頷ける点が沢山あります😊

 

  そんな小林さんがチーフバイヤーを務める美容オイル『精油とわたし』。アフリカ支援の一環にもなる…とのことで早速購入してみました😊3種類のナチュラルオイルが販売されていますが、今回ヲタクが選んだのは、モロッコ原産アルガンオイルを主体にして、レモンとゼラニウムオイルを加えた『Survive』。休日に行う顔トレ➡️クールダウンの顔マッサージに、これまではローズオイルを使っていたのですが、新しいオイルを試してみたいな…と思っていたところに小林さんの動画で『精油とわたし』の存在を知った…というわけです。伸びもよく、レモンとゼラニウムが仄かに香り、癒し効果もばつぐん🎵ヲタクの休日の朝は、YouTube 『Katarzina Pelikaのおうちズンバ』➡️U-NEXTヨガ➡️YouTube美容整体アピアランスTV』の顔トレ➡️『精油とわたし』の顔マッサージがフルコース(笑)

 

…さて話は変わりますが、ここで少々小林さんの動画紹介を😊

 

小林さんの動画のキモは、漂流旅人というよりも、旅したその先で「仕事をする」人の視点だということ。観光なら避けて通ればいい国でも、ビジネスだとどうしても行かなくてはいけない場合もある。その時どうしたらいいか?という視点なんですね😊

 

  小林さんの動画の中で1番のヒット『行ってはいけない危険な国』。キャッチーな題名がついているんですが実はよく見てみると、危険を避けるためのさまざまなヒントが提示されていて、正しくは、「通常は行ってはいけないと言われている国でも、突破口はある。その時どう行動すべきかその注意点」というユニークな内容になっています。(反対に別の動画で小林さんは、通常治安が良いと言われている国でも、「やってはいけないこと」「行ってはいけない場所」は確実にあると仰有っています)ようは、どれだけ正しい情報を収集できるか、そしてどれだけ自分自身で判断し危機管理ができるか、ということで、それは旅だけでなく、生活全般にも言えること。そういう観点で小林さんの動画を見てみると、なかなか深いな~、仕事、いや人生のアドバイスにもなってるな~って、いつも思うんです。

 

  ヲタクもじつは、堂々第3位のフィリピンには10~15年前位に仕事で3回ほど行っているんですね😅しかも小林さんが注意を促している郊外に(笑)ある団体の随行員として行ったのですが、フィリピン人と結婚して30年という女性がコーディネーターで付いてくれて、最新式の大型バスで真っ昼間に移動しました。今思えば小林さんのアドバイス通りの行動だったわけです。当時ヲタクは、「郊外で犬に噛まれたらアブナイ」と言われて狂犬病の予防接種を受けたり、イスラム系のテロの心配ばかりで、フィリピンマフィアのことはすっかり頭から抜けてました。「知らぬが仏」とはまさにこのこと、今思えばいろいろ冷や汗モノです(-o-;)余談ですが、テロに関しては、マニラの主要なホテルには武装警察官が詰めていたり、ボディチェックがやたら厳しかったりで(まさにボディチェックだった…😅)国を挙げて対策している印象、それほど心配はないかな…といった感じでした。

 

  夫はヨーロッパ赴任中に第5位のルーマニアに出張に行ったそうですが、「小林さんの動画見てから行きたかった」と申しております(笑)

 

  コロナ禍は、ビジネスマンにとっても旅人にとっても言わば「雌伏」のとき。再び海外に雄飛する、その時のために小林さんの動画でさまざまなことを学ばれたらいかがでしょうか?😊


【旅行は危険】行ってはイケない!?危険な国ランキング【仕事も危険】 - YouTube

歴史上のイケメン列伝③~英国スパイの祖・ウォルシンガム卿


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(即位前にはロンドン塔で幽閉されていたエリザベス1世……Pixabay)

久しぶりの「歴史上のイケメン列伝」です。チェーザレ・ボルジア、トマス・エドワード・ロレンス(アラビアのロレンス)ときて、エリザベス1世の下でスパイ・マスターとして暗躍したフランシス・ウォルシンガム卿がイケメンの部類…って、つくづく目的遂行の為には手段を選ばない冷酷非道なヤツが好きらしい、じぶん。

 

  コロナ禍で海外旅行ができない昨今、YouTubeで旅動画を見ることが多いヲタクですが、中でもお気に入りのひとつが『英国ぶら歩き』。英国の歴史をひもときながら、ゆかりの地を巡ってくれるという、知識欲と観光が楽しめるという「ひと粒で2度オイシイ」グリコみたいな動画なんですよね。最近『バビントン陰謀事件』を特集していて、またぞろウォルシンガム熱が…(⬅️単純すぎ😅)

ドラマ『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ』で、推しのトム・ヒューズが、ウォルシンガム卿の下でスパイ活動をしたと言われている作家クリストファー・マーロウを演じているのもその一因ではあるんですが。

 

  さて、父王ヘンリー8世がカトリック教皇から破門され英国国教会を設立した為、当然エリザベス1世も即位と同時に英国国教会の首長となったわけですね。しかしその為に歴代教皇から憎まれ、スペイン等カトリックの大国を敵に回し、エリザベス女王は生涯に渡って20回以上の暗殺計画に晒されたと言われています。彼女がその全てを乗り越え、天寿を全うすることができたのも、ウォルシンガム卿がヨーロッパ中にスパイを放ち、大陸を全て網羅する巨大な諜報網を張り巡らしたからこそ。

 

  ケンブリッジ大学やスイスのバーゼル大学で学んだ秀才で、エリザベスの腹心秘書官長ウィリアム・セシル(映画『ふたりの女王~メアリーとエリザベス』では、ガイ・ピアーズがイケおじオーラむんむんで演じてました)に見込まれ、当初はフランス大使に着任、政治の世界を目指したエリートでしたが、エリザベス暗殺未遂が頻発するにつれ、陰の大立者として強大な秘密警察を組織し、いわゆる英国政府の「汚れ仕事」に手を染め、血と謀略の世界に身を投じるのです。

 

  エリザベス暗殺計画の中でも最も大規模なものが、アンソニー・バビントンという青年貴族がリーダーとなり、当時イングランドのチャートリー城に幽閉されていたスコットランド女王メアリー・スチュワートの奪還を計画し、彼女を擁立して最終的にはエリザベスを亡きものにしようという『バビントン陰謀事件 Babinton Plot』です。バビントンとメアリー女王は、城に定期的に運び込まれるビールの樽の中にお互い暗号を使った手紙を忍ばせて、通信手段としていました。しかし、プロ中のプロ、ウォルシンガム卿にかかればそんな方法など赤子の手をひねるより簡単に見破られてしまいます。暗号は瞬く間に解読され、メアリー女王側(すなわちカトリック側)の情報は全てウォルシンガムに筒抜けに…。普通ならバビントン一人が捕らえられて幕引き…となるところですが、ウォルシンガムはそうはしなかった。ここが彼の非常に恐ろしいところです。

 

  彼は、メアリーのふりをしてバビントンから「メアリー奪還計画」の仲間たちの名前を全て聞き出します。バビントンに扮したウォルシンガムの巧妙な誘導により、ついにメアリーは致命的な一言をしたためてしまうのです。

 

さあ、大いなる陰謀を実行に移しましょう。

 

これこそ、ウォルシンガムが待っていた一言でした。計画に加担した者14名は全て捕らえられ、四つ裂きの刑に処せられましたが、現場の様子は凄惨を極めたようです。メアリーもまた、致命的な一文が陰謀罪の証拠となり、ついに刑場の露と消えます。

 

  エリザベス女王は、親戚筋に当たるメアリー、同じ女性として国を統治する者同士として苦労の絶えないメアリーに、一種親愛の念を抱いていました。(このへんの経緯は、先に話題にしました映画『ふたりの女王~メアリーとエリザベス』に詳しく描かれています。メアリー役のシアーシャ・ローナン、エリザベス役のマーゴット・ロビーの役作りが素晴らしかった)女王は、メアリーを幽閉こそすれ、命までは奪いたくなかったのでしょう。また、メアリーを処刑すればそれは、スペインに宣戦布告することに他なりません。女王はそこにも躊躇があったわけですね。

 

  案の定メアリーの死によってスペインとの仲は決裂、あの有名なスペイン無敵艦隊と英国海軍の一騎討ち、アルマダの大戦に雪崩れ込むわけです。

 

  それまで小さなヨーロッパの島国でしかなかった英国が大国スペインの無敵艦隊を打ち破り、後々の大英帝国の礎が築かれるわけですが、これこそが、ウォルシンガムの狙い通りだったのでは…と思います。

 

  スペインに大勝利した後もエリザベス女王はウォルシンガムを決して許さず、生涯を通じて冷遇したと言われています。

 

  ウォルシンガムがそれを気に病んだか?……ですって?

ヲタクはそうは思いません。

顔浅黒く、常に黒づくめの衣装に身を固め、まるでメフィストフェレスのようだと陰口を叩かれたというウォルシンガム卿、きっと、自らの陰謀が全て思い通りに運んだことに、冷たい笑みを浮かべていたに違いないのです。

 

メフィストフェレスの魅力は永遠である。

                                          塩野七生

 


処刑されたスコットランド女王メアリー・ステュアート エリザベス1世暗殺計画 「バビントン陰謀事件」の全容【英国ぶら歩き】(読む動画 ノーナレーション) - YouTube

ジャック・ロウデン、ケイト・フィリップスとチャールストンを踊る👠

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(From Pixabay…サスーンは後年、『デイリー・ヘラルド』紙の編集に携わった)

 

ジャクロくんの新作『BENEDICTION~祝祷』(巨匠テレンス・デイビス監督。サンセバスチャン映画祭、トロント映画祭にエントリー予定)の予告編第1弾が、イギリスで公開されました~❗


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  映画『BENEDICTION』について、ヲタクはこれまで何度か当ブログで記事にしていますので、日本で数少ないであろう😅ジャクロくんのファンの方、その他この映画に興味のある方は、題名の下にあるカテゴリー「ジャック・ロウデン」より、過去記事をお読みになって下さい😊

 

  さて予告編の中で、実在した反戦詩人ジークフリード・サスーンを演じるジャクロくんが、とあるパーティーでケイト・フィリップス(どうも人妻らしい😅役柄の詳細は不明)とチャールストンを踊るシーンが出てきます😊インスタでジャクロくん、「チャールストン、もっと練習しろよ、じぶん」なんていつものようにおちゃらけてますが、予告編では軽々と、いかにも楽しそうに踊ってます😊 ケイト・フィリップスも大好きな女優さんだからジャクロくんとのカラミがあって嬉しい~❗

 

  ケイト・フィリップス、BBCのドラマ『戦争と平和』主役の一人アンドレイの妻リーザ(ちなみにジャクロくんも青年貴族ニコライ役でご出演)、『ピーキー・ブラインダーズ』アーサーの妻役、『ザ・クラウン』のチャーチル首相の秘書役…と、地味だけど安定感のある女優さんだなぁ…と思って見ていたら、ドラマ『探偵ミス・スカーレット』では、自立した女性のパワフルかつ華やかな魅力で新しい一面を見せてくれました。今回も楽しみです😊

 

  さて、最近売り出し中の英国イケメン、ジェレミー・アーヴァイン(『戦火の馬』)❗上の写真、ジャクロくんとのツーショットなんてもう、眼福そのものですが😍、彼の演じる役柄については、以前の記事で書いたヲタクの予想は見事にハズレました😅(過去の記事参照)英国のネット記事を調べた結果、アイヴァー・ノヴェロ(Ivor Novello)という、1930年代にめちゃくちゃ人気のあった英国の歌手・作曲家・俳優を演じるもよう。このアイヴァーさん、写真見たけど、ご本人も超イケメンだった…😍彼は同性愛者で、ジークフリード・サスーンとも関係があったことは有名らしいです😅

 

  考えてみればジャクロくん、同性愛者の役多いよね。シアーシャ・ローナンという魅力的な彼女がいながら…って、シアーシャも映画『アンモナイト』でケイト・ウィンスレットとラブシーンを演じたばかり…俳優さんは大変だ(なんのこっちゃ=笑)

 

  はー、早く見たい❗

(ジャクロくんの場合、日本じゃあんまりメジャーぢゃないから、入って来ない作品もたくさんあって、公開されるかされないか、ヲタクはいつも気が気ぢゃないというわけです😅)

 

 

 

 

 

ケイト・ウィンスレットの最高傑作❗❓~『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』

主演のケイト・ウィンスレット をはじめとして、本年度エミー賞で16部門ノミネート、辛口批評サイト「ロッテン・トマト」では満足度94%の高評価を獲得、アメリカの「HBO Max」では、最終話が配信されると歴代最高視聴率を記録したという超話題のサスペンスドラマ、『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』ついに日本初上陸❗

 

  ケイト・ウィンスレット史上最高の演技」(TOISTO)と絶賛された本作ですが、噂に違わないサスペンスの傑作でした。

(ヲタク、太鼓判=笑)

 

  フィラデルフィアの小さな田舎街イーストタウン(架空の街)に隣接する森の中で、ある朝、顔を撃ち抜かれた少女の遺体が発見されました。彼女は17才、乳児の息子を必死で育てていたシングルマザー。この凄惨な殺人事件を担当することになったのはイーストタウンで生まれ育った部長刑事のメア(ケイト・ウィンスレット)。何しろ、イーストタウンは狭いコミュニティゆえ、事件の関係者全員がメア本人の親族か知人という設定。対人関係は複雑で、お互いの思惑が絡み合い、親族や友人への愛ゆえの庇い合いも多く、捜査は困難を極めます。殺人事件に、さらには頻発する少女たちの誘拐事件が重なって、ストーリーは二転三転、観ている私たちは息もつかせぬ想定外の展開に翻弄され、まさに「ノンストップサスペンス」の名に相応しい。 そしてそれと同時に、親子、友人、兄弟、さまざまな愛憎がしっかりと描かれた人間ドラマでもあるのです。

 

  メアは直情径行型で(「おいっ、ここでそれ言う?」って突っ込みたくなるシーンも…😅)、街の人々のために粉骨砕身、昼夜も厭わず駆けずり回る熱血刑事ですが、息子が自死するのを止められなかったという過去の記憶に苛まれ、今でも自分自身を許すことができないでいます。息子の遺児である4才の孫を家族と共に必死で育てる毎日ですが、ある日、薬物依存施設から出てきた息子の元妻が孫の親権請求を裁判所に提出して…。

 

  ご存知レオさまのマブダチで、『タイタニック』で日本のファンにもおなじみのあのケイト・ウィンスレットが、いきなりドすっぴん、髪も無造作に束ね、かなり体重も増量した迫力体型(ヲタクもアメリカに赴任した娘家族の家に遊びに行った時、スーパーですれ違う中年女性は皆こういう体型してました)でのっしのっし登場して、ちょっと衝撃😅いやー、役者魂ハンパないっすね。彼女はメリル・ストリープと並んで、アメリカの方言を完コピする「アクセントの女王」と呼ばれていますが、今作品でもその面目躍如、フィラデルフィアの方言をマスターし、警察署で実際に勤務を体験したとも言われており、メア刑事役になりきっています。

 

  ガイ・ピアーズが、メアの女性としての気持ちを揺らす大学講師役で出演。イケおじオーラむんむんです(笑)彼みたいな大物がいわくありげに登場するからどう絡んでくるのかと思いきや、本筋にはカンケイなかった(…ネタバレ?笑)

 

  それぞれ心の傷を抱え、時にケンカしながらも、お互いを思い遣り、再生していこうと努力するメアとその家族(同居するメアの母親、娘、孫、元夫)。 メアが事件の捜査や家族の触れ合いによって、最後に得たものは❓過去に苛まれるメアは、自分自身を「赦す」ことができたのか?

素晴らしいラストに涙が止まりませんでした。

 

  緊迫の一級サスペンスと骨太な人間ドラマの見事な融合。これは絶対、おススメです❗

 

  

池田エライザの『Wの悲劇』に魅せられる~『松本隆トリビュートアルバム/風街に連れてって』

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  毎日ヘビロテの、『松本隆トリビュートアルバム~風街に連れてって』。(今、ソファに寝っころがってスマホにブログ入力している間にも、背景に流れてる=笑)

 

  最愛の推し、宮本浩次さんの『SEPTEMBER』のすぐ後に来るのが、池田エライザ孃の『Wの悲劇』。女優としての彼女は知的で先鋭的、その肚の据わった、思い切った演技で、アノ園子温監督からリスペクトを込めて「池田エロイザ」の尊称を与えられるほど。

 

  そんな彼女が歌い上げるは、当初薬師丸ひろ子が歌った『Wの悲劇』❗これは、薬師丸ひろ子が主役も務めた同名の映画の主題歌。ある劇団の新進女優が、頂上を目指していわゆる野望の階段を昇っていくさまを、実際の彼女の人生と舞台をシンクロさせて描いた作品で、当時薬師丸ひろ子が大人の女優に脱皮したと話題になりました。

 

  一方、男性を踏み台にして劇団の看板を背負うトップ女優を三田佳子が演じ、鬼気迫る演技を見せました。トップ女優にはパトロンがいて、そのスキャンダラスな私生活を他の劇団員に責められた時の彼女の台詞が凄かった。

わたしたち、お客さんに道徳を教えるために芝居をやってるわけじゃないでしょ。

私生活が綺麗じゃあなければ舞台に立つ資格がないと言うの?

みんな資格なんてないんじゃないの?

SNS時代になって、皆一斉にスキャンダル取締り警察みたいになっている昨今では、言えないセリフかもしれないけどね(笑)

 

  研究熱心なエライザ孃のこと、きっと映画を観るか夏樹静子の原作を読んで、テーマを理解した上での歌唱なのだと感じました。

 

  女優としてのエライザ孃、その演技の振れ幅から考えれば、当時の薬師丸ひろ子の役も三田佳子の役も両方イケちゃいそう😉しかし今回の歌唱では、彼女の普段のセンシュアルな魅力は封印され、薬師丸ひろ子もかくや……と思われるほどの透明感。そこに、演技を極めるため、さまざまなことを犠牲にしなければならない女優の「業」の哀切さを滲ませて秀逸。やはりエライザ孃自身が女優であればこその表現だったのではないでしょうか?

 

  秋の夜長に聴きたい一曲です😊

軽妙洒脱な会話劇がここに❗~『まともじゃないのは君も一緒』


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U-NEXTで『まともじゃないのは君も一緒』観賞(監督・前田弘二、脚本・高田亮)。

 

いやー、面白かったっす❗

秋の長雨で気分もパッとしない中、久しぶりに、大いに笑かしてもらいました😊

 

  アップテンポで軽妙洒脱、全編ユーモア溢れた会話で紡いでいく、いわゆるスクリューボールコメディの一種です。

スクリューボールコメディ……戦前のハリウッドで人気を博したコメディのジャンル。違う世界に住む男女が、不測の事態を乗り切るために奮闘する、テンポのいい会話が特徴のドタバタコメディ。ヲタク的には、「風と共に去りぬ」レット・バトラー役で有名なクラーク・ゲーブルが主演した「或る夜の出来事」、身分違いの男女がひょんなことからホテルで一夜を過ごすことに😅二人の軽妙でお洒落な会話が印象的でした。あの有名な『ローマの休日』とかも、このジャンルに分類できるかな?

 

  日本映画では珍しいですよね、こういう、純粋に会話の面白さで繋いでいくコメディ作品。他に比較できるのって何かあるかな…と考えた時にやっぱり日本映画では思いつかなくて😅、頭に浮かんだのは、古くはビリー・ワイルダー、最近ではウッディ・アレンの数々の名作たち。ウィットに富む会話に織り込まれた、鋭い人間考察とアイロニー。私たちは登場人物の右往左往に、(あー、こういうこと、あるある、こういう人、いるいる)とクスクス笑いながらふと、毎日重ねている小さな欺瞞や、現実に向き合えない自分自身を秘かに反省してみる……というしくみ😊この『まともじゃないのは君も一緒』、ベースになる原作(小説とかマンガとか)のない、映画独自のオリジナルストーリーと聞いて、二度ビックリです😮うーーん、もっと見たいよねー、こういう優れたオリジナル作品。

 

  これまで数学にしかロマンを感じたことのないコミュ障ぎみの予備校講師・大野(成田凌)は、教え子の香住(かすみ…  清原 果耶)からいつも「なんでマトモに話せないかなぁ。先生フツーじゃない、そんなんじゃ一生結婚できないよ」と、さんざんバカにされています😅そういう香住も実は恋愛経験ゼロで、恋バナと人の悪口ばかりで盛り上がる同級生に表面的には相づちをうちながら、心の中ではなんだかモヤモヤする毎日。一方大野も、香住に授業のたびにどやされるうちに、(…ひょっとして、オレは一生このまんまなんだろうか❓)と、自分の孤独な行く末が心配になって、夜眠れなくなってしまいます(笑)そんな、じつは「似た者同士」の二人、大野の孤独な老後を阻止するため、ハッピーな恋愛人生を目指して、あるトンデモナイ計画に着手しますが……。

 

  とにかく、主人公二人を演じる成田凌と清原果耶の演技が巧すぎる😮

 

  あの若さで、二人とも緩急自在、驚くほどのコメディアン & コメディエンヌぶりを発揮します。特に、生真面目でコミュ障ぎみの予備校講師を演じた成田凌、この人はつくづく巧いですよねぇ…。クズなダメ男から、恋愛経験ゼロの真面目くん、なんでもござれで極めてナチュラルにやりこなす…😮まったくもって驚きです。今回の映画の、彼の爬虫類みたいな笑いかた(…って、爬虫類が笑うのかどうかわかんないけど=笑)聞くだけで、こちらも笑いがこみ上げてきて困っちゃいました😅

 

  ハマっ子としては、ラブコメによく登場するキラキラでお洒落なみなとみらいや日本大通りではなく、ちょっとDEEPなヨコハマ……山手から元町に至る汐汲坂や、天ぷらの老舗「天七」界隈、弘明寺商店街辺り?など(あの商店街、黄金町とはちょっと違ったよね…間違ってたらゴメンナサイ😅)が登場するのも嬉しいところ。

 

   「人生って、人と同じじゃなきゃいけないの?絶対多数が幸せなの?」

「マトモって何?自分ってどこかヘン?」

「フツーとフツーぢゃない境界線ってどこにあるの?」

…と、誰でもふと感じる、そんな時。

 

  この愛すべき佳作は、そんな私たちのちいさな不安と疑問に、きっとステキな答を与えてくれることでしょう😊

 

  

 

  

 

  

色気ダダ漏れトム・ヒューズ♥️~『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ』シーズン2

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(London from Pixabay)

  なんでこう、英国の俳優が好きなのか❓じぶん😅古くはピーター・オトゥール(『アラビアのロレンス』)やゲイリー・オールドマン(『レオン』『裏切りのサーカス』)、ベネディクト・カンバーバッチ、エディ・レドメイン、現在熱烈推しのジャック・ロウデン(『ふたりの女王~メアリーとエリザベス』『イングランド・イズ・マイン』)に至るまで、ヲタクの「英国俳優遍歴」は、けっこう年季が入ってるんであります。

 

  そんな推しの英国俳優、マシュー・グードとトム・ヒューズが揃い踏みの英国ドラマ『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ』第2シリーズ❗第1シリーズでは、現代の英国が舞台で、魔女の血を引くダイアナ・ビショップ(テリーサ・パーマー)と、ヴァンパイアのマシュー・クレアモント(マシュー・グード)が激しい恋に落ちる経緯が描かれます。特別な力を持った種族である魔女やヴァンパイア、デーモンは「クリーチャー」と呼ばれ、特に敵対関係にある魔女とヴァンパイアの恋はご法度。二人は、クリーチャーの「種の起源」とも言うべき「生命の本」の存在を知り、魔女とヴァンパイアの敵対の歴史を紐解き、クリーチャー同士の平和、ひいては自分たちの恋の成就を求めて、「生命の本」を探す長い長い旅に出るのです。しかし、「生命の本」を征する者はクリーチャー全てを征する者、その野望を抱くクリーチャーたちが、二人を亡き者にして自分たちが先に書物を手に入れようと暗躍し始めるのです…。


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(実在したエリザベス朝の詩人、クリストファー・マーロウを演じるトム・ヒューズ)

 

  第2シリーズで二人は「生命の本」を求めてタイムリープし、なんとエリザベス朝のイングランドにやって来ます。エリザベス1世をはじめとして、ウォーター・ローリーやジョン・ディー(錬金術師)、エドワード・ケリー、神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世など、実在した人物が続々と登場し、歴史好きには垂涎の展開😍

 

  トム・ヒューズ演じるクリストファー・マーロウ(愛称キット)にとって、誰よりも冷酷かつ強靭で誇り高いヴァンパイアのマシューは最愛の人。ダイアナに会うまでは、自分が彼に一番近いところにいた筈なのに、再会したマシューは、あんなに憎んでいた筈の魔女にメロメロ(笑)拗ねて気を引こうとすればマシューから「お前の顔なんて見たくない。あっち行け」と言われる始末。挙げ句の果てには「ダイアナに手を出したら殺してやる」ひどいよマシュー、いくらダイアナに首ったけって言ったって…。

 

  またね、トムくんの、傷ついた表情が絶品なんだわ…。マシューの冷たい態度にどんどん気持ちを拗らせていくそのプロセスも、トム・ヒューズならではの繊細な演技でもう、気持ちにグサグサ来る。説明的な台詞がないぶん、余計にね。

 

ああ、やっぱりトム・ヒューズ、好きだわ~~😍

 

  気持ちが拗れた挙げ句、キットは兄の恋人を憎むマシューの妹ルイーザにそそのかされ、ダイアナを拉致するという暴挙に出ます。鎖で繋がれたダイアナ。狂暴なヴァンパイア・ルイーザは、キットに拳銃を渡し、「さあ、撃つのよ❗この女がいなくなれば兄は再びあなたのもの」と悪魔の囁きを…。震えながらダイアナに銃口を向けるキット。その時ダイアナはキットに向かって、「あなたの武器は言葉よ❗(拳銃ではないはず)」と、キットの書いた詩を口ずさみ始めるのです。

愛も憎しみも我らの力が及ばぬものだ

我らの意志は運命に支配される

恋路が始まるずっと前から

我々はその勝敗を願う

慎重であれば恋など些細なもの

一目惚れでない恋などあろうか

(クリストファー・マーロウ作『ヘーローとレアンドロス』)

ダイアナへの敵意が、自らの才能を認められた嬉しさで次第に変化していくその過程を、蒼い瞳の表情と、微かな唇の震えだけで語るトム・ヒューズ。(恥ずかしながら、この場面だけ何度リピートしたことか)

 

  居酒屋で喧嘩に巻き込まれ、若干29才で眉間にナイフを刺されるという残酷な死を迎えるマーロウ。彼はエリザベス1世の下でスパイ活動を行っていたという噂があり、今ではマーロウ暗殺説が濃厚のようです。長く生きていたら、シェイクスピアを凌ぐ文豪になっていたかもしれないのに…。

 

  あなたの未来を知ってるわ…

ダイアナの、悪魔…ならぬ魔女の❓囁きに我を忘れ、拳銃も下ろしてふらふらとダイアナに引き寄せられていくキット。行く手にはさらなる闇が待っているのも知らずに…。

 

  出番の少ない、脇役も脇役なのですが、愛も名声も得ること少なく、道半ばで倒れた若き詩人。トム・ヒューズならではの表現力で、ドラマにさらなる深みが生まれたことは間違いありません。

 

★この記事を読んで、ステキな俳優トム・ヒューズに興味を持たれた方は、題名の下の「トム・ヒューズ」をクリックして頂くとマイク関連の他の記事も読めますので、よかったら‥‥。


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女性陣の怪演(快演❓)が凄い❗~映画『来る』(2018)

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  (From Pixabay)

 どこかの森の中。羽を片方もがれた揚羽蝶。少女が少年に向かって…「呼ばれてしもてん。私悪い子やから。呼ばれたら逃げられへん。秀樹だって呼ばれるで。…あんた、嘘つきやから」

何に呼ばれるの?なぜ嘘つきだと呼ばれるの?

と、ザワザワした気持ちになっていると…

 

  場面は変わり、真夜中のマンションの中。なぜか廊下に茶碗が所狭しと並んでいる。家中の鏡が割られ、恐怖で汗びっしょりになっている男(妻夫木聡)。携帯が鳴り、女の声で「アレを今から迎え入れましょう」と。「む、迎え入れるって…」と呟く、恐怖に歪んだ男の顔のアップ。そしてそこから、カッコいいオープニングが始まる。映像も音楽もめちゃくちゃスタイリッシュです。同じ中島哲也監督の、ヲタク大好きな映画『嫌われ松子の一生』でもそうでしたけど、この作品でも、映画のテーマを表現するのに音楽が効果的に使われていると思います。(…というより『嫌われ松子』はミュージカルか、もはや😅)

 

  人の心の奥底に潜む悪意を容赦なく抉って見せ、「イヤミスの帝王」とも呼ばれる中島哲也監督。この映画では、嫉妬や誤解や差別に満ちた現実世界である「此岸(しがん)」と、「アレ」が住む「彼岸」を対比して描いていて、リアルワールドの悪意が膨れ上がっていくと「アレ」の力も比例して増大していき、一気にクライマックスに雪崩れ込む、そのリズム感、疾走感がイイ。

 

  今作も、「中島組」とも言うべき監督好みの演技派勢揃い。

…しかしおしなべて男性キャラの描き方を見てみると、家庭は壊れかけているのに友人や会社にはひた隠しにし、ネットの虚構世界に逃避する秀樹(妻夫木聡)や、未だに過去の恋愛体験やトラウマを引きずるフリーライターの野崎(岡田准一)、へらへら笑いながら腹の中は嫉妬と羨望で煮えたぎっている秀樹の後輩(太賀)、俗物根性そのものの大学教授(青木崇高)など、誰も彼も小者感満載で情けな~や~😅中島監督も舞台挨拶で「ホントは男優には興味ない。見てて飽きちゃうんだ」って発言して、男優陣がのけ反ってましたもんね、たしか(笑)…まあでも、男優陣は全員「此岸」側にいるわけだから、カッコ悪くても仕方ないか…。「アレ」に狙われたら怖がるしかないよね(笑)

 

  特に、日本一のアクション俳優と言っても過言ではないカッコいい岡田くんが、今まさに決戦が始まる時に尿意を催したり、自らの非力も省みず果敢に「アレ」に立ち向かっていく小松菜奈にさんざん振り回された挙げ句、無表情な松たか子に「ジャマよ」とばかりに一撃でぶっ飛ばされる……ただただお気の毒さまです(笑)しかし岡田くんの場合、情けなさの中に何とも言えないおかしみがあって、彼特有のコメディセンスが◎❗

 

  それに比べて女性陣のなんと強くて魅力的なこと😮価値観がズレていく夫婦仲と子育ての過酷さに次第に追い詰められていく若い母親の役をリアルに演じきった黒木華が「此岸」代表でひとり気を吐けば、「彼岸」にいる松たか子小松菜奈(振り切った演技で、最初誰だかわからなかった…😅)、柴田理恵の霊能者たちはもはや「悪霊退散👻」アベンジャーズ❗パッツン前髪黒づくめ(あるいはオールホワイト巫女衣装)の霊媒師、比嘉琴子を演じる松たか子は、ワンダーウーマンかスカーレット・ウィッチか…っつーくらい見るからに最恐…もとい、最強のダークヒロインなんですが、柴田理恵が想定外に(失礼😅)めちゃくちゃカッコよかった😉

 

  ラスト30分、「アレ」を倒すために日本津々浦々から琴子のもとに霊媒師たちが終結し、町全体や警察権力さえも巻き込んで最終大決戦に挑むさまは、この映画最大のクライマックス。(しかしなぜか決戦日はクリスマスイブ 笑)荘厳なる雅楽が鳴り響くなか、『陰陽師』の安倍晴明か、『源氏物語』の六条御息所の霊との戦いか、はたまた幻魔大戦か、まさに「血湧き、肉踊る」❗

 

  公開当時のキャッチフレーズは「最恐のホラーエンターテイメント」でしたね。P12ではあるし、ホラーとエンターテイメントって一体化できるん❓と見る前は思っていましたが、見事に融合していたと思います🎵

 

 

 

ラストは、続編も期待できそうな終わり方だったけど…

 

最強のダークヒロイン、比嘉琴子(松たか子)カムバ~~ック❗

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ジャック・ロウデン主演『Benediction(祝祷)』サン・セバスチャン国際映画祭へ❗

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(サスーンとオーウェンが運命の出逢いを果たすエディンバラの街並み…Pixabay)

サンセバスチャン国際映画祭の公式Twitterに嬉しいお知らせが❗

 

 テレンス・デイヴィス監督(その作品は、当映画祭において2008年に回顧上映が開催された)が、『Benediction~祝祷』を正式出品することに決まった。正式出品は、今回で三度目。本作品は反戦詩人ジークフリード・サスーンの生涯を描いたものであり、主演を務めるのはジャック・ロウデンとピーター・キャパルディ(サスーンの晩年)である。

…とあります。

 

  今回ジャクロくんが演じるのは、第一次世界大戦の凄惨な体験から心を病み(今で言うPTSDですね)、その後反戦の詩を書き綴った実在の人物、ジークフリード・サスーン。

サスーンは、やはり英国の反戦詩人、ウィルフレッド・オーウェンの詩作上の師であり、師弟関係を越えた敬愛の対象でもありました。二人はPTSD治療の為に入院したスコットランドエディンバラの精神病院で運命の出逢いを果たし、サスーンの指導によりオーウェンは、戦争を題材にした詩作の中でも英国文学史上屈指の名作と言われる『死すべき定めの若者の為の讃歌』(Anthem for Doomed Youth) を書き上げます。その後オーウェンはサスーンの反対を押し切り再び前線に赴き、激戦の地で25才の若き命を散らすのですが…😢

 

ツイッターの左の写真は、ジャクロくんと、若手イケメン演技派ジェレミー・アーヴァイン(『戦火の馬』)との麗しきツーショットが❗

っつーことは、サスーンの運命の人、ウィルフレッド・オーウェン役はジェレミーってことか…。

い、いかん、今からヨダレが…(^q^)(⬅️バカ😅)

 

…って、デレデレしてる場合ぢゃないのよ。なんてったって監督は、あのテレンス・デイヴィス(Twitterの写真右)。鬼リアリズムなんだよなー、この人の作品😅ヲタクが直近で観たのは、有名なアメリカの詩人の生涯を描いた映画『エミリ・ディッキンソン~静かなる情熱の生涯』。ディッキンソンと言えば若い時から自宅の敷地を一歩も出ず(もちろん結婚せず)ひたすら詩を書きまくった人で、元祖引きこもりというか。その芸術性が世に認められたのも、彼女が亡くなってから。もともと腎臓が弱かったエミリはギリギリまで医者にかからなかったから重症化して、尿毒症から脳に来て((( ;゚Д゚)))そのプロセスが徹底したリアリズムで描かれていて、主演のシンシア・ニクソンの熱演と相まって怖くて…。第一次世界大戦の戦場や当時の精神病院の様子、サスーンのPTSD等をあの容赦ないリアリズムで描くとしたら…。

映画見る前にちょっとした覚悟がいるかもね。

 

 サスーンの晩年を演じるピーター・キャパルディは、ルイス・キャパルディのMV『Someone You Loved』で、妻を心臓病で亡くした男性を演じていたスコットランドの俳優さんですね。あのMVで日本でも広く知られるようになりましたが、本国では以前から高名なバイプレーヤーです。個人的には、英国の作家ディケンズの半生を描いた『どん底作家の人生に幸あれ❗』の軽妙なコメディ演技が好き🎵『スーサイドスクワット』の新作にも出てるみたいですね。(予告編にチラッと写ってた😅)

 

  …とにもかくにも

一刻も早く見たいよ~❗❗(⬅️こればっか😅)

 

 

 

 

 

久々のゴシック・ホラー~Netflix『レクイエム/マチルダ・グレイの秘密』

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(From Pixabay)


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  映画や音楽、舞台を観た後、自由奔放に、マイナーな感想を呟いているだけの当ブログ。そんな中で、掲載後最も多くの方々が読んで下さっているのが、ちょうど2年前に書きました「夏の夜におススメ~ゴシックホラー3選」という記事。なぜなら、「ゴシックホラー」ってググると、お陰さまでヲタクの記事がトップに出てくるからなんですね😮(びっくり)いやぁ…Googleの威力、おそるべし。(ゴシックホラーに興味のある方はそちらの記事もどうぞ😉)

 

  そもそもゴシックホラーの由来は…

18世紀の作家、ホレス・ウォルポールという人が自分の別荘を中世ゴシック風(ゴシック・リバイバル建築)に改築したのですが、ある夜のことそこで恐ろしい夢を見、その夢をもとに中世の古城を舞台にした幻想小説『オトラント城奇譚』を書いたことから…と言われています。彼の作品以降、ゴシックホラーといえば、ヨーロッパの古い建築物を舞台にした幻想的かつ恐怖に満ちた作品…というイメージが定着したようです。

 

  ヲタク、幼少期からこのゴシックホラーに目がなくて(笑)だいたい、建物自体が今にも崩れそうに古くて、部屋が幾つもあって、地下室とか開かずの間とかがあって、どこに誰が潜んでるかわからないって、めちゃくちゃ怖いですよね❓ロンドン塔やヨーロッパのお城に行くと、どこも同じように何とも言えない湿気があって冷たくて、澱んだ空気を感じます😅そんな空気が今にも画面から漂ってきそうなのが、今回ご紹介するNetflixミニシリーズ『レクイエム~マチルダ・グレイの秘密』(6エピソード)。

 

  冒頭から登場する、霧深い森の奥深く佇む古びたマナーハウス。その上から老人が飛び降りる衝撃の展開。そこで画面は一転、賑やかなロンドンの街並みが映し出される。マチルダ・グレイ(リディア・ウィルソン)は、将来を嘱望される新進気鋭のチェリスト。あと少しで自身のコンサートが開演というところで、マチルダがナーバスになっていると、前の日に会ったばかりの母ジャニスが突然彼女の前に姿を現します。「こんな時にどうしたの?」と戸惑う彼女に、まるで何かに取り憑かれたような、ただならぬ様子でひとこと、「マチルダ、ごめんね…」と呟き、身を翻してロンドンの雑踏の中に立ち去ってしまうジャニス。マチルダは驚いて後を追いかけるが、行き止まりの地下駐車場で、あろうことか、ジャニスはマチルダの目の前で喉をかき切って息絶えてしまう……❗

 

  いくらホラーだって言ったって、始まってわずか10分位で二人も人が死ぬってなかなかないよ(笑)

 

  母親の死をきっかけに、自分の出自には何か暗い秘密があり、それはペンリニスというウェールズの小さな村、さらには20数年前にその村で起きた少女の失踪事件に関係があると知ったマチルダは、相棒のピアニスト・ハル(ジョエル・フライ)と共にペンリニスを訪ねるが、それは彼女にとって想像を絶する恐怖の始まりだった…❗

 

  以前ブログに書きましたけど、イングランド、特にロンドンに住んでいる人にとって、アイルランドスコットランドウェールズの片田舎って、どこか異空間、というかそれだけで得体の知れない存在なんですよね😅民族も違うし。

 

  妙齢の美女が、ひたすら鬱蒼とした森を車で進んでいって、行き着いた先が古い古い広大な屋敷(相棒のハルの、「カビ臭いなぁ。肺炎になりそう」というセリフが😅)目に見えない「何か」が住み着いていても何ら不思議はありません(笑)

 

  だいたい「何か」が見えるのはヒロインだけで、周囲から信じてもらえなくて追い詰められていく…っていうのがホラーの定番なんですが(ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』とかね)、このドラマが目新しいのが、ヒロインの他に「何か」が見える人が複数いるんです😅…で、それを利用しようとする悪役がいる。誰がその悪役か❓っていうのがサスペンスの要素、謎解きになっているんですよね。  ウェールズの美しい大自然をバックにホラーとサスペンス要素の融合が計られた新しいタイプのゴシックホラーだと思います。Wikipediaによれば、

The series encompasses elements of both the supernatural and thriller genres.

(このドラマシリーズは、超常現象とスリラーの両方の要素を兼ね備えている)とありますから、ヲタクの感想もあながち的外れではないようです。

 

 BBCNetflixの共同制作の作品らしくって、宣伝文句は「BBC開局以来、最恐のホラー」。…それはちと盛り過ぎだとヲタクは思いますが(笑)

 

しかし、目に見えない「何か」が、ヒロインの全くの妄想だとしたら……❗❓

そういう視点から見直すと、また別の作品になるような気がしますが。

 

  ブレンダン・コイル(『ダウントン・アビー』)、リチャード・ハリントン(『ヒンターランド』)、クレア・カルブレイス等、英国を代表するベテラン俳優たちが脇を固めています。

 

(おまけ)

ドラマの重要な場面で、ジョン・ディー(16世紀、エリザベス朝の占星術師・数学者・錬金術師)と「エノク魔術」(Enochian magic)の名前が出てきます。

  ジョン・ディー、どこかで聞いた名前だなぁ…と思っていたら、ヲタクの推し、マシュー・グードが主演を務めるドラマ『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ』第2シリーズにも登場してました😊

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私たちもまた悠久の歴史の一部である~Netflix『時の面影』

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(サットン・フーの出土品が展示されている大英博物館…From Pixabay)

 1930年代後半まで、イギリス最古の遺跡は、遥か北方からやって来てイングランドを征服したヴァイキングのもの…と信じられていたのですが、1940年代、第二次世界大戦前夜にサフォーク州で発見されたサットン・フーの遺跡が、それまでの定説をまるっきり覆しました。文学作品で言えば、イギリス最古の叙事詩と言われる『ベーオウルフ』や『アーサー王伝説』の時代に、イングランド本土にも文明が存在していたという事実を証明する、英国考古学史上最大の発見だったのです。

 

 この映画は、世紀の大発見がいかにしてなされたか、その顛末を描いたもの。サフォーク州ウッドブリッジ近郊のカントリーハウスに幼い息子と二人で住む未亡人のイーディス(キャリー・マリガン)の依頼を受け、近所の博物館のアルバイトだったバジル・ブラウン(英国のベテラン名優、レイフ・ファインズ)が彼女の家にやって来るところから物語は始まります。

 

  彼は小学校卒業後、生活のために農作業をしながら、絵、天文学、地理学、地質学を通信教育で学んだ、言わば「叩き上げ」。サットン・フー遺跡は、イーディスの、考古学では素人でありながら、まるで神がかっているとも言える鋭い直感力(スピリチュアル…と言ってもいいかもしれない😅)と、バジルの掘削者としての豊富な体験により奇跡的に発見されるのです。しかし、いざ発見されたとなると、それまでイーディスの言うことなど見向きもしなかった村の博物館や、大英博物館から、大挙して関係者が押し寄せてきます。

 

  大英博物館の考古学者チャールズ・フィリップから「これから後は、考古学者たる私の仕事だ。お前は学位も持たないただの掘削者(Excavator)だろう。」と暴言を吐かれて著しくプライドを傷つけられ、泊まり込みで掘削を続けていたイーディスの館を抜け出して、自宅に帰って来るバジル。その時、彼を励ます奥様の言葉が泣かせるんですよ😢(バジルの妻メイは、実際にも、幾つもの仕事をかけもちしながら、バジルの遺跡の掘削作業を経済的に支えたと言われています)

 

掘削は過去や現在でなく、未来のためなんでしょ?次の世代にルーツを伝えるのよね。

未来の人と祖先を繋げる仕事でしょ。

だから戦争が近づいても掘り続ける。

意義があるから。

戦争より永劫の価値があるから。

妻の励ましによって今ひとたび遺跡掘削の意義をかみしめたバジルは、「たとえ名前が残らなくてもいい。下働きでもかまわない」と、再び発掘の現場に戻っていくのです。

 

 一方イーディスは、重度の心臓病を患い、次に発作が起きたら命の保障はないと医者に宣告を受けていました。サットン・フーの船墓遺跡を見て、「これに乗ってママと宇宙まで行けるかな❓」と尋ねる幼い息子を、早晩置いて逝かなくてはいけない悲しみ、苦しみ😢

「人間は結局、最後は朽ちて行くだけね」と嘆くイーディスにバジルは

掘り出したのは人の生きざまです。

(私たちは)洞窟の壁の手形から続いている。……私たちもその悠久の一部です。消え去るわけではない。

と励まします。

 イーディスは、その言葉に自らの存在意義を見出し、サットン・フー遺跡の全ての埋蔵品発掘に、人生最後の炎を燃やすのでした…。

 

  『プロミシング・ヤング・ウーマン』で、セクハラ男たちに鉄槌を下す、ケバい化粧のキッチュな復讐鬼をぶっ飛んだ演技で魅せたばかりのキャリー。今作では真逆の、静かな中にも意思の強さを感じさせる薄幸の未亡人役。彼女の演技の幅の広さを実感します。都会の喧騒な生活を嫌い、普段は英国の片田舎で家族と静かに暮らしているというキャリー。今回の役は、普段の彼女に非常に近いのかもしれませんね😊

 

  ヲタクは大英博物館が大好きで、ロンドンに行く度に立ち寄っていましたから、3回位訪れていると思います。サットンフー遺跡は大量に宝物が出土した為、1つの大きな展示スペースを形成しています。遺跡の発掘に、こんな深い人間ドラマがあったとは…。最近スペースに掲示されたというバジル・ブラウンについての記述は見逃したので、またいつか、大英博物館にサットン・フー遺跡を見に行きたい❗

 

  世界が戦争にひた走っていた暗黒の時代、立場、境遇は違えども不思議な友情で結ばれ、遺跡の発掘に「永遠」を見ようとした二人。

英国アカデミー賞各部門にノミネートされた秀作です。


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