オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

かなりヤバみな映画だったわ(^.^;『ソルトバーン/Saltburn』

  
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 当ブログでも度々最新情報をお知らせしていました映画『ソルトバーン/Saltburn』(監督は『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年)のエメラルド・フェネル)、いよいよAmazonプライムより配信開始されました❗


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ヨルゴス・ランティモス(※『聖なる鹿殺し/キリング・オブ・ザ・セイクリッドディア』)やマーティン・マクドナー(『イニシェリン島の精霊』)等、世界に名だたる監督に愛されるアイルランドの若き演技派バリー・コーガン。今作でついに堂々の初主演❗

※仮装パーティの場面で、バリーがシカのツノつけて登場したのはランティモス監督に対するフェネル監督のオマージュかな❓もしや。

 

 アルコール依存症と薬物中毒の両親の元で貧困の家庭に育った苦学生のオリヴァー(バリー・コーガン)。必死の思いで奨学金を獲得、入学したオックスフォード大学でしたが、そこは良家の子女の集まりで、あらゆる面でオリヴァーは異質の存在。どのサークルからも爪弾き、半ば諦めのうちに大学での日々を送るオリヴァーでしたが、ある日ひょんなことから、貴族の末裔且つ大富豪の御曹司で学生たちの憧れの的のフィリックス(ジェイコブ・エロルディ)と知り合いになります。何もかも違いすぎる2人でしたが、フィリックスは凄絶すぎるオリヴァーの境遇にいたく同情し、あれこれと彼を構い始めます。フィリックスの好意に初めは戸惑っていたオリヴァーも次第に心を開き始め、初めての夏休みが始まる頃には、すっかり2人は親友同士になっていました。そしていよいよ夏休み。実家に帰るあてのないオリヴァーはフィリックスに誘われ、彼の住む豪壮なマナーハウス「ソルトバーン」の門を叩きました。そこには彼の他に、どこか妖しげで奇妙な性癖を持つ彼の親族や知人たち(ロザムンド・パイクキャリー・マリガン、リチャード E グラント)が住んでいました。それはオリヴァーの、今まで知ることの出来なかった世界、快楽に塗れた酒池肉林の日々のはじまりだったのです……❗

 

 いつも卑屈で周囲に媚びを振り撒き、こちらの嗜虐性を煽るようなオドオドした態度をとりながら、次第にその隠れた本性を剥き出しにしていくオリヴァー役はもはや、若きカメレオン俳優バリー・コーガンの独壇場。今までヲタクは、『ダンケルク』や『聖なる鹿殺し』、『イニシェリン島の精霊』、『グリーンナイト』等を観て、彼は脇役でこそ輝くタイプかと思っていましたが、今回の作品で十分に主役としてのオーラを持った人だということがわかりました。ハリウッドで、ダスティン・ホフマンロバート・デ・ニーロの跡目を継ぐのは彼しかいない❗

 

 サスペンスタッチの愛憎劇とも言うべきこの映画。随所に伏線が巡らされ、何度もどんでん返しが待っていますが、それが最大限に効果を発揮するのも、バリーの小憎らしいほど巧妙な演技の賜物といえるでしょう。脇役陣も豪華で、特にロザムンド・パイクの上品ぶったビッチっぷりが秀逸。コーガンとパイクは共に本年度ゴールデングローブ賞の主演男優賞と助演女優賞に夫々ノミネートされました。恋愛依存のメンヘラ女でご登場のキャリー・マリガン、バリーにどう絡んでくるのか楽しみだったんだけど、あっという間にご退場(笑)『プロミシング・ヤング・ウーマン』で堂々、ぶっ飛んだダークヒロインを務めた彼女ですが、今回は友情カメオ出演だったのかな(^.^;


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※美と才気に恵まれ、富も名声も全て思うがまま、特権階級の頂点に立つ美丈夫フィリックス役にジェイコブ・エロルディ(中央)。ソフィア・コッポラ監督の『プリシラ』で、あの「キング・オブ・ロックンロール」エルヴィス・プレスリー役に抜擢されています。そちらも楽しみ。

 

 英国特権階級のお寒い実態と、彼らが知らず知らずのうちに他人の心に植え付けていく憎悪の芽を皮肉を込めて描いたこの作品。父はジュエリーデザイナー、母は作家という家庭に育ったフェネルは、英国社会でもどちらかと言えばセレブ寄りだとは思いますが。セレブが抉り出した、さらにその上の特権階級の裏側……ってとこかな。ソルトバーンで、朝ある人が亡くなった時、当主(リチャード E グラント)は「何があろうといつも通り振る舞う。朝食をとるんだ」って言うんですよ🫢んで、食事の席で泣きじゃくっている若者に「アメリカ式に感情を垂れ流すな❗」って叱責するの。(大声で叱責している彼自身、十分に感情的になっているんですけどね)そう言えばNetflixのドラマ※『ザ・クラウン』で、エリザベス2世がことあるごとに「王族は常に冷静でなくてはならない。感情を露わにしてはいけない」って呟くシーンがあるんだけど、ソルトバーンの当主のセリフってこのエリザベス2世の、言わば猿真似なんだよね。「形骸化した特権階級の日常」みたいな(^.^;

※監督のエメラルド・フェネルは俳優でもあり、『ザ・クラウン』では、アンドリュー王子の元妻で、英国王室の反逆児とも言えるセーラ妃を演じていました。

 

 この映画、当然R18+で、画面には「性的表現、喫煙、肌の露出、飲酒、薬物、暴力、暴言」ズラズラと…(笑)(サド侯爵が喜びそうな)かなり悪趣味なシーンもあり、倫理道徳面でけっこうヤバイと思う(^.^; ……ヲタクは好きですけどね(小声)
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※プライベートでも仲良しこよしのジェイコブ・エロルディ(左)とバリー・コーガン(右)。この身長差に萌えるわ〜〜😍

 

★今日の小ネタ

パトリシア・ハイスミス

『ソルトバーン』は、パトリシア・ハイスミスの小説『リプリー』を実写化した同名の映画(1999年アメリカ…アンソニー・ミンゲラ監督)に着想を得たと言われています。『リプリー』は同名の映画が製作される以前に、フランスのルネ・クレマン監督によって既に映画化されています(1960年…『太陽がいっぱい』)。ストーリーの概略は、貧しい主人公の青年が、裕福で能力もあり、将来を嘱望される同性の友人に対して憧憬と羨望を抱きますが、それがやがて激しい憎悪に変っていく……というもの。この2人の関係性も、お国柄の違いか❓3つの映画でそれぞれ微妙に違いが出ているのが面白い。今回の『ソルトバーン』は、寄宿学校の国英国が舞台なので前2作では匂わせで終わっていたBL要素が前面に出ていること、貧富の差だけでなく、未だ英国に隠然と存在する階級制度の弊害を詳細に描いている点で突出しており、ハイスミスが観たら1番喜ぶんじゃないか❓って思いましたよ。


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Amazonの配信開始がクリスマス…ということで、作品に因んだクリスマスカードがXにポストされてたけど……。内容を思い出すとちと怖い(笑)

 

②ソフィー・エリス・ベクスター

(Sophie Ellis-Bextor)

 『Saltburn』の全編がかなりヤバさ満載なんだけど、中でも1、2を争う、バリー・コーガンがマッパで踊り狂うシーン。そこで使われたのがベクスターの「Murder On The Dancefloor」(2001年…題名がまた、意味シン)。そのお陰で再度世間の注目を集め、2024年1月12日に公開された全英シングルチャートでは2位を記録したそう。