オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

ジャック・ロウデンNEWS~ジャック & シアーシャお馬さんごっこ🐴と『BENEDICTION』

 おおっ、ジャクロくんのツイッターとインスタにジャクロくんとシアーシャ・ローナンの、なんと、お馬さんごっこの動画がぁぁぁ~😍

 

  今までロンドンやアイルランドスコットランドアイスランド…etcに一緒に旅行している二人、いつもシアーシャの後ろ姿とか手の一部しか写さない「匂わせ」だったけど、今回はあんまりhappyすぎて動画撮っちゃったんだねぇ(笑)二人、お馬さんに扮してるんだけど、パカパカというヒヅメの音や鼻息の音がちゃんと入ってて、本格的な作り(笑)ヲタク、ヒアリングが不得意で、シアーシャの"Where are you going?"しか聞き取れない…😅シアーシャはすっぴん、し、しかもパジャマ姿❓で、インスタは「楽しい」「可愛い」「ジャック、お前は世界一幸せな男だ」って大盛り上がり😊二人からの幸せのお裾分けで、こっちまで気持ちがほっこり♥️

 

さて、2番目のツイッターは一転してお仕事のお話。

ツイッターの記事には…

「尊敬を集めるテレンス・デイヴィス監督の『BENEDICTION 祝祷』(第一次世界大戦を題材にした詩人、ジークフリート・サスーンの激動の人生を描いた作品)。主演はジャック・ロウデン、共演サイモン・ラッセル・ビール、ピーター・キャパルディ、ジェレミー・アーヴァイン、ケイト・フィリップス、ジェンマ・ジョーンズ」

とあります。  

 

 

 サイモン・ラッセル・ビールは有名なシェイクスピア役者で、ドラマ『嘆きの王冠~ホロウ・クラウン』では、「ヘンリー四世」のフォルスタッフ役で、トム・ヒドルストンと丁々発止の演技合戦を繰り広げました。

ピーター・キャパルディは、ルイス・キャパルディのMV『Someone You Loved』で、妻を心臓病で亡くした男性を演じていたスコットランドの俳優さんですね。以前拙ブログでも取り上げましたが、臓器移植のドナーキャンペーンの為に製作されたあのMV、いつ見ても胸が締めつけられます😢

で、ツイッターには若手イケメン演技派ジェレミー・アーヴァインとジャクロくんの麗しきツーショットがぁぁぁ~😍

っつーことは、ジャクロくんがジークフリート・サスーンで、ジェレミーウィルフレッド・オーウェン❗❗

…や、ヤバい、コーフンしてきた(笑)

ジークフリート(ジャック)はウィルフレッド(ジェレミー)の詩の師匠。第一次世界大戦PTSDで精神を病んだ二人は、入院先で知り合い、友情を越えた間柄に…。英国を代表するイケメン二人が男同士の愛憎劇を演じるわけですね😍ケイト・フィリップス(『探偵ミス・スカーレット』、『ザ・クラウン』のチャーチルの秘書、『ピーキー・ブラインダーズ』アーサーの妻…等々)も大好きな女優さんだし、ハリポタのマダム・ポンフリー、ジェンマ・ジョーンズも出るのね❗そうそうたるメンバーだなぁ…👀

 

  早く来い来い『BENEDICTION』❗

『The long song』の二の舞はナシよ❗❗(笑)

 

 

  

 

  

英国上流階級の子弟はみんなM❗❓😅~Netflix『ザ・クラウン』シーズン1-②


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(エリザベスの母である王太后がこよなく愛したスコットランド…Pixabay)

若くして女王に就いたエリザベス二世(クレア・フォイ)。毎日首相の訪問を受け、国内外との政治家との意見交換も度重なる中で、文学、科学、数学など一般教養を学ぶ機会がなかった為に、次第に劣等感の塊になっていくエリザベス。(当時は、こういった学問は帝王学の中には入っていなかったんですね👀)ある高名な教授から個人授業を受けることになりますが、そんなある日、チャーチル(ジョン・リスゴー)が軽い脳梗塞で倒れ、アメリカのアイゼンハワー大統領との首脳会談を控えていたチャーチルは側近に箝口令をひき、マスコミにインフルエンザと発表させます。それを知ったエリザベスは、「首相が病気の事実を君主である自分に隠しているのは憲法違反」と憤りますが、さて、それをどうしたものか?と思案した時に、教授が言った一言が痛快です。

 

  あなたは幼少の頃より英国憲法を叩きこまれた。

彼らを呼びつけて子どものように叱りつけてやればよいのです。

上流階級の子弟は乳母に叱られるのが好きなんですから。

 

えーー❔そーなの❗❔知らなかったなぁ、英国のいいとこぼっちゃんがみんなMだったなんて。んじゃ、ベネさまもトムヒもエディもM❗❓そっかー、だからヘンリー王子もメーガンにアタマ上がらないのか。

(…ち、違う❔😅)

 

  このエピソード、エリザベスが「英国君主たるもの、数学や科学は知らずとも、国の基礎、大英帝国憲法の代弁者であるべし」という真実に目覚め、女王としての自信と威厳を取り戻していくプロセスは胸にグッときますねぇ…😢

 

 

 シーズン1のラストでは、チャーチルの引退直前のエピソードも。80才の誕生日を記念して、前衛的な現代画家グラハム・サザーランドがチャーチル肖像画を描くことになります。チャーチルも画才があり、画集も出していることから、お互いの芸術を批評し合うことにより、また、偶然にも子どもを幼い頃に亡くすという共通体験から、次第に心を通わせていくチャーチルとサザーランド。しかし、祝賀式典で初めて自分の自画像を見たチャーチルは激昂。そこに描かれていたのは、かつてヒットラーに打ち勝ち、英国民を勝利に導いた英雄ではなく、気難しげにこちらを睨み据える、一人の老人の姿だったからです。

 

  自宅の家のほとり、怒りに駆られて肖像画に火を付けよと命じるチャーチル。(サザーランド作のチャーチル肖像画は、のちに「失われた傑作」と呼ばれるように)しかし、彼は知っていた。現実から目を背けているのは自分自身だと。サザーランドが発した言葉…「老いとは残酷なものです」は、真実をついていると。しかし、自身の肖像画を見て事実を受け入れ、潔く引退を決意するチャーチルはやはり史上稀に見る傑物だと、ヲタクは思います。首相官邸での晩餐会で、エリザベス女王の「これからどれだけ優れた首相が誕生しようと、私にとって最初の首相という称号はあなただけのもの」というスピーチを聞いて、感激の涙を流すチャーチルの姿は胸に迫るものがあります。エリザベス女王は後年チャーチルが90才で亡くなった時、英国君主は臣下の葬儀には出席しないという慣習を破り、セントポール大寺院での葬儀に参列しています。

 

  また、エピソード1で興味深かったのが、「女王のお金儲け」(笑)英国をはじめとしてヨーロッパ王室と日本の皇室の決定的な違いは、ヨーロッパでは王族も個人の資産を持ち、自ら資産運用していること。『ザ・クラウン』でも、馬主であるエリザベス女王、持ち馬がレースで優勝し、アメリカからレースに招待されるんですが、レースに出るのと早めに引退させて種馬として稼ぐのと、どっちが儲かるか…と一生懸命思案している場面が登場します。でもって、結局女王の馬は種馬生活に入り、ドラマでは馬の交尾場面もバッチリ描かれていて😅それを食い入るように見ているエリザベス女王とフィリップ殿下。

 

いやー、かなりエグいわ『ザ・クラウン』❗


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これぞフランス式❗?ライトなミステリー~『バルタザール 法医学者捜査ファイル』


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(Paris from Pixabay)

一口にミステリー…って言っても、お国柄でこうも違うのかと思うと、ビックリです。ヲタクは基本、北欧や英国、東欧等のミステリードラマを好んで見るのですが、仕事で疲れて帰ってきた後とかは、さすがにどんより垂れ籠めた低い雲や霧、犯罪の裏に潜む辛すぎる人生の現実…等々に、さすがにチャンネルを回す気になれないこともある。

 

  そんな時はコレ❗

いかにもフランス的、ライトなミステリー『バルタザール 法医学者の捜査ファイル』。頭脳はキレッキレ、カラダはアポロンみたいな彫刻美(しかも本人、それをじゅうぶんわかっていてすぐ脱ぎたがる=笑)、料理が得意なイケメン法医学者、バルタザール(トメル・シスレー)が、得意の医学知識を駆使して、殺人事件の解決に一役買う…という物語。個人主義で自由で、人生楽しむことを第一義とするフランス人。このドラマ、フランスでは30%近い視聴率を叩き出したそうですが、法医学という学問が心底好きで、重々しい義務感ではなく、嬉々として仕事に取り組むバルタザールの生き方が、フランス人の共感を呼ぶんでしょうね😊どんなに捜査がたてこんでいてもしっかり美味しいモノ食べてるとことか。また甘いもの好きで、彼の好きなタルトタタンとかマカロンとかめちゃくちゃ美味しそうで、お腹がすいている時は見ないほうがいいかも(笑)コネタですが、バルタザールが好きなお酒が日本のウィスキー(「至高のウィスキーだ❗」なんて言ってる😅)、その名も調和(笑)ラベルは誰か手書きで書いたらしく、ちょっと笑えます。グルメな彼、フグ料理についてひとくさり語る場面があって(あちらでは、フグはそのままFuguなのね)、浮世絵の昔から、フランスにおけるジャポニズムは健在だな…と思います😊

 

  バルタザールのバディ、フランス人には珍しく超カタブツ(…ドラマの中ではそう評されているけど、日本人から見ると単にマジメで仕事熱心なだけのように見えます😅)で、めったに笑わないと評判のバック警部。このバックさん、角度によってはかの有名なフランスの名女優、ジャンヌ・モロー(『死刑台のエレベーター』『危険な関係など』)にそっくりなんだよな~。肉体美自慢のバルタザール、バック警部の前でやたら脱ぎ出すんだけど、バック警部、にこりともせず「いつまで裸なの」と一刀両断、そんなSっぽいところがツボ(笑)かと思えばなかなか手がかりが掴めず、「バルタザール、あなただけが頼りよ」と思わず口走ってしまい、「え?もいっかい聞きたいな」って突っ込まれ、慌てるバック警部。二人の掛け合いがなんとも楽しいんです🎵バック警部を演じているエレーヌ・ド・フジュロルさん、なんと御年48才❗10才は若く見えるわ~👀ジュリエット・ビノシュにしろ、フランスの女優さんってエイジレスですよねぇ。中年女性の星❗

 

  法医学モノだけあって、ストーリーはライトな展開だけど、解剖場面はかなりリアルなんで、気の弱い人はご用心😅

 

U-NEXTでエピソード3まで配信中です。


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ひと夜限りの総合芸術❗~『宮本浩次 縦横無尽』オンライン

  宮本浩次さんのお誕生日ライブ~~🎉✨😆✨🎊かえすがえすもめでたやな。うちの孫も6月生まれ、宮本さんみたいにピュアでやんちゃでカッコよくて素敵な大人に育ってほしい…

 

  なーーんてつらつら考えてたら、コンサートの開幕時間❗(ドキドキ)

 

 

  暗闇の中、ゆらゆら揺れるランタンの光。その持ち主が宮本さんであることがわかると、背景は朝焼けに染まり始め、『夜明けのうた』。舞台に屹立するギリシャ風の円柱。蒼い山並みを飛行する壮大な映像をバックに『異邦人』。まるで一篇の映画のようなオープニング。私たちは瞬く間に「縦横無尽」ワールドに引き込まれていきます。

 

その後のセットリストは…

解き放て、我らが新時代

going my way

きみに会いたい -Dance with you-

二人でお酒を

化粧

ジョニィへの伝言

あなた

Shining

獣ゆく細道

ロマンス

Do you remember?

冬の花

悲しみの果て

P.S.I love you

passion

明日以外全て燃やせ

ガストロンジャー

今宵の月のように

あなたのやさしさを俺は何に例えよう

昇る太陽

ハレルヤ

Sha・la・la・la

 

  こうやって改めて書いてみると、今更ながらに、曲の多彩さに驚くばかり。やっぱり宮本浩次は天才だね❗特に天才の熱き情念を激しく歌い上げる『獣ゆく細道』から一転してプラトニックラブ『ロマンス』、『ガストロンジャー』革命から『今宵の月のように』の私小説的内省、『Do you remember?』(名画『宮本から君へ』の主題歌)の熱唱から日本的情緒の王道歌謡『冬の花』への変転。時も空間も思想もジェンダーも飛び越えた、まさに縦横無尽な二時間。

 

  舞台演出は、これまで『獣ゆく細道』『冬の花』『going my way』『異邦人』、そして最新作の『Sha・la・la・la』で

「ロマンチックで強靭で、そしてやさしさにあふれた世界観で見る者の度肝を抜いた」(宮本さん談)

希代の天才映像作家、児玉裕一氏。ひたすら至高の音だけを修行僧のように極めていくエレカシライブとは全く異なるアプローチ、視覚と聴覚の両方を強烈に刺激する、華麗で斬新な、まさに総合芸術の宵❗

 

日本文化を継承していく上で 音楽業界が抱える重要課題。

そのうちの一つに、宮本浩次氏という銘楽器をいかに伝えてゆくべきかというものがあります。

という超名言をのたもうたのは、かの椎名林檎女史(今回の舞台演出家、児玉裕一氏とはパートナー関係。フランス風ね、ステキ😍)。まさに彼女の言を体現してみせたのが、今夜の『きみに会いたい』。小林武史の軽快なピアノと、日本の誇る「銘楽器」宮本浩次の超絶セッション❗…そして、ピアノと宮本さんが交互に写し出される斬新な映像。

 

  最近の宮本さんはヲタクから見ると超セクシーなパフォーマー。『君に会いたい』はもちろんだけど、『冬の花』の演出で舞い落ちる真っ赤な薔薇の花びらが、はだけた胸元に滑り込んでいるのがチラ見えして、ザワザワしちゃって…(笑)まっ、ご本人はそんな気さらさらなくて、わざと2枚の花びらをバカボンみたいにほっぺたに張り付けてニコニコしてるんだけど😅無自覚な、イノセントな色気がいちばん始末に悪いのだよ。しっかし、宮本さんを「セクシー」だの「男の色気」だのと表現する日がよもや来ようとは(笑)

 

  ヲタク的には、今夜の『ジョニィへの伝言』の歌唱がすごく好き🎵

アルバム『ROMANCE』で宮本さんの歌唱を聞くまでは、愛する人と別れた踊り子が、「大丈夫。私だってまだ稼げるわ」と強がって、行き先のわからないバスにふらりと乗り込んで、またどこかに流れていく…という、哀愁漂う曲のイメージで捉えていたのだけれど、ひとたび宮本さんが歌うと、アメリカ西部の雄大な自然が眼前に広がり、まさに『ノマドランド』の世界を彷彿とさせた❗

 

  昨日もさんざん書いたけど、ラストで歌われた新曲『Sha・la・la・la』、『今夜の月のように』や『俺たちの明日』と同様、宮本さんのテーマ曲になりそうな名曲だなぁ…。いつか時が来たら、ペンライト振りながら大合唱したい😊そんな曲❤️

 

 今回共演のトップアーティストたち(玉田豊夢、名越由貴夫、キタダマキ)を手放しで絶賛する宮本さん。「いやぁ、かっこいいなー、ミュージシャンって😍」…って、じぶんもそうぢゃん(笑)そしてラストは盟友、小林武史さんとがっちり握手❗

 

  まだまだ応援の声は出せない、客席が静かなコンサート。だけど優しい宮本さんは「(声は聞こえなくてもみんなの)気迫は伝わって来るぜ❗」と…。気迫、って表現してくれるとこが、泣かせる😢「宮本、独歩。」のコンサートが軒並み中止になって、1年後のリベンジ。終わったあとの宮本さんは少年みたいな笑顔で、達成感と喜びに耀いていました😊

 

誕生日なのに、ご本人からたくさんの幸せと勇気を貰った夜🌃✨

 

英国の大河ドラマ❓~Netflix『ザ・クラウン』シーズン1-①


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(Buckingham Palace From Pixabay)

  前から気になってはいたけれど、最近やっと見始めたNetflixオリジナルドラマ『ザ・クラウン』。ご存知、グレートブリテン北アイルランド連合王国の現女王、エリザベス2世の物語です。

 

  物語の始まりは、エリザベス女王(クレア・フォイ)と夫君のフィリップ殿下の結婚式から。エリザベスの結婚の時、父君のジョージ6世は既に肺がんの末期。絶え間ない咳と喀血に悩まされています。ジョージ6世と言えばそう、兄上のエドワード8世がアメリカ人女性ウォレス・シンプソンと激しい不倫愛の末わずか1年足らずで退位した為、突如国王になったお方。生来の吃音を血の滲むような努力の末克服した経緯は、映画『英国王のスピーチ』で感動的に描かれましたね。(主演のコリン・ファースアカデミー賞主演男優賞受賞)また、第二次世界大戦では時の首相ウィンストン・チャーチルとの固い絆により、ナチスドイツに屈せず英国民を勝利に導いた名君としても知られています。(ゲイリー・オールドマンチャーチルを演じた『ウィンストン・チャーチルヒトラーから世界を救った男』参照)

 

  そんなノブレス・オブリージュのお手本を見て育ったエリザベスは、若くして女王としての責務を背負って生きる賢明な一人の女性として描かれています。父君が逝去された時、エリザベスは代行として、当時英国の植民地だったケニアを訪問していたんですね。通信状況の悪い1950年代のこと、彼女がラジオニュースの後で父君の死を知る場面は切ないです。


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  若き日のエリザベスを演じるのはクレア・フォイ。ヲタク、彼女の演技を初めて見たのは、映画『蜘蛛の巣を払う女』。ミステリー史上最も過激なヒロインと言われるリスベット・サランデルを、それこそ体当たりで演じていました。(第1作の『ドラゴン・タトゥーの女ルーニー・マーラから彼女が引き継いだわけです)『ザ・クラウン』の初登場シーンでは、とてもリスベットと同一人物だとは思えなかった…(゚A゚;)つくづく女優さんってスゴイ。

 

  何度も保守党党首再選を繰り返したチャーチルと、さまざまな事柄について虚々実々の駆け引きを繰り広げ、ついにはチャーチルをして「利口な女王だ」と彼に言わしめるエリザベスは爽快❗

 

  エリザベス女王とは真逆、美しく奔放で、王族よりもむしろ一人の女性として生きようとする妹君のマーガレット王女に、今注目のヴァネッサ・カービー(『私というパズル』で、本年度アカデミー賞主演女優賞にノミネート)。最近になって、インポスター症候群(自分の能力や実績を自分で認められない、自己不信の状態)に悩んでいることをカミングアウトした彼女。自由気ままに生きているように見えながら、どこか傷つきやすく繊細なマーガレット王女役にピッタリ。

 

  しかし、英国王室の裏側、こんなに忌憚なく描いちゃってイイの❗❓って感じなんですけど。まあ裏を返せば、それだけ国民に親しまれ、愛されてるってことなんだろうなぁ。エリザベス女王ご自身もこのドラマを楽しみにされているそうで…。その器の大きさ、素晴らしいわ。

 

  それにしても、1950年代には石炭や火力発電所の排出する有毒ガスのせいで、イギリスでも何万人もの人々が命を失ったという事実、初めて知った…😢我が国ではそれから20年ほど遅れて、光化学スモッグの被害が報じられることとなります。現代においても、地球温暖化を防ぐ為CO2削減が人類の課題となっているわけですが、ぜひ『ザ・クラウン』で、この1950年代のイギリスの苦しみを知ってほしい。歴史を知ることは未来を考えること。我々が今、子孫の為に何をなすべきか、考える1つのきっかけになると思います。

 

  さて、シーズン2では、そのマーガレット王女の夫で、ドロドロの愛憎関係を繰り広げるスノードン卿役に、推しのマシュー・グードがいよいよ登場❗

 

クズ男の役もきっとあの端正な美貌にピッタリね♥️楽しみすぎる❗

 

  

 

  

 

 

 

  

 

  

映画で世界旅行✈️👜④~イタリア編

『ベニスに死す』(1971年)

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(From Pixabay)

  19世紀末(…たぶん😅)のベニスを訪れた地位も名声もある富裕な老作曲家(ダーク・ボガート)。彼はそこで見かけたポーランド貴族の子息タジオ(ヴィヨルン・アンドレセン)の美しさに一目で心奪われます。老いて、後は醜く衰えていくばかりの自分と、瑞々しい美の絶頂にあるタジオ。美は芸術家の叡知や努力によってこそ造り上げられると自負していた彼の持論を粉々に打ち砕くかのような、自然が、神が造りたもうたタジオの美しさ。その日から彼は、美少年の姿を追い求めて、陽光溢れる砂浜やベニスの街角を彷徨い歩くのです。

 

  折しもベニスの街には、黒死病たるペストがじわじわと流行り始めていました…。


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  舞台となるベニスのホテルの装飾や小さな調度品一つ一つに至るまで本物にこだわった、イタリアの名匠ルキノ・ヴィスコンティ後期の傑作。朝焼けの中水上を滑るように進む蒸気船が、ゆっくりとサルーテ聖堂に近づいていく冒頭のシーンからすでに、ヴィスコンティ独自の美の世界が展開します。

 

  初めてこの作品に触れた時はヲタクもまだタジオと同じくらいの年齢だったので、タジオを演じたヴィヨルン・アンドレセンの神々しいまでの美しさにぽーっとなるばかりで、主人公の気持ちなんてちっともわからなかったけど、今回ブログで取り上げるにあたり、このトシになって見直した時には、もうね…。生命と若さに溢れた美少年を見つめる主人公の餓えたような眼差しと、一方では、病にかかった顔色の悪さを白粉と紅でごまかし、髪の毛を黒く染める哀れさ、滑稽さが胸に迫って苦しかった😅

 

  歴史を刻むベニスの街角、全編を通して鳴り響くグスタフ・マーラー交響曲第5番の荘厳な調べ。

生と死、若さと老い、光と翳の普遍的なテーマ。

画面の隅々にまでこだわり抜いた、後世語り継がれるべき名作。

  
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(From Pixabay)

トスカーナの休日』(2003年)

   サンフランシスコに住むアメリカ人売れっ子作家フランシス(ダイアン・レイン)。ふとしたことから夫の不倫を知り、それからは長い長い泥沼の離婚騒動。傷心の彼女は親友から旅に出ることを勧められ、トスカーナを旅することになります。旅先で古い一軒家が売りに出ているのを見て、衝動的に買い取ってしまいますが…。


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  サンフランシスコなんて便利な近代都市から移住してきたフランシスは、あちらこちらにガタが来ている古い家に戸惑いながらも、カナヅチ持ってリフォームに孤軍奮闘。これ、ヨーロッパの田舎ではあるあるで、ヲタクがベルギーの田舎町に住んでいた時には、日曜日になると近所の空き地に親族らしき人たちが集まって基礎を作り、レンガを積み上げて家を手作りしてたのを見て驚きましたもん👀家のどこかが壊れても大家さんはなかなか対応してくれないし、業者を呼んでも1週間くらい音沙汰ないんで、いきおい、何でも自分たちでDIYするようになっちゃうんですよねぇ。

 

 フランシス、新たな恋が始まるかと思いきや、またまた苦い結末に…。それでも、彼女に生きる喜びを再び与えてくれたのは、トスカーナの人々の温かい人情と家のリフォームを手伝ってくれたワケありポーランド移民の職人たち、そして美しい自然、美味しいワインと食べ物でした😊

  これはもう、すぐにでも荷造りしてイタリア行きの飛行機に乗っちゃいたいキモチになる映画❗

…って今はムリだけど、いつか必ず♥️

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(From Pixabay)

『胸騒ぎのシチリア』(2015年)

 この邦題、まるで風光明媚なシチリアを舞台にしたロマコメかと思いきや、ぜんぜん違います(笑)原題は『A Bigger Splash(大きな水しぶき)』シチリアのパンテッレリーアという火山島を舞台にした、恋愛心理サスペンスとでも言いましょうか。

 

  声帯手術をして、今は声を失った状態のロック・シンガー、マリアン(ティルダ・スウィントン)は親子ほども年の違う若い恋人ポール(マティアス・スーナールツ)とパンテッレリーア島のヴィラで静かに暮らしていました。そこに、元恋人で音楽プロデューサーのハリー(レイフ・ファインズ)が、離婚した妻との間にできた娘ペネロペ(ダコタ・ジョンソン)を連れて強引に乗り込んで来ます。大量の食材を勝手に注文したり、女友達を連れ込んだり、傍若無人に振る舞うハリー。そして、ペネロペ(愛称ペン)もどこか謎めいてエキセントリック。それぞれ秘密を抱える四人の間には張りつめた緊張感が漂い、マリアンとポールは次第に精神の均衡を失っていきます。

そしてある日、思いもよらぬ恐ろしい出来事が…。

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 ロケ地となったパンテッレリーアは ほとんど観光地化されておらず、 手付かずの荒々しい自然が残る世界遺産の島。シチリア出身のルカ・グァダニーノ監督(『君の名前で僕を呼んで』『サスペリア』)は、 この島を舞台に選んだ理由として、「ありふれたリゾート地や別荘ではなく、 他人同士であることの危険な感覚や、 登場人物の衝突をもう一段階進めるような、 生まれ持った危機感や本能が剥き出しになるような場所が必要だったから」と語っています。

 

  「登場人物の心理がわかりにくい」とか、「展開が遅い」とか言われて、見る側の好き嫌いがかなり分かれるグァダニーノ監督ですが😅たとえ登場人物の心理が深く洞察できなくても、世界遺産の島の素晴らしい自然(見たところ、ベニスやトスカーナと違って観光ホテルもなさそうだから、これは映画で見るしかない😅)や、ギリシャ彫刻のような長身のヒロイン、ティルダ・スウィントンが身にまとうDiorのゴージャスな衣装を見るだけでもウットリです。ハリーが作る魚の塩釜焼きや、島独特の製法で作られるリコッタチーズもめちゃくちゃ美味しそうだし。

 

…そんな映画の楽しみ方があってもいいんじゃないでしょうか😉

 

 

 

 

トム・ヒューズが切なすぎ😭~『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ 2』前編


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つい先日『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ』第1シーズン見てコーフンしたヲタク、さんざんブログで騒いだんですが、その熱気も冷めやらぬうち、ふと気づいてみたら

な、なんと❗シーズン2「魔女の契り」が配信されてるぢゃないかぁぁぁ~~❗

しかもU-NEXT独占配信ですと❓やるな、U-NEXT(⬅️何様…😅)

 

  第1シーズンのラスト、二人の命を狙うコングレガシオンの追っ手からタイムウォークしたヴァンパイア・マシュー(マシュー・グード)とダイアナ(テリーサ・パーマー)。二人が降り立った先は、なんと1590年の英国エリザベス朝のロンドン❗魔術に目覚めたものの自らの力をまだコントロールできないダイアナは、慣れない大昔のロンドンで魔術をマスターしなければならず、その一方ではクリーチャーの種の起源を記した「アシュモール782(生命の本)」を探し出さなければならない焦りを感じます。そして現代のオックスフォードであんなに優しかったマシューは、何やら謎めいた行動が多く…😢

 

  しかも、彼らに協力をしてくれると期待していた親友のキットことクリストファー・マーロウ(トム・ヒューズ)は、出逢った最初からダイアナに敵意剥き出し😅第1話のラストでその理由が明かされますが、その時の、トムくんの、うっすらと涙を滲ませた切ない表情がもう…絶品です❗ダイアナに向かって、「マシューが君を愛していることは一目でわかった。彼の長い年月が君と出会うためのものだったと思わせるほどに」と呟く彼。秘めた孤独感、哀しさ、心の闇の部分を表現する時、特にこの人は圧倒的な魅力を発散すると改めて思いました。

 

  またね、マシュー・グードの人外的な冷酷さがゾクゾクするほど魅力的。キットが意識的に、ダイアナが魔女であるという噂を流したと知り、キットを問い詰める時のマシューが…#¥-/@☆?[「またね、問い詰められる側のキットの心情も、考えると切ないんだわ…。

 

  キット(シェイクスピアの先駆者とも言える劇作家のクリストファー・マーロウ)をはじめとして、ウォルター・ローリー卿(エリザベス1世の愛人と噂された)なども登場してきて、英国史好きとしては楽しいです😊史実でも、キットとウォルター・ローリーは無政府的な過激思想で知られていた「夜の学派」に属しており、シーズン2ではマシューもまたその仲間…という設定になっています。

 

  (さあ、一気見だッ❗)って意気込んでたけど、よくよく見たら、配信されてるのは第1話だけだった…😅まっ、いいわ。

 

お楽しみは、これからだ (笑)

 

★この記事を読んで、ステキな俳優トム・ヒューズに興味を持たれた方は、題名の下の「トム・ヒューズ」をクリックして頂くとマイク関連の他の記事も読めますので、よかったら‥‥。

 

 

ジャック & シアーシャ、セント・キルダの無人島旅♥️

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ジャクロくんのインスタに、セント・キルダ※の、素晴らしく雄大な自然の数々❗

セント・キルダスコットランドの北西に位置するセント・キルダ諸島は、「地の果て」とも言われるユネスコ世界遺産。グレート・ブリテンで最も高い断崖絶壁があり、手付かずの荒涼たる自然が残っていることで有名。

 

  ジャクロくんはよほど今回の旅に感動したらしく、珍しく長文のコメントを載せています。

 

僕たちは(はいっ、もちろんジャックとシアーシャ、ふたりのことね😉)昨日特別な場所を訪れた。離島中の離島、セント・キルダ。1930年、島の住人たちはとうとう現代社会に屈し、避難を求められ、涙ながらに島を離れた。(第一次世界大戦が激しくなったためです)西スカイ島(スコットランドの自然溢れる有名な観光地)から船で三時間半。National Trust for Scotlandが管理する世界遺産。ウィリー船長と乗組員のみんな、荒波を越えて僕たちを連れて行ってくれて、ありがとう❗素晴らしい眺望が見たければぜひ行ってみて❗海風で顔はしょっぱくなっちゃうけど。

 

最後は、いつもの彼一流のユーモアで締めてくれました(笑)

 

 ジャクロくんの写真の中のシアーシャは、いつものように後ろ姿のみ😅黒いジャージの上下にバックパック。この写真だけ見たら、どこかの登山好きな大学生みたい(笑)レッドカーペットでヴァレンチノバーバリー、ランバン等ハイブランドの煌びやかなドレスに身を包み、華やかな笑顔を振りまくシアーシャからはとても想像もつかない地味な雰囲気です。当代きってのモテ男、パリピ中のパリピのあのティモシー・シャラメが迫ってもなびかなかったシアーシャですが、彼女の本質は、ジャクロくんの写真に度々登場する、大都会の灯りよりも自然の風を愛する素朴な少女なのかもしれません。

シアーシャが赤いほっぺで、潮でベタベタな顔になってるなんて…❗( ゚Д゚)


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(St. Kilda)


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(Skye from Pixabay)

…って、ブログ書いてたら、ジャクロくんまた写真upしてる~❗セント・キルダからスカイ島に戻ったんだね。

綺麗な夕焼けだなぁ…。

今回の旅の写真のほかにも、ジャクロくんのインスタには、美しく雄大な自然の写真がいっぱい❗ぜひ覗いて癒されてみて下さい😊

 

https://www.instagram.com/p/CPaejt0BtT9/?utm_medium=copy_link

歴史上のイケメン列伝②~アラビアのロレンス

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(From Pixabay)

 デヴィッド・リーン監督の往年の名作、映画『アラビアのロレンス』(1962年)。中学生の頃、初めて見て以来砂漠の雄大な景色と主人公ロレンスの複雑怪奇な人間性、当時のアラビア半島における欧州列強の勢力地図に強烈に惹かれ、映画を繰り返し見ると共に、さまざまな文献を読んではますます『アラビアのロレンスの世界』にのめり込むことになったのです。

 

  アラビアのロレンスことトマス・エドワード・ロレンスは、オックスフォード大学で考古学を学び、第一次世界大戦で従軍、カイロの陸軍情報部で軍用地図の作成に携わります。映画ではカイロ時代の彼(演・ピーター・オトゥール)の、どこかコミュ障ぎみで周囲から煙たがられており、マッチを点けては手で揉み消すというクセが、のちのち相次ぐ戦乱で肥大していく彼のマゾヒズムの萌芽を感じさせ、一瞬の動作でその人物の心理を描いて見せる、ロバート・ボルト脚本&リーン監督のゴールデンコンビの巧みな職人芸を感じさせます。  

 

  当時のアラビア半島オスマン・トルコ帝国の支配下にあり、さらにアラビア民族はハリトやハウェイタットをはじめとして多数の部族に分裂、領土や水源を巡って互いに紛争を繰り返している状況でした。

 

  ロレンスはおそらく様々な部族を統一して「アラビア」という概念を現実化してみせようとした最初の人物でしょう。彼は当時、アラブ独立戦争でリーダーであったマッカのシャリフ、ファイサル王子(映画では英国の名優、サー・アレック・ギネスが演じています)と親交を結び、互いに争っている部族の同盟軍を編成して、トルコ軍の要塞アカバに対し、「死の溶接炉」と呼ばれ、一度入ったら生きて帰れないと言われた灼熱のネフュー砂漠(Nefud Dessert…下の地図参照)を縦断して奇襲をかける作戦を考え出します。(源義経のひよどり越えとアイデアは同じですよね😅)「アカバのトルコ軍の大砲は海に向かって固定されている。まさかネフュー砂漠から敵が襲ってくるとは考えてはいまい。私は奇跡を起こしてみせる」と断言するロレンスに、「クレイジーだ」と反発しながらも、その決断力と強靭な意思、カリスマ性に次第に惹かれていくハリト族の長アリ(演・オマー・シャリフ)。

 

  アカバ攻略を果たし、アラブ人たちから神聖な白いアラブの民族衣装を贈られたロレンス。真っ白な衣装を風に翻し、陶酔の表情を浮かべながら列車の屋根の上、跳ねるようにダンスして、アメリカ人記者のカメラに笑いかけるロレンスの強烈なナルシシズム

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(From Pixabay)

  しかしロレンスの栄光は、アカバ攻略を頂点にして次第に翳りを見せ始めます。トルコ軍の物流を絶つ為に、ダイナマイトで次々と鉄道を爆破するというゲリラ作戦を繰り返すロレンスたち。(ロレンスのゲリラ戦法は、後年ベトナム戦争において、ベトコンたちに戦いのヒントを与えたと言われています)しかし長距離移動を強いられる作戦の間にアラブ人の戦士たちは次第に疲弊し、ロレンスは可愛がっていたお付きの少年二人をも失うことになります。

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  そしてロレンスは、戦いの中で、自分たちの利益の為に略奪と殺戮を繰り返すアラブ人たちの姿を目の当たりにし、彼らのうち大多数には「アラブ独立」というひとつの概念、理想を植え付けるのは未だ無理なのだ…と、絶望的な結論を下すに至ります。また、ロレンスたちが命がけで戦っている間、サイクスピコ条約に代表されるように、欧州列強は第一次世界大戦後に旧オスマン帝国アラビア半島をどのように分割統治するか、秘密裏に交渉を進めていたのです。


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(ロレンスの自伝『知恵の七柱~Seven Pまillars of Wisdom』に掲載された写真)

  そして、ロレンスにとって運命の日がやって来ます。トルコ領ダルアの占領作戦の為、現地人に化けて偵察に出かけたロレンスは、同性愛者の司令官に捕らえられ、情交を迫る彼を拒否した為に、一晩中鞭打ちの刑を受けることになります。金髪碧眼、白い肌のロレンスに欲望を滾らせるトルコ人司令官に、アカデミー賞俳優(『シラノ・ド・ベルジュラック』)であり監督でもあったホセ・ファーラー。わずか10分ほどの登場なんですが、その存在感に圧倒されます。


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  ヲタクは前にも述べたように、映画を見てトマス・エドワード・ロレンスその人自身に興味を持ち、「アラビアのロレンス」(中野好夫著/岩波新書)、彼の自伝「Seven Pillars of Wisdom」を読みましたが、自伝の中で彼は、この一夜について微に入り細に入り、しかも淡々と記述しているんですね。かえってこう……微かな狂気さえ感じる文章でした。

 

  この一夜を境にして、ロレンスの人格はどこか、崩壊してしまったようです。それと同時に、戦いにおいて、大義よりも殺戮を繰り返すことに次第に快感を覚えていくロレンス。ダマスカス進軍の途中、ある村で大量殺戮を行ってきたトルコ軍と遭遇したロレンスは、「Enough. Stop.(もう十分だ。やめろ)」というアリの制止も聞かず、狂ったように銃を振り回し、「No Prisoners!(捕虜など許さぬ。皆殺しにせよ)」と叫び続け、以前はあれほど忌み嫌っていたジェノサイドの罠に、自ら陥っていくのでした。

 

  度重なる戦いによって徐々に引き出される自らの残虐性に戦慄し、アラブ独立という大義が、当事者であるアラブ人たちには理解されず、他でもないロレンス自身もまた、イギリスやフランス、ロシアの帝国列強に利用される一つの駒にしかすぎないことを知った時の彼の底知れぬ絶望感。

 

  全ての夢破れ、アラビアの民族衣装を脱いで英国陸軍の軍服に着替え、軍用トラックに揺られてダマスカスを去るロレンスの瞳は、何も映してはいない。絶対的な虚無。彼の乗ったトラックをオートバイが追い抜いていく乾いた音。帰国後にオートバイ事故で46才の若さで世を去る彼の、まるで死の序曲のように…。

強烈な余韻の残るラストでした。

 

 作品賞をはじめ、アカデミー賞7部門を獲得した名作です。

 

余談ですが、ヲタクの推しジャック・ロウデンがゲームソフト「バトルフィールド1」でアラビアのロレンスを演じています。映画でロレンスを演じたアイルランド人俳優ピーター・オトゥールはダークヘアを金髪に染めていましたが、ジャクロくんは元々金髪碧眼なので、イメージぴったり😍誰かリメイクしてくれないかな~🎵


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映画で世界旅行✈️👜③~『LIFE❗』グリーンランド~アイスランド~ヒマラヤ山脈

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(Greenland from Pixabay)

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  世界を見よう、危険でも立ち向かおう

それが人生の目的だから

…をスローガンに掲げるアメリカの写真雑誌『LIFE』。そこで16年間にわたりネガの管理者としてコツコツ働いてきたウォルター(ベン・スティラー)。より高いポジション、より多いサラリーを求めて企業を渡り歩き、ステップアップが是とされるアメリカで、こんな長い間同じ企業に勤めるって珍しいケース😅

 

  ウォルターはいつでもどこでも妄想モードに突入しちゃうので、周囲から小バカにされてるオタクくん(キモチわかるわ…。もちろんウォルターのほう 笑)自己完結の妄想癖は大いに理解できるのですが、なぜか彼、マッチングサイトに登録していて、同じ職場で毎日顔合わせてるシェリル(クリステン・ウィグ)に、匿名で交際を申し込んでる(…そこまでいくと、さすがにこの人大丈夫かな?と思う😅) そんな彼だけど、誠実で責任感の強い仕事ぶりから、『LIFE』随一のカリスマ写真家オコンネル(ショーン・ペン)からの信頼は絶大で、「今まで長年ありがとう」と、記念のお財布をプレゼントされるほど。

 

  ところが彼の日常は、『LIFE』誌がデジタル化の波に押されてオンライン化され、ついに廃刊の運びになったことで一変することに。オコンネルが撮影した、最終刊に使う表紙のネガNo.25をすぐに持ってくるよう会議で上司に命じられたウォルター、保管庫を開けてたちまち真っ青に。なんと、No.25のネガだけがなくなっていたのです❗

 

    いったいネガはどこに行ったのでしょうか?

 

オコンネルがネガを送るのを忘れて持ち歩いているのだと考えたウォルターは、オコンネルを追いかけようと思い立ちます。携帯も持ち歩かない超アナログ派のオコンネルの居場所を突き止めるには、直近に彼が撮影した写真から、今いる場所を類推するしかない。こうして、グリーンランドアイスランドヒマラヤ山脈と、ウォルターの世界縦断、壮大なアドベンチャーが始まるのです。


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(Iceland from Pixabay)

 

とにかく、次々と画面に現れる雄大な自然が素晴らしい❗ 

 

  グリーンランドから大酒飲みのパイロット(ドラマ『トラップ~凍える死体』やファンタビのアイスランド人俳優オラフル・ダッリ・オラフソン。出番はちょっぴりだけどスゴイ存在感)のヘリに同乗し、ヘリから下を航行するアイスランド行きの船にまっ逆さまに飛び降りたり(もちろん北海の厳寒の海に落ちてしまい、サメに追いかけられる😅)、アイスランドでは火山の爆発に遭遇したり……とアクション要素も満載🎵いつも妄想モードなオタクくんなので身体能力はさほどないのかと思いきや、スケボーがめちゃめちゃ得意なウォルター、大自然の中をスケボーで大疾走でビックリ(笑)

 

  ウォルターがヘリから船に飛び降りる時に、デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」(宇宙に飛び立つトム少佐と管制塔の会話を歌った歌)が流れてヲタクのテンション爆上がり🎵遡って、グリーンランドの酒場、ウォルターがヘリに乗るのを迷っている時(何しろオラフソンのパイロットが酔っ払ってベロベロだからね 笑)妄想の中で😅シェリルが彼を励ます為に歌ってくれたのもこの歌です。

Ground Control to Major Tom
「管制塔よりトム少佐へ」

Ground Control to Major Tom
「管制塔よりトム少佐へ」

Take your protein pills and put your helmet on
プロテイン服用後、ヘルメットを装着されたし」

 

  果たしてウォルターはオコンネルに会うことができるのか?そしてネガNo.5はどこに?


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(Himalayas from Pixabay)

 雄大大自然に目を奪われ、ウォルターの大冒険にハラハラドキドキ、そして ラストのオチに気持ちがほっこり。往年の大女優シャーリー・マクレーンが、何をやっても上手くいかない、誠実だけど不器用な息子をいつも温かく見守り、ピンポイントでベストなアドバイスをくれるステキなママを演じてサスガです。

 

  コロナ禍の昨今、ウォルターみたいに大冒険には出かけてはいけないけれど、その気になってデジタル技術を駆使すればいくらでも、LIFEの精神でもある「世界を見る」ことはできる❗

 

  さまざまな勇気をくれる映画😊

  

 

 

  

ウィンザーノットにまつわる『シングルマン』と007ジェームズ・ボンドのお話

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(ジョージの住む家。隅々にまでトム・フォードの美学に貫かれている)

高名な ファッション・デザイナーであるトム・フォードが初めて監督を務めた映画『シングルマン』がなんと1400円で購入できるとか❗いやはや、良い時代になりました。もちろん、映画館で見るのがベストなことは言うまでもないけれど、コロナ禍でおうち時間が長くなっている昨今、映画のチケットと同額で名作が家で(しかも何度も❗)楽しめるのはこの上ないシアワセ(*´∀`*)

 

 『シングルマン』。1960年代、キューバ危機下のアメリカ、ロサンゼルス。現地の大学で教鞭をとる英国出身のジョージ(コリン・ファース)は、8ヶ月前の交通事故で、同棲していた恋人ジム(マシュー・グード)を突然亡くし、生きる希望を失っていました。その当時の英国と言えば、同性愛を犯罪とする法律が廃止されたのがようやく、1967年のこと。まだまだ激しい差別があった時代。彼はきっと、ジムとの愛の為に、自由を求めてアメリカに移住したのかもしれませんね。映画の中では何も語られてはいませんけれども。

 

  アメリカに移り住んだとはいえ、同性愛者に対する明らかな差別がアメリカにおいても厳然と存在することは、隣に住む少女との会話の中からもわかります。(少女は無邪気に、父親がジョージのことを「オカマ」と陰口を叩いていることを本人の前で暴露してしまう)だからこそ、ジムとの愛の生活だけが、彼の生きる全てだった。ジムは英国に里帰り中に亡くなった為に、ジョージは死に目に会えなかったんですね。それどころか、彼らの秘めた関係を受け入れられないジムの親族から、葬儀に出席することさえ拒否されてしまいます。ジムを失った今、もはや人生は彩りと光を失った。自ら命を経つことを決意した彼は、遺書を書き始めます。

 

(死装束の)ネクタイはウィンザーノットで

 

死を目前にして、彼の心には望郷の念が沸々と湧いてきたに違いありません。しかし彼の祖国である英国は、マイノリティである彼を受け入れてはくれなかった。それでもなお、極めて英国的なネクタイの結び方にこだわる彼が哀しい…。

 

  ゲイであることをカミングアウトしているトム・フォードの視点から描かれる男たちの美しさときたら、目映いばかり。この映画でヴェネチア映画祭主演男優賞を受賞した、ジョージ役コリン・ファースの端正な魅力、彼が命を賭けて愛したジム役マシュー・グードの、溌剌とした中に潜む小悪魔的な可愛さ。(ジョージがカフカを読んでいる側で、「何読んでるの?」と聞かれたジムがいたずらっ子みたいに「ティファニーで朝食を」を見せる、その時のマシュー・グードの表情がめちゃめちゃ好き😍)そして、ジョージに憧憬を抱き、透明なペールブルーの瞳で真っ直ぐな気持ちをぶつけてくる大学生ケニー役にニコラス・ホルト。最近は『女王陛下のお気に入り』や『The Great /エカチェリーナ時々真実の物語』のクズ貴族 or王様役、『エジソンズゲーム』の変人科学者など、ヒネた役の多い彼ですが、この作品のピュアで清冽な青年がステキすぎる。たまにはこんなニコラスが見たいわ(笑)

 

  ウィンザーノットとは、ウィンザーエドワード8世が初めて結んだからそう呼ばれるようになった…という俗説がありますが、エドワード8世といえば、離婚歴のあるアメリカ人女性、シンプソン夫人との結婚の為にわずか1年足らずで国王を退位したエピソードで有名。(いわゆる「王冠を賭ける恋」ってやつですね。ロマンチックなネーミングとはうらはらに、実情はかなりドロドロしてたみたいですが😅)エドワード8世が退位した為に突如として即位することになったのが弟のジョージ6世で、コリン・ファースは映画『英国王のスピーチ』でジョージ6世役を演じ、アカデミー主演男優賞を見事受賞しています。上のセリフも、コリン・ファースに対するトム・フォードのオマージュが込められているのかな❓…と思うのですが。(今作の役名もやっぱりジョージだし)…って、深読みしすぎかな😅


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  ウィンザーノットと言えば、忘れてはならないのが、007ジェームズ・ボンド。彼には、生粋の英国紳士『シングルマン』のジョージと違って、こんなセリフがあります。

ウィンザーノットにしているヤツは信用できない

(ウィンザーノットみたいに時間のかかる気取ったネクタイの結び方をするヤツは胡散臭いって意味らしいです😅)

 

  日本ではボンドと言えば「英国紳士の典型」というイメージで捉えられていますが、実はジェームズ・ボンド、父親はスコットランド人で母親はスイス人。MI6の中でも一匹狼で独断専行ぎみなのも、彼の出自や生育環境を考えると納得できますよね。ネクタイの結び方の他にも、紐付きの革靴はキライでスリッポンが好きだとか、原作のボンドは英国式のオーソドクシーを嫌う反逆児のイメージです。

 

  原作のイメージからすると、ヲタク的に歴代ボンドの中で一番しっくりくるのがやはりダニエル・クレイグかな…と思います。そう言えば、ダニエル・クレイグのボンドと言えば、トム・フォード


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プライベートでもお気に入りというサングラスは言うに及ばず、ダニエル・クレイグのボンドは、「慰めの報酬」(2008年公開)「スカイフォール」(12年)「スペクター」(15年)と、トム・フォードのファッションなしには語れません。ダニエル・クレイグが演じるボンドの最後の作品「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(NO TIME TO DIE)」でも、トム・フォードがファッションを担当しているそうです。(いつ公開されるのか未だに未知数ですが😅)

 

  …してみると、『シングルマン』のジョージの遺言も、気取らない反骨漢ボンドに引き比べて、アメリカに長年住みながら頑ななまでに英国スタイルを固持するジョージに対する、トム・フォードなりの、ちょっとした揶揄が読み取れない…わけでもない(笑)トム・フォード自身はアメリカ人ですからね。

 

  セリフひとつで無限に想像(…妄想❓😅)の翼を広げることができる…。

やっぱり映画って楽しいね❗(笑)

 

 

  

 

  

 

 

映画で世界旅行✈️👜②~『マクベス』2015年版 (スコットランド)

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  (Scotland from Pixabay)

  「おうち時間を楽しく~映画で世界の絶景を堪能する」第2回目は、シェイクスピア原作の『マクベス』、舞台はスコットランドです。

 

  『マクベス』はご存知の通りシェイクスピアの四代悲劇のうちの1つで、本来は舞台劇なんですが、映画で取り上げるからには、観客の私たちからすれば、映画独自のロケーションの美しさやスペクタクルが見たいなぁ…と思うわけでして。その点から見て、これまで何度も映画化、ドラマ化を繰り返してきた『マクベス』、中でもおススメは2015年版です。主役のマクベスをドイツ出身の俳優マイケル・ファスベンダー(ヲタクはミュヒャエル…っていうドイツ語読みのほうが好きなんですけどね😅)、レディ・マクベスをフランス人女優のマリオン・コティヤールシェイクスピアにイギリス人以外の俳優…?って思う方がいらっしゃるかもしれませんが、イングランド人の都会っ子シェイクスピアにとって、当時のスコットランドというのはまるで外国、迷信と呪術の蔓延る、どこか得体が知れなくて妖しい魅力を持った場所…といったイメージだったのではないでしょうか?…なので、いわゆるクイーンズイングリッシュを話さない俳優のキャスティングというのは、『マクベス』に限って言えば、ぴったりな気がします😊


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  スコットランド領主のマクベスは、野心家の妻に唆され、また荒野で偶然出逢った魔女たちの「あなたはいずれ王となるお方」という甘言に心奪われて慈悲深く人望の厚いダンカン王を暗殺、自らが王位につきます。王の暗殺を疑う親友のバンクォーや、自分に背いてダンカン王の長子・マルコムの元に走った臣下のマクダフの妻子を虐殺するも、そんな血塗られた王位が長く続くはずもありません。気丈な筈のマクベス夫人は良心の呵責に苛まれ、次第に狂乱に陥っていきます。マクベスに焼き殺されたマクダフの妻子の幻覚を見、虚ろな目で「手についた血が取れない」と身悶えるマクベス夫人ことマリオン・コティヤール。従来のマクベス夫人の毒々しいイメージとは真逆の、少女のようなコティヤールの風情に、(もしかして、男性を翻弄し、破滅へと導くファム・ファタールとはこんな人を言うのだろうか)と、ヲタク納得(笑)マクベスの横暴に、臣下たちの心も離れていく中、イングランド軍を味方につけたマルコム王子はついに決起。夫人を亡くして茫然自失のマクベスの居城に向かって、大軍が進軍し始めます……。

 

  マクベスにさまざまな予言を投げかけて彼を翻弄する三人の魔女。舞台では、大鍋囲んで

鍋のりをぐるぐる回れ。
腐った内臓を放り込め、
冷たい冷たい石の下
31日昼夜を分かず
眠っている間にたっぷりと
毒溜め込んだヒキガエル、お前を先に茹でてやる。

なんて強烈なセリフで、エグいイメージなんですが😅この映画の中では、スコットランドの冷たい空気に溶け込んだような、祖母・母・孫という妖精族のような存在として登場します。

 

  また、マクベスが自分の未来に絶望して呟くモノローグ(いわゆるトゥモロー・スピーチ)

明日も、明日も、また明日も、
とぼとぼと小刻みにその日その日の歩みを進め、
歴史の記述の最後の一言にたどり着く。
すべての昨日は、愚かな人間が土に還る。

これも、マクベス夫人の亡骸をかき抱いての絶望のセリフになっていて、マクベスが、たとえば同じシェイクスピアの造型したリチャード三世や『オセロ』のイアーゴーや『ジュリアス・シーザー』のキャシアス等の「絶対悪」ではなく、肥大した野心と傲慢さの中に、どこか脆さと弱さを秘めた人物として描かれています。

 

  低く垂れ籠める灰色の雲。

ハイランドの荒涼たる原野に吹き荒ぶ風。

地獄の業火を思わせるような炎と、暗黒の闇の素晴らしい対比。

 

映画でこそ表現できたシェイクスピア劇をぜひ😊


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(Scotland from Pixabay)

 

 

 

  

  

映画で世界旅行✈️👜①~ 『ライアンの娘』(アイルランド)

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(Ireland from Pixabay)

  今日は、「おうち時間を楽しく」の一環として、「おうちにいながらにして絶景を楽しめる映画」を特集してみました。街歩きではなく、大自然が美しい映画…ということで、第1回目はアイルランドの美しい自然を舞台にした『ライアンの娘』(1970年)

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(Ireland from Pixabay)

  「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」など、大自然を舞台にしたスケールの大きい作品を得意とした英国のデヴィッド・リーン監督の作品。

 

  舞台は1900年代初頭のアイルランド寒村。イギリスからの圧政と搾取に対し、アイルランド国内で独立運動が過熱し始めた頃。働き口もなかなか見つからず、鬱屈した気持ちを知的障害の老人(ジョン・ミルズ…この作品の演技で、アカデミー助演男優賞受賞)を苛めることで発散する村の若者たち。

 

  そんな社会背景の中で、古い因習を嫌う奔放な人妻ロージー(サラ・マイルズ)が年の離れた人格者の夫(ロバート・ミッチャム)との生活に飽きたらず、情熱の赴くままに愛したのは、彼女が住む寒村に赴任してきた英国人将校ランドルフ(クリストファー・ジョーンズ)でした。しかし彼女の恋は、誠実な夫を裏切る不倫であると同時に、村人たちにとっては憎むべき敵である英国人将校と情を通じるという、許すべからざる二重の裏切り。ランドルフと自分の間に未来はないとわかってはいても、止められない想い。

 

死を賭けた彼女の、危険な恋のゆくえは…❗❓


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  ロージーが日傘を手放し、その傘が風に煽られて青い海に落ちていく冒頭のシーンから、どこまでも永遠に続くような白浜の海岸線、紺碧の空に流れていく雲、目の眩むような断崖絶壁…と、次々とアイルランドの絶景が続きます。それを捉える流麗なカメラワークも素晴らしく、その年のアカデミー賞撮影賞を受賞しています。

 

  戦功を立てて本国では英雄視されながらも脚に深い傷を負い、振戦や幻覚等のPTSDに苛まれる、孤独な英国人将校ランドルフ役を、ジェームス・ディーンの再来と言われたクリストファー・ジョーンズが演じているんですが、もう軍服姿がイケメンすぎて…😍ロージーが倫理道徳に背き、命の危険も顧みず、彼との恋にのめり込んでいくのも…責められないわ😅光の射し込む森の奥、ラベンダーが咲き乱れる大自然の中で二人が結ばれるシーン、映画史上一二を争う美しさでしょう。


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  ハリウッドで、どちらかといえば大味なタフガイ役の多かったロバート・ミッチャムが、他の男に惹かれていく若い妻の心を知りながらもなお彼女を思いきれない中年男の、哀しみと諦観を見事に表現して秀逸。こんな深い演技のできる俳優さんだったんだな…って。

 

  ベルギーに住んでいた頃、夏休みにアイルランドを旅行した折、首都のダブリンではなく、わざわざ西部のコーク空港に飛びました。この映画がディングル半島で撮影されたと知り、ロケ地巡りをする為です。2週間の旅の間に、ロージーが傘を落とした断崖や無人島までは行けたんですけど、彼女がどこまでも続く長い長い海岸線を歩いて行く場面。とうとう最後まで特定できず😢…後から、アイルランドではデヴィッド・リーン監督のお目がねに叶う海岸線が見つからず、北アフリカで撮影されたと知りました😅


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モノクロ映画を語ろう❗③~俳優の美しさを際立たせるモノクロ作品

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(Morocco from Pixabay)

  再びモノクロ映画のお話です😅今日焦点を当ててみたいのは、モノクロ映画だからこそ際立つ、俳優さんたちの美しさについて。

 

  モノクロ映画って光と翳の二元的世界ですから、やはり顔立ちの彫りが深いほどくっきりはっきり美しく見えますよね。そして、女優さんの場合、むろん元々綺麗なんでしょうけど、 特に肌が美しく映ります。その観点から言って最高峰は、何と言っても『カサブランカ』のイングリッド・バーグマンでしょう。舞台は第二次世界大戦中のフランス領モロッコ。当時親ドイツ派に支配されていたカサブランカで、クラブ「カフェ・アメリカン」を経営するアメリカ人リック(ハンフリー・ボガード)の元に、昔パリで別れた恋人、イルサ(イングリッド・バーグマン)が偶然やって来ます。彼女はすでに、ドイツに対するレジスタンス運動のリーダー・ラズロの妻になっていました…。「カフェ・アメリカン」で、リックとの思い出の曲、「As Time Goes By~時の過ぎ行くまま」をピアニストにリクエストして、口ずさみながら涙を滲ませるバーグマンときたら❗絹のように光沢のある、内側から微かに発光しているような滑らかな肌。もはや「女神さまぁぁぁ~❗」と叫んで、その場にひれ伏したくなります(笑)

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 もうひとつ、バーグマンで印象的なモノクロ作品に『さよならをもう一度』があります。『カサブランカ』で26才のそれこそ美の絶頂期だったバーグマンは、20年の時を経て、分別のある中年の女性として登場します。舞台はパリ。装飾デザイナーとして自立している女性ポーラは離婚経験があり、同じ年頃のロジェ(イヴ・モンタン)とは、付かず離れずの「大人の関係」。そんな彼女の日常は、15才も年下のフィリップ(アンソニー・パーキンス)との出逢いによって大きく変わっていきます。ひたすら若い情熱をぶつけてくる年下の男性に戸惑いながらも、次第に惹かれていく女性の心理をバーグマンがきめ細やかに演じています。カラー作品だったらこの二人の関係性、ちょっと生々しい感じがしたと思うんですが、モノクロだからこそ良い具合に紗がかかったイメージになって、オトナの、ファンタジックなロマンスの後味。ラスト、バーグマンが車に乗って、涙を溢れさせながら運転し始めるシーン。ネタバレになっちゃうので詳しくは説明できないんですけれども、彼女の自嘲と哀しみと諦めの表情は必見。「心に残る映画のワンシーン」なんていうアンケートがあったら、1票を投じたい(笑)この作品、フランソワーズ・サガンの『ブラームスはお好き』の映画化で、原作のほうは三者三様の恋の駆け引きや心理描写に重点が置かれていて、映画よりシニカルで苦いテイストです。

 

  フィリップがポーラを「ブラームスがお好き?」と、コンサートに誘うことから二人の関係が始まるんですね。映画の中でも、ブラームス交響曲第3番第3楽章の甘美で哀愁のあるメロディがアレンジされて繰り返し流れます。


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  そして、モノクロ映画の「陰翳の美」の帝王と言えばこの人❗1950年代のフランスの美のシンボルと言われたジェラール・フィリップ😍彼の、彫りの深さが際立つ彫刻のような美貌は、『赤と黒』のようなカラー作品よりも、モノクロ映画でこそ真価を発揮するような気がします。


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  フランスの名匠ルネ・クレールゲーテの『ファウスト』を独自のアイデアで映画化した『悪魔の美しさ』。年老いたファウスト博士(ミッシェル・シモン)がメフィストフェレス(ジェラール・フィリップの2役)と血の契約を交わして若く蘇った後の姿がジェラール・フィリップなんですけど、もうその美しさときたら圧倒的で、(こんな姿になれるなら、悪魔に魂を売り渡したくなっちゃうよねぇ…)って納得しちゃいましたよ(笑)原作では、あらゆる学問を極め尽くしたファウスト博士が、それでも尚満足せず、肥大する「知識欲」の虜となり、悪魔と契約することによって尊大にも神の領域に手をかけようとする…という展開になっていますが、一方このフランス映画では、若返って比類なき美しさを得、真に愛する女性と巡り合う…というストーリー展開。ドイツとフランス、国民性の違いかしら?面白いですよね😊

 

  スタンダール原作の『パルムの僧院』や『赤と黒』(こちらはカラー作品)など文芸大作の彼も、舞台出身だけあって、堂々としていてそれは素敵ですけど、じつは、『花咲ける騎士道』(調子の良いプレイボーイだけど、どこか愛嬌があって憎めないファンファン・ラ・テューリップ)や『夜ごとの美女』(何をやっても上手くいかず、毎夜夢の中で美女とのロマンスを妄想するオタク音楽家)のような、コメディタッチの軽妙な演技こそ、彼の本領が発揮されたのでは…?と思うのはヲタクだけでしょうか。


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  36才の若さで逝った彼😢(美人薄命ってホントね……)

  才能を世に認められず、貧困の中で路上死した画家モディリアーニの悲惨な晩年をリアルに、冷徹に描いた『モンパルナスの灯』。ガス灯に滲むように浮かび上がるパリの街。そして、どんなにやつれて無精髭姿でも、衣装はボロボロでも、隠しきれないジェジェ(ジェラール・フィリップの幼少期の愛称)の美貌。残酷で非情なラストシーンと共に、脳裏に焼き付いて離れません。



遺作はピエール・ショデルロ・ド・ラクロ原作の『危険な関係』。富と名声と美貌に恵まれたセレブ夫婦(ジェラール・フィリップジャンヌ・モロー)がお互いに不倫をして、それぞれの相手を破滅に追い込むゲームに興じる…というアンモラルな内容から、フランス国内で上映禁止になった曰く付きの作品。監督が、自分の奥さんを映画の主役にして、しかも脱がせちゃうっていう趣味のロジェ・バディムだから背徳的なのはしょーがないか…😅でもそんな映画でもジェジェは、彼自身のクリーンで誠実な人柄を滲ませた演技。それまで背徳的な人生を送ってきた男性が、真実の愛に目覚めて変化していく過程を繊細に演じてサスガでした。

 

  あまりに美しく才能に溢れ、あまりにピュアで誠実な人柄であったが故に神に愛され、早く天国に召されてしまったジェジェ。最近は彼の映画も次々とデジタルリマスター化されて、綺麗な画面で彼の美しい姿を堪能することができます😍


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(おまけ)

 『危険な関係』のテーマ曲、「危険な関係のブルース」(アート・ブレイキー &ジャズ・メッセンジャーズ)はジャズのスタンダードナンバーとなりました。

  しっかし、映画『死刑台のエレベーター』のマイルス・デイヴィスといい、この映画といい、フランスのモノクロ映画にジャズはよく似合う😊


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歴史上のイケメン列伝①~チェーザレ・ボルジア

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    毎週ワクワク楽しみに見ているNHK大河ドラマ『青天を衝け』。今週の日曜日にはついに我が愛しの新撰組副長・土方歳三が登場❗『新撰組始末記』著者の子母沢寛によれば、土方は「役者のような優しげな色男」だったそうですが、目的遂行の為にはあらゆることも辞さない非情さも持ち合わせていたようで…。今で言うなら「ギャップ萌え」で、土方にハマっていた時期には、あってあらゆる小説や資料を読みまくりましたっけ。日曜日のブログ記事にもちょっと触れましたが、ヲタクが今までハマった「歴史上のイケメン」を、不定期ではありますが、思いつくままにご紹介していければと思います❤️ 

 

  まずトップバッターはチェーザレ・ボルジア❗15世紀末、ルネッサンス期のイタリアに、ローマ法王の私生児という、あるべきではない異端の子として生まれ、父の後ろ楯により一度はカトリック教会の大司教という地位まで上り詰めながら、自らその緋色の法衣を脱ぎ捨て、当時小国に分裂して群雄割拠の時代、「イタリア統一」という途方もない野望を抱いた男。当時の思想家マキアヴェリから、「理想の君主」と讃えられた男。マキアヴェリはまた、「容姿ことのほか美しく堂々とし、武器を取れば勇猛果敢であった」とチェーザレの印象を書き綴っています。野望達成を目前にして、31才の若さで非業の死を遂げるまで、彼の生涯は、血と、陰謀と、戦いに彩られていました。

 

  それまでは数々のフィクションの中で、「野望を遂げる為には手を血で染めることも厭わない男」陰険なヒールとして描かれていたチェーザレ・ボルジアを、シビレるほど魅力的なダークヒーローとして初めて描写したのが、言うまでもなく作家の塩野七生。塩野さんはこう語ります。これまで彼は、野心の為には手段を選ばないメフィストフェレスとして弾劾されてきた、しかし「メフィストフェレスの魅力は永遠である」と。

上の表紙に描かれた宝剣はチェーザレが生涯ただ一度だけ高名な職人に作らせたもの。

そしてチェーザレ自身は、生前ただの一度も自分を弁明しようとはしなかった。自分の悪業に対する弁明は、それが策として有効な時にのみ限られる。彼は自分を語ることの極度に少ない男だった。

そして彼の宝剣は…。

自分を語るという甘えを嫌ったチェーザレが、ただ一度若い野望を古代的な寓意であらわしたのが、この剣である。

もうね、塩野さんのこの前書き読んだだけでシビレちゃいましたよね(笑)

 

  チェーザレは、塩野七生の他の著作『神の代理人』『ルネッサンスの女たち』にも登場して、その冷たい魅力を振りまいています。チェーザレの他にも、彼女が描く男たちは生き生きとした魅力に溢れたイケメンばかり😍(『ロードス島攻防記』のヨハネ騎士団や、敵方オスマン・トルコのスルタン・スレイマン1世、『ギリシャ人の物語』アレクサンドロス大王、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』フリードリッヒ二世等々)

 

おうち時間が長い今日この頃。塩野七生さんの著作の中から、自分好みのイケメンを探してみてはいががでしょう❓😉

 

(おまけ)

塩野七生の描く人物像は、男性ばかりでなく女性もしごく魅力的。特に『ルネッサンスの女たち』のイーモラの女領主カテリーナ・スフォルツァチェーザレの率いる教皇軍の前に立ち塞がり、自分の五人の子どもたちが捕虜になったと知るや大軍の前で長いドレスの裾を高々と捲し上げ、「子どもなんぞここからいくらでも生まれてくるわ❗」と叫んで、兵士たちがあっけにとられている間に反撃に出る…などという驚きのエピソードが😮