オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

鉄の女は行く~本格ミステリ『第一容疑者』のヘレン・ミレン

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(London from Pixabay)

今でこそ女性刑事を主役にしたドラマは当たり前のように製作されていますが、その中でも、1991年から2006年まで7年間をかけて製作された本格ミステリ第一容疑者~Prime Suspect』は、その草分けとも言えるでしょう。

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  ロンドン警視庁(スコットランドヤード)でもピカ一の推理力と判断力、行動力を誇るジェーン・テニスン警部(中盤のエピソードで警視に昇進。演=ヘレン・ミレン)。しかし彼女は女性であるがゆえに傍流の仕事しか与えられず不遇な毎日を送っていました。そんな彼女が、何度も申請を出した末、やっとのことで待望の殺人課に配属されるところからこのドラマは始まります。

 

  予想された通り、叩き上げの部下(注・テニスンよりかなり年上)からの猛烈な反発をはじめとして、セクハラ・パワハラの巣窟、マッチョだらけのスコットランドヤードで(撮影開始時期が今から30年も前なのでそのへんを考慮しなくてはいけないかもしれませんが😅)、真相究明の情熱と鋼鉄の意思で猪突猛進のテニスンは、オトコよりオトコマエ(笑)「Ma'am(マダム、奥様)」と呼ぶ若い部下にすかさず、ドスの効いた声で「テニスン警部、もしくはBoss(ボス)と呼びなさい❗」とにこりともせず断罪、しかも相手が根負けするまで繰り返す(笑)

 

 同様に紅一点の女性刑事が活躍する推理ドラマというと『コールドケース』のリリー・ラッシュを思い出しますが、彼女の場合は年も若いし、課のマスコット的存在😊テニスンとは真逆のイメージですね。どちらかというと日本版『コールドケース~真実の扉』の石川百合(吉田羊)のほうがテニスン寄りかも。

 

  1年に1作程度のペースで丁寧に作られており、エピソードひとつが1時間40分程度(エピソードによっては前後編に分かれています)、映画並の骨太感。スコットランドヤード内の派閥争いや、ひとつの事件を巡っての部署同士の対立、事件現場におけるイニシアティブの取り合いなど、たまにこれってロンドン警視庁のドキュメンタリー❗❓って思うくらいリアル😅特に、人質立て籠り事件におけるテニスンの、犯人との駆け引きや機動隊責任者との犯人狙撃にまつわる丁々発止のやり取りは行き詰まるものがあります。

 

  また、英国における人種やLGBT差別、シングルマザーの過酷な子育て、紛争地域からの移民問題など、当時の社会問題を真っ向から取り上げています。たとえ容疑者であっても人権が徹底的に守られており、警察の取り調べでは必ず弁護人が同席しますし、警察側が不適切な言葉遣いや態度を示した時などは反対に告訴される怖れもあるので、そこをかいくぐりながら(時には血気にはやる部下をシメながら=笑)自白に持っていくテニスンの苦労は並大抵ではありません😅

 

  彼女の「正義」はあくまでも罪を犯した者に法の前で裁きを受けさせること。そこにいささかのブレはない。イギリスでは、すでに13世紀において、法学者ブラクトンが「国王も官吏も神の法、自然の法、この国の慣習法に従って統治すべきである」という「法の支配」の考え方を述べていて、それはやがてこの国の実定法であるコモン・ローにつながるわけですね。テニスンは世界に冠たる法治国家イギリスの名において真犯人を突き止める為、警察の中枢部にさえ真っ向から立ち向かっていきます。

 

  ゲストも、若き日のレイフ・ファインズマーク・ストロング(『キングスメン』『裏切りのサーカス』)、デヴィッド・シューリス(ハリポタシリーズのルーピン役)、コリン・サーモン(ピアース・ブロスナンの007シリーズ)、ブレンダン・コイル(『ダウントン・アビー』)など豪華な顔ぶれが次々登場😊

 

  あのメリル・ストリープテニスン役に惚れ込んで映画化を熱望してる…ってウワサが出たこともありました。でもヲタク的には、いくらメリル・ストリープが最高の名女優であっても、これはやはり大英帝国勲章🎖️も受勲したデイム、ヘレン・ミレンのもの。彼女の一生一代のハマリ役は必見ですし、作品としても、エミー賞英国アカデミー賞受賞の、ミステリーあるいは警察ドラマの古典的名作です😊

 

  

モノクロ映画を語ろう②~溝口健二の墨絵の世界

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 モノクロ映画を語る、今日はその2回目。溝口健二監督の作品にスポットを当ててみたいと思います。

 

 黒澤明小津安二郎監督と並んで国際的評価が高く(ヴェネチア国際映画賞で3年連続受賞は日本人で初)、ジャン・リュック・ゴダールなど、世界の映画人に影響を与えた監督ですが、残念ながら日本ではそれほど正当な評価を与えられていないかな…と思います。

 

  ヲタクが溝口監督の作品に最初にハマったのは『雨月物語』。江戸時代に上田秋成が書いた怪異譚(今だと、ホラー・ファンタジーと言えばいいのかな)を原作としていて、原作は9つのエピソードから成っているのですが、その中で溝口監督が選んだのは「浅芽が宿」と「蛇性の淫」。

  戦乱の世、百姓仕事の傍ら、細々と器を焼いては売り捌く貧しい暮らしに嫌気がさし、都で一旗挙げようと、妻(田中絹代)と幼い子を残して旅立った男(森雅之)。市場で商いをするうち、望まれて荒れ果てた屋敷に器を届けに行った男は、貴族らしき妙齢の美女(京マチ子)と恋に落ちる。しかしその正体は…❗❓

 

  溝口の映像世界って、よく「墨絵の世界」って評されますけど、まさに幽玄な日本古来の美の世界。芒の先に見え隠れする荒れ果てた屋敷、薄暗い行灯のひかりに浮かび上がる怪異、沼から立ち上る白い霧…全編まるで水墨画を見ているような気持ちになります。溝口監督の映画を観る度に、(ああ、日本人でよかった~)って思うんです。

 

…しかし、その映像の美しさとは裏腹に、人間(特に女性)を見つめる溝口監督のカメラ越しの眼差しの、なんと冷徹なことよ。監督って、じつはフランス人で実存主義者なの?って思うほど(笑)彼の映画の中で過酷な運命に翻弄される女性たち。しかし彼女たちはその運命に必死で抗い、自我に目覚め、ますます耀いていくのです。


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近松物語』はその名の通り、近松門左衛門人形浄瑠璃『おさん茂兵衛』が元になっています。大店のおかみ、おさんが手代の茂兵衛と不義密通、それが露見して町中引き回しのうえ磔刑に処せられる話なんですが、潔白の身を誤解され、あらぬ噂を立てられ、悲惨な運命に追い込まれていく二人。悲劇を彩るモノクロ映像は、まさに"陰翳礼讃"(谷崎 潤一郎 著)が描いた日本的な美❗

 

もし日本座敷を一つの墨絵に喩えるなら、障子は墨色の最も淡い部分であり、床の間は最も濃い部分である。私は、数寄を凝らした日本座敷の床の間を見る毎に、いかに日本人が陰翳の秘密を理解し、光りと蔭との使い分けに巧妙であるかに感嘆する。

 

近松物語』では障子と、それに写る黒い人影の場面が多用されていて、モノクロ効果が最高に生かされていると思います。

 

 誤解からのっぴきならない関係になっていくおさん茂兵衛。またね、溝口監督に抜擢された香川京子の演技開眼ぶりが凄い❗何不自由ない大店のおかみが運命に翻弄されながら次第にこの世の真実に目覚めていき、遂には愛の殉教者に。ラスト、彼女の崇高な表情が忘れられません。


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  先ほど溝口健二の冷徹かつ実存主義的傾向について述べましたが、これが『山椒大夫』ともなると、もはや鬼畜ぢゃないかっていう…。ジャン・リュック・ゴダールが影響受けたはずだよね(^_^;)この作品、ゴダールの『少女ムシェット』を観た時のやり切れなさとそっくりだもん(^_^;)

 

 ご存知、『安寿と厨子王』のお話しが元になっているので、人身売買やら小児虐待やらの陰惨な内容。(…とかく伝承的な童話や民話って、これホントに子供に話していいの❓っていう残酷な内容が多いんですよね、じつは)まあ冒頭に「これは人間が人間ではなかった頃のはなしである」ってテロップが流れますが。海外ではこの映画、ホラーのジャンルに入ってる場合もあるみたい。確かに安寿と厨子王、そのお母さんと乳母以外はみんな鬼畜で、その点から言えば、「人外さんホラー」かもしれません(笑)

 

  (おまけ)

NHK朝ドラ、『おちょやん』もいよいよ佳境に入ってきましたが、モデルになった浪花千栄子さん、溝口健二監督の信頼も厚く、今日ご紹介した映画の中でも、『近松物語』ではヒロインおさんの母親、『山椒大夫』では安寿と厨子王の乳母・姥竹役を演じ、名脇役ぶりを見せています。

 

ジャック・ロウデンNEWS~シアーシャ嬢とドーセット旅💅


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(Dorcet from Pixabay)

ジャクロくんがインスタに久しぶりにシアーシャ・ローナンの写真をup♥️(インスタグラム jack.lowden)相変わらず照れやさんの彼、今回も菜の花畑に佇む彼女の後ろ姿のみ😅後ろ姿も美しいのう…。

 歴史と自然が大好きな二人、今はイングランドのドーセット州を旅行中のもよう😊ドーセット州の海岸(写真一番上)は世界遺産。「ジュラシック・コースト(Jurassic Coast)」。約1億9960万年~1億4550万年前、恐竜が生息していた「ジュラ紀(ジュラシック)」の海岸という意味ですね。基本、推しのラブアフェアには関心のないヲタクですが、ジャクロくんとシアーシャちゃんの場合、二人とも大好きな役者さんだし、インタビュー等で真摯で誠実な人柄が伝わって来るので、二人のお付き合い、応援したいキモチでいっぱい♥️旅の写真とか見るとこっちまでほっこりします😊

  上の3枚の写真のうちの一番下、美しい森の木漏れ日。シアーシャちゃん絡みの写真にはさりげなく💄や💅のEmojiを使うジャクロくん😊WoodをWouldにかけてるけど、何が言いたいの?ジャック。まさかシアーシャちゃんに"Would you marry me?"とか?(笑)

 ジャクロくんが主演を務めたNetflixのドラマ、『最悪の選択』(2018年)がツイッターで絶賛されてますね😊特に、ジャクロくんと友人役のマーティン・マッキャンの演技が素晴らしい…と❗(superbっていうくらいだから、最高級の賛辞ですね😉)スコットランドのハイランドに狩猟に出かけた友人同士が誤って少年を撃ってしまいます。それを隠匿しようとしたことから(つまり二人は最悪の選択をしてしまった…)破滅へとひた走る悲劇と、閉鎖的なムラ社会の恐ろしさ。脚本も担当したマット・パーマー監督が完成に9年の歳月をかけただけあって、緻密なストーリー展開と心理描写、ラストは人間性の根源すらも問われるような、素晴らしいサイコスリラーです。まだご覧になっていない方は是非❗2018年エディンバラ国際映画祭で最優秀作品賞受賞。

 現在大活躍中のジャクロくんはじめリチャード・マッデンデヴィッド・テナント等、優れたスコットランド人俳優たちを輩出しているスコットランド王立演劇学校(Royal Conservatoire of Scotland~大学の学位が取得できる)。写真はリチャード・マッデンの卒業式ですね。今年11月公開のマーベル映画『エターナルズ』イカリス役を射止めた彼。いよいよ大ブレークでしょうね。監督も、『ノマドランド』でアカデミー賞監督賞を受賞したばかりのクロエ・ジャオだし。昔、インタビューで「ハリウッドのヒーロー役のオファーが来たけど興味ないから断った」って言ってたジャクロくん。ヲタクは、このイカリス役がクサイと睨んでいるのだが。はー、今さらこんなこと言っても始まらないけど😅おカネにならないインディーズ系ばかり出てるよね。しかも映画製作会社まで立ち上げちゃったから、ますますビンボーに(笑)……でも、そんなあなたが好きです♥️

 

「ジャック・ロウデンはスコットランド独立の最先鋒だが、一方で生まれは(イングランドの)エセックス州チェルムズフォードだということを隠そうとしている」ってまた、タイムズ紙に書かれちゃってる~😅まっ、タイムズ紙って言ってもスコットランド版だし、ジャクロくん自身がリツイしてるし、きっとイギリス政府に向かって「どーだいっっ、イングランド生まれのトップ俳優ジャック・ロウデンだって、生まれを隠してまでスコットランドに定住したんだ❗スコットランドはそれだけイイ国なんだぜー(文句あっか)」って言いたいのネ、きっと😉

 ジャクロくんの新作ドラマ『Benediction』(祝祷)。ジャクロはこの作品で、第一次世界大戦の凄惨な体験から心を病み(今で言うPTSDですね)、その後反戦の詩を書き綴った実在の人物、ジークフリード・サスーンを演じています。国際的な人気を博した大作『ダンケルク』(クリストファー・ノーラン監督)以来の軍服モノ。うー、やっぱり制服ってイケメン度が爆上げするね❗(笑)

モノクロとカラーの織りなす美しさ~『婚約者の友人』&『銃』


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(Louvre from Pixabay)

 前回のモノクロ映画特集では、クラシック作品とも言うべきモノクロ映画の数々について語りました。今回は比較的新しい2000年に入ってからの映画で、カラーとモノクロのシーンを織り混ぜて、その対比により、特別な効果を狙った作品を取り上げてみようと思います。


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  まずはフランソワ・オゾン監督の『婚約者の友人』(2016)。1919年、ドイツの小さな街。婚約者のフランツを第一次世界大戦で失ったアンナ(パウラ・ベーア)はいまだに黒衣に身を包み、息子の死に打ちのめされている彼の両親を気遣いながら一緒に暮らしていました。そんなある日、フランツの墓に花を手向け涙ぐむ一人の青年(ピエール・ニネ)の姿が…。彼はアンナにフランス人のアドリアンと名乗り、大戦中敵国同士でありながらフランツと友情を結び、ルーブル美術館にも一緒に出かけたことがある…と語ります。村人の冷たい視線をよそに、少しずつ彼と打ち解けていくアンナ。しかしアドリアンは、大きな秘密を抱えていました…。

 

  アンナの心象風景に呼応するかのように、モノクロ(哀しみ、緊張感、不安)とカラー場面(幸福感、希望)が交互に現れる演出がユニーク。アドリアンはなぜ、アンナの住む村にやって来たのか?ゲイをカミングアウトしているオゾン監督、ホモセクシュアルを題材にした作品も多いので、ヲタクは見ながらそっち方向で推理していたんだけど…違いました(笑)

 

  愛も、友情も、家族も、全てを引き裂く戦争。見ている私たちは、それから20年後には再びフランスとドイツが敵国同士となって戦う残酷な史実を知っているから、なおさら胸が痛みます。…しかしヒッチコックに負けるとも劣らない皮肉屋で意地悪なオゾン、アドリアンの素性が判った後の展開は彼の本領発揮ですね😅

 

  イヴ・サンローランの伝記映画で、まるでサンローラン本人が降臨したような強烈な存在感を示したピエール・ニネ、『ある画家の数奇な運命』でゲルハルト・リヒターの最愛の妻を演じたパウラ・ベーアの、主演二人が素晴らしい。特にラストのベーアの表情は神がかっております😊

 

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  日本映画からは、『銃』(2018)。さしたる目標もなく、日々虚無の世界に生きる大学生トオル(村上虹郎)。それが、荒川の河川敷で偶然拳銃を拾ってから、彼の世界は少しずつ変わっていきます。銀色に光る美しい銃身。まるで愛しいもののように手に取って拳銃を磨くうち、(銃は撃つためにこそ存在する。それならなぜ、俺はそれを撃ってはいけないのか?)という強迫観念に囚われていきます。そして、怪我で瀕死の状態の猫を銃で撃ってから、トオルは、今まで自らも、気の良い友人たち(岡山天音広瀬アリス…天音くんの受けの芝居が相変わらず素晴らしい♥️主人公の友人役をやらせたら右に出る者はいない😊)と共にいたはずの光の当たる世界から、ついに一歩踏み出してしまいます。

 

  トオルの銃の不法所持と動物虐待を疑って、彼をジワジワと追い詰めて行く刑事にリリー・フランキー

あなた、人を殺したいと思ってるでしょ。

拳銃を持っているとね、必ず使いたくなる。

という、悪魔の囁き。

彼のメフィストフェレスぶりが凄い。そして、悪魔と契約を結んでしまったトオルを演じる村上虹郎の銃を構える時の恍惚の表情と、熟して腐る寸前のような色気も。

 

そして衝撃のラスト。見ている私たちは、なぜ今までモノクロ画面だったのか、初めてその理由を知るのです。

 

  

『Mank/マンク』つながりでモノクロ映画の名作を語ろう~外国映画編


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(『第三の男』で重要な場面に登場するウィーン、プラーター公園の観覧車…Pixabay)

第93回アカデミー賞で、モノクロ映画の『Mank/マンク』が撮影賞と美術賞を受賞❗リアルタイムで授賞式の模様を放映してくれたWOWWOWでの、行定勲監督のコメント「モノクロ映画は陰翳のつけ方が非常に難しい。照明の技術も必要」がとても印象的でしたね。この映画のお蔭で、再びモノクロ映画の美しさが見直されてくるのではないでしょうか?ヲタクからすると、まさに谷崎潤一郎の随筆『陰翳礼讚』の世界。色彩を廃した、光と翳だけの究極の美の世界。今日はそんなモノクロ映画を独断と偏見で語ります。

 

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  『Mank/マンク』は、全盛期のハリウッドで稀代の天才と言われた俳優・監督、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』の脚本家ハーマン J. マンキウィッツ(通称マンク)が主人公でした。しかしオーソン・ウェルズと言えば思い浮かぶのが、ヲタク的にはだんぜん『第三の男』のほうなんだよなー。ゴメンね、マンク(笑)監督・脚本は名匠キャロル・リードオーソン・ウェルズはクレジットにはトップに出てきますが、主人公ホリーがその行方を追う親友のハリー・ライム役なので、映画の中盤まで出番なし(笑)しかしひとたび画面に姿を現せば、その謎めいたオーラが圧倒的でした。

 

  舞台は第二次世界大戦直後、建物の多くは瓦礫と化し、まだ戦争の傷痕癒えない、米英仏ソ4分割統治下にあったウィーンの街。売れないアメリカ人作家ホリー・マーティンス(ジョセフ・コットン)は、ウィーンに住む親友のハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)から「ウィーンに来たら、いい仕事を紹介する」という手紙を貰って、期待に胸を膨らませてウィーンにやって来ます。ところが、ハリーのアパートを訪ねると、管理人から「ハリーは交通事故で亡くなった」と言われ、衝撃を受けます。さらにハリーの葬式で、彼がウィーンで悪名高い密売人だったことを聞かされ、打ちのめされるのでした。しかし、ハリーの死の現場に、素性の知れない「第三の男」がいた事実を突き止めたホリーは、それが単なる事故ではなかったことを疑い始め、真相究明に乗り出しますが、彼を待っていたのは残酷な真実でした。

 

  戦後間もなくのウィーン、各国の思惑が絡み合い、ヤミ物資や偽造パスポート等不法な商売がまかり通る中、悪に手を染めながらも必死に生き抜こうとする男と女。

 

  作品的にはフィルム・ノワールのサスペンスなので、窓から見下ろすウィーンの街角、遠くにいる小さな人物の翳が石畳に異様に長く伸びているとか、建物の陰に潜んでいた人物に灯が照らされて顔が浮き上がるとか、追ってくる人物を影だけで表現するとか、モノクロ映像だからこそ主人公の恐怖がいや増すしくみ😅映画史上名シーンとしても名高い、下水道での追いつ追われつ。真っ白な壁に人の影が大きく写し出される時の美しさよ。

 

  考えてみれば、モノクロ映画ってサスペンスやホラー、スリラーにぴったりな映像表現な気がする。暗闇に何が潜んでいるか分からない恐怖。そんな暗闇から、真実が顔を出した時の衝撃。モノクロ映画ではないけど、そんな光と翳の恐怖を巧みに演出したのがブライアン・デ・パルマ監督じゃないでしょうか。(『殺しのドレス』『アンタッチャブル』『ブラックダリア』)

 

そう、モノクロ映画はサスペンスによく似合う。

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 もはやコメントの必要もないアルフレッド・ヒッチコック監督の名作『サイコ』。ヒロインのジャネット・リーが会社のお金を持ち逃げして、見ているこっちもハラハラドキドキ、どうやって逃げ切るのかと思いきや、途中で立ち寄ったベイツ・モーテルで、シャワー浴びてる最中にまさかの惨殺ヽ(;゚;Д;゚;; )いやもう、その衝撃と来たら腰抜かしましたよね😅ヒロインがなんでこんなに早く殺されちゃうんかい?って。ヒッチコックのいぢわるじいさんここにあり(笑)でもって、モノクロ効果が最大限に発揮されたのは、あの、排水口に流れていく血の場面ですよ。

流れる血が、血が、モノクロだからこそ、めちゃくちゃコワイのよぉぉぉ~❗

カラーだと、頭のどこかで(まあどうせ、人工の血糊だから)って思って見れるけど、白黒だと妙にリアルで、ヒッチコック爺さん、絶対その効果狙っていたと思う。反対にギレルモ・デル・トロ監督の『クリムゾン・ピーク』は、恐怖というより、真っ白な雪山と赤い血のコントラストを強調した一種の様式美を狙ってる感じなんでカラーが必須なんですけれども。


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  ベイツモーテルの外観も内部も、モノクロだからこその恐怖倍増😅今は映像技術が発達して、背景もリアルなのかCGなのか区別がつかないけど、当時はセットだと作り物感アリアリ(笑)。同じヒッチコックの『レベッカ』。イギリスの古城を舞台にしたいわゆるゴシックホラーですが、画面上、翳になる部分が多くて怖かった。暗い部屋が無数にあって、そもそもどこに誰が隠れているかわからないシチュエーションって、恐ろしすぎる。

 

  最後に、フランスのフィルムノワールをひとつ。フランスの名女優、故ジャンヌ・モローの『死刑台のエレベーター』。冒頭から流れるマイルス・デイヴィスの気だるいトランペット。いきなり瞳を潤ませたジャンヌ・モローのどアップ、公衆電話の受話器に向かって囁くように彼女が呟く"Je t'aime. ジュテーム"の音楽的な響きにうっとりしていると、「(愛しているのなら)夫を殺して」と続くので、思わずのけ反る(笑)社長夫人のフロランスが、身も心も捧げつくしている男ジュリアンは夫の部下。第二次世界大戦で戦功を上げ、フランスでは英雄視されているけれど、戦争で人間らしい心を失ってしまったものか、彼女に命じられるままに淡々と殺人をこなしていくさまが何とも怖い。モーリス・ロネの、彫刻のような冷たい美男子ぶりがゾクゾクするほど素敵で、フロランスが破滅も厭わないほどのめり込んでいくのも納得(笑)

 

  ジュリアンは社長室で社長を射殺し自殺に偽装しますが、回収し忘れた証拠品を取りに社に戻った時、エレベーターに閉じこめられてしまいます。その間に、路上に駐車してあったジュリアンのスポーツカーを盗んで無軌道な逃避行を始める若い男女。一方、待ち合わせの場所に現れないジュリアンを探して、パリの街を彷徨い歩くフロランス。(かなりのスピードで車が走ってくるシャンゼリゼ通りを無表情にジャンヌ・モローが横切っていくシーンは凄い😮)

 

  まるで地獄への一本道のように規則的にライトが並ぶ夜のハイウェイ。車のヘッドライトに滲むように浮き上がる小雨降るシャンゼリゼ。現像液から、次第に浮かび上がって来る1枚の写真。どこをとってもスタイリッシュな映画(フランス映画だから、シックかエレガントかな?=笑)で、なんとルイ・マル監督25才の時の処女作です。映画界に彗星の如く現れた若き天才。今で言えば、グザヴィエ・ドランといったところでしょうか。


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  モノクロ映画って色彩が無くて眼から入る情報が少ないぶん、音楽がより印象的に耳に残るような気がします。『第三の男』ではウィーン生まれのツィター奏者アントン・カラスが奏でるテーマ曲(恵比寿駅で流れてるアノ曲です😅)が耳を離れないですし、『サイコ』の殺人場面、あのキーキーいう不快なバイオリンの音、『死刑台のエレベーター』全編を流れるモダンジャズは映画の内容と密接に結び付いています。

 

  …って今日は、少し喋りすぎましたね(笑)モノクロ映画について語り始めたら、ヲタクなかなか終わりませんで😅続きはまた次回❗

  

 

 

 

  

 

 

 

 

アマンダ・サイフリッドの真紅のドレスと、ゲイリー・オールドマンの眼差し~アカデミー賞

 
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目にも眩しいアマンダ・サイフリッドの真紅のドレス。そしてヲタクの目線はどうしてもその豊かな胸元に…&#/$@☆「¥?  でもやっぱりレッドカーペットにはこういうゴージャスなドレスよねぇ…😍3年前ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラに抗議して、女優さんたちがこぞって黒いドレス着て、まるでお葬式みたいになっちゃったオスカー会場はまるっきりつまんなかったもん(笑)

 

  アマンダ・サイフリッドは、映画『Mank/マンク』で、実在の女優、マリオン・デイヴィスを演じ、助演女優賞にノミネートされました。マリオン・デイヴィスは、当時アメリカで絶大な権力を振るっていた父娘ほども年の違う新聞王ウィリアム・ハーストの愛人となり、売れっ子女優にのしあがった人物。演じるアマンダは、1930年代アメリカの退廃と狂乱のジャズエージの匂いふんぷん、ビッチな魅力を振りまいておりました。今日のドレスは、映画の中のマリオン・デイヴィスのイメージに見事にクロスオーバーしてたなぁ😅

 

  でもって、ちらっと写ったゲイリー・オールドマンの眼差しの、なんと穏やかで優しいこと😊映画『レオン』の、史上最低のクズ男、麻薬捜査官スタンで本格的「堕ちて」以来ずっと、ゲイリーのキャリアを見つめ続けてきたヲタク。若い頃はどこかピリピリして尖ってて、数多くの美女たちとの長続きしないラブアフェアや家庭内トラブル、アルコール依存症に苦しみ、このままフェイドアウトしてしまうのではないかと危惧したこともあったけど…。いつの間にか全てを乗り越え、今ではその輝かしいキャリアと演技力、暖かい人柄から、後輩の俳優たち(ブラピやジョニデ、クリスチャン・ベールライアン・ゴズリング等々)に「神」と讃えられるほどの人物になった。今回の主演男優賞、ゲイリーは全く下馬評にも上がってなかったから殆ど期待してなかったけど、超意外な結末でビックリ仰天👀❗…だったらゲイリーでも良かったぢゃん(暴言お許し下さい😅ゲイリーヲタのたわ言です=笑)

 

  『Mank/マンク』は美術賞(ドナルド・グラハム)と撮影賞(エリック・メッサーシュミット)を受賞❗モノクロ画面の美しさが圧倒的でしたが、コメンテイターとして出席していた行定勲監督曰く、「モノクロ映画は陰翳のつけ方が非常に難しい。照明の技術も必要」だそうですから、納得の受賞ですね😊

  

 

 

  

オスカーにアジアの風が吹く~監督賞&作品賞『ノマドランド』


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 『パラサイト~半地下の家族』ポン・ジュノ監督から『ノマドランド』のクロエ・ジャオへ、2年連続でアカデミー賞受賞会場にアジアの風が吹いた❗しかも今年は女性…嬉しすぎる😭しかも、今回も監督賞と作品賞のダブル受賞❗

 

  先日『ノマドランド』の感想を書いた時、巷でよく語られている、「ノマドピープルはフロンティア精神の象徴。アメリカ人の原点回帰である」というテーマよりもむしろ、東洋と西洋の思想の融合ではないか…❓と書きましたが、今WOWWOWで録画しておいたクロエ・ジャオの監督賞受賞スピーチを聞き終わって、その感をさらに強くしたヲタク😅…全くの手前味噌で申し訳ないんですが(汗)

 

  今、アジア系の人々へのヘイトクライムが多発しているアメリカ。そんな現実を十分踏まえた上で、長い黒髪を三つ編みにして化粧っ気もなく、ホントに小柄で少女のようなジャオ監督は、噛みしめるように語り始めます。

 

「今この生き難い時代において、どう前向きに進んで行ったらいいのか、わからなくなることもあります。そんな時、小さい頃中国で父と一緒に中国の詩を交互に朗読し合う…という遊びをしていたことを思い出します。全ての人の心には「Goodness~善」がある。世界中どこへ行ってもそれは存在すると、私は信じています」と。

 

  闘争より調和、自尊より謙譲、LuxuryよりSimplicity…映画『ノマドランド』は、クロエ・ジャオが監督を務めたからこそ、あれだけ深みのある映画になった…。クロエ・ジャオとフランシス・マクドーマントという、二人の天才が作り上げた傑作と言えるでしょう。思えば、今回のノミネート作品の中で、動画配信ではなく映画館で上映されたのは『ノマドランド』だけなんですよね…。見事主演女優賞を受賞したフランシスの、映画人の気概、狼の遠吠え😅ホントにこの方は肝が据わってるというか、いつもカッコよくて、まさにHandsome Womanです❗😊

 

  そしてそして、クロエ・ジャオ監督の次回作は、今回の低予算アート系からバリバリのハリウッド大作、マーベル・スタジオ『エターナルズ』❗このへんの振れ幅が楽しみだなぁ。アンジェリーナ・ジョリーリチャード・マッデンキット・ハリントン、マ・ドンソク等とのタッグ、楽しみすぎる😍

 

  小さなジャオ監督が、ドンソクアニキに演技指導しているところを想像すると、自然と笑みがこぼれてしまうヲタクなのでした…ぢゃん、ぢゃん❗

 

  

1980年、戒厳令下のポーランドで…Netflixミステリ『泥の沼』

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(Poland from Pixabay)

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  第二次世界大戦ナチス・ドイツに占領されていたポーランドを解放したのはソ連軍でした。戦後はソ連を後ろ楯とした共産主義国となったポーランド。ところが共産主義時代のポーランドは経済状況が極度に悪化、インフレに苦しみ、食料は配給制、物資の欠乏は慢性化していました。そんな中、レフ・ワレサ率いる独立自主管理労働組合いわゆる「連帯」が民主化活動を活発化させましたが、政府は1981年に連帯を非合法化し、戒厳令を施行して厳しい言論統制を敷きます。

 

  このドラマはまさに1980年、戒厳令下のポーランドが舞台。ある田舎町の地元紙「クーリエ」の記者ウィテク・ヴァニッツ(アンジェイ・スヴェリン)は、小さな田舎町の密接な人間関係に嫌気がさし、ドイツへの亡命を目論んでいます。そんなある日、街のはずれにある広大な森の中で、社会主義党青年組合議長グロフォヴィヤクが、娼婦と共に惨殺される事件が発生。その直後、警察は娼婦の同棲相手を逮捕し、自供調書も取ってスピード解決。しかしウィテクと共に事件担当になった新米記者のピョートル・ザジツキ(ダビド・オグドロニク)は、警察の誤認逮捕ではないかと疑い、独自に捜査に乗り出します。権威に噛みつくピョートルの行き過ぎた正義感に辟易するウィテク。しかし彼もまた知人の娘ユスティナと同級生の心中事件を追ううちに、青年組合議長と娼婦の殺人事件との間に奇妙な共通点があるのに気づいて…。

 

  5話見終わってひと言…。

暗い!とにかく暗い!

…でもって結末のイヤミス感ハンパない。

勧善懲悪の爽快感も皆無(笑)

…でもね、ヲタク的にはツボにハマるテイストです。好き嫌いは分かれると思いますが、北欧ミステリがお好きな方にはおススメ。

 

  主人公二人が、新聞、それも地方紙の記者という設定が、このドラマに深みを与えていると思います。戒厳令下の記者といえば、体制側から全て統制されていますから、記事の題材と言えば、国営の食肉工場や公益事業の提灯記事ばかり。そんな状況に鬱屈たる思いを抱く野心家の若いピョートルが、それこそ泥の沼に引き摺り込まれるように、真犯人探しにのめり込んでいくのも、時代背景を知るとよく理解できます。また、お洒落な洋服を買おうと思ったらヤミで外貨を調達しなければならず、学校を出ても未来が見えない当時の若者たちの抑圧された欲望も…。

 

  ヨーロッパの人々にとって、「森」は神の眼の届かない「魔が棲む場所」というイメージがある…と、以前拙ブログの記事(『ダブリン 悪意の森』2月12日)でも書きましたが、このドラマでも同様のメタファが度々登場します。このドラマにおける「森」もまた、ピョートルの妻(ゾフィア・ビフワチュ…この女優さん、可愛い)が言う「夫婦の仲を裂こうとする」魔の森であり、かつて森にあった収容所で亡くなった大勢のポーランド人たちの亡霊がさ迷う場所なのです。

 

  第二次世界大戦でのナチスドイツからの迫害に始まり、苦難の歴史を歩んできたポーランド。多くの人々が新天地を求めて、他のヨーロッパ諸国やアメリカに渡りました。ヲタクが家族とベルギーに住んでいた頃、次女と仲の良かったお嬢さんはポーランドからの移民3世でした。あの有名なミュージカル『ウェストサイド物語』白人の不良少年グループ、ジェット団の面々はポーランドからの移民2世たち。新天地を求めて来たものの、良い就職口がなくて本国と同様貧困に苦しんでいる…という設定です。刑事が彼らに向かって、「ポラックめ!(ポーランド人の蔑称。現在は差別用語です)」って吐き捨てるシーンがありましたね。アメリカ文学では、ポーランド人と言えば肉体労働者として描かれる場合が多いですね。(テネシー・ウィリアムズ欲望という名の電車』のスタンリー・コワルスキーなど)ジェーフリー・アーチャーの小説「ケインとアベル」も、ポーランドからアメリカに密航してきた青年の成り上がり物語でしたっけ。

 

  ひと昔前まで、日本で見ることのできる海外のドラマと言えば、アメリカ、イギリス、フランス、韓国のものばかりでしたが、今ではNetflixのお陰で北欧や東欧、アイルランドスコットランドのマイナーな作品も楽しむことができる。

良い時代になりましたよね。

 

  

 

  

 

    

世紀末のパリにタイムスリップ~『パリ殺人案内』


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  U-NEXTで『パリ殺人案内』全7話鑑賞。1話1時間30分程度で、主人公もそれぞれ、お話の内容も独立しているので、どのエピソードから見ても大丈夫😊以前、AXNミステリーチャンネルで放映されたみたいですね。同じくAXNミステリーで度々放映される『フランス絶景ミステリー』は、ブルターニュ地方やピレネー山脈フランスアルプスなど美しい大自然が「ウリ」ですが、今シリーズは花の都パリが舞台で、時代背景は、世界中から芸術家たちがパリに集まって文化の大輪の華を咲かせた世紀末❗ヲタク的にはツボはまりまくりです(笑)

 パリの様々な観光名所を舞台に、強くて無鉄砲、反骨心旺盛な?ヒロインたちが、国家の陰謀を暴いたり、高価な美術品を盗み出したり、難解な殺人事件の謎を解いたり…と大暴れ😅それも、見目麗しい若い女性というより、オトナの魅力に溢れた…っていうか、ぶっちゃけ「オバサン」が多かったですね(笑)ヨーロッパ、特にフランスって女性の真の魅力は四十から…なんて風土だから、日本のドラマだったらヒロインのお母さん役になるところを堂々と主役を張って、さらに堂々と濡れ場なんか演じちゃう(笑)

 

  エピソードの構成は…

1)ムーラン・ルージュ

ムーラン・ルージュの踊り子だった妹が突然行方不明に。妹の行方を追う姉のディアンヌは、当時パリの巷に出没していた、踊り子を狙う殺人鬼に狙われて…。

2)エッフェル塔

オープン間もないエッフェル塔のエレベーター内で起きた殺人事件。ヒロイン・ルイーズは、エッフェル塔建設に関わった父が、自分の知らない秘密を抱えていたことを知り…。

3)オペラ座

オペラ座では今まさにビゼーの歌劇『カルメン』の稽古真っ最中。そんなある日、舞台スタッフの女性が天井桟敷で殺される。犯人として逮捕されたのは、ミカエラ役でデビュー目前のフォスティーヌの恋人だった。恋人の無実を信じるフォスティーヌは、仲間たちの助けを借りて真犯人探しに乗り出すが…。

4)ルーブル美術館

パリを賑わす怪盗メルキュールは、実は女性だった❗盲目の妹を抱え、路上で日銭を稼ぐ青年フレデリクは、メルキュールからその軽業ぶりを見込まれて、ルーブル美術館で最も貴重な首飾りを盗む作戦に誘われる。

5)ヴァンドーム広場

ヴァンドーム広場に面した超一流ホテル、リッツの厨房で働くジャンヌ。ある日1人息子のフィリップが誘拐され、彼女の元に、「オーストリアハンガリー帝国とセルビアの友好晩餐会の日に、必ず厨房に入れ」との脅迫状が届く。

6)エリゼ宮

マドレーヌが工場で働き、女手1つで育て上げたヴィクトールは今や大統領補佐官に出世。彼の執務室があるエリゼ宮をある夜ヴィクトールにこっそり案内してもらっていたマドレーヌは、主席補佐官が殺される現場に遭遇してしまう。

7)ソルボンヌ大学

ソルボンヌ初の女子学生ヴィクトワールは、サルド教授殺人事件の第一発見者となり、容疑者として連行されてしまう。彼女の無実を信じる仲間の学生たちと、ガルボ教授が真犯人探しに奔走する。

 

  なんといっても19世紀末のパリの風俗、建物(もちろんルーブル美術館等は当時の外観を忠実に再現)、ロートレックの画から抜け出てきたような当時の貴婦人たちのファッションがステキ😍

 

  当時の文化人たちも度々登場、ヒロインがロートレックの絵のモデルに誘われたり(ムーラン・ルージュ)、ヒロインがあの有名な料理人エスコフィエの下で働いていたり(ヴァンドーム広場)、リッツのエントランスにマルセル・プルーストが立っていたり…と、コネタがたくさん😊(アメリカの作家がパリを旅している間にタイムスリップして文化人と交流する…というウッディ・アレン監督の映画『ミッドナイト・イン・パリ』思い出しますねぇ~。あの映画で主人公がタイムスリップしたのは1920年代のパリでしたけれども)

 

  また、セルビアオーストリア・ハンガリー帝国が友好的関係性を保っていた当時の時代背景(両国の関係はその後悪化、オーストリアハンガリー帝国の皇位継承者がセルビア人に暗殺されたサラエボ事件第一次世界大戦の引き金になります)、あるいはアルザス・ロレーヌ地方を巡る対ドイツの緊張を孕んだ当時の外交関係等がストーリーに巧みに織り込まれていて、大変興味深いです。

 

  個人的には今ズンバに凝っているので、ムーラン・ルージュの踊り子たちのレッスン風景や舞台裏に興味シンシン。立ったまま180度開脚しなくちゃいけないんですよ❗凄すぎる、人間ワザとは思えない。(あんなことしたら、股関節バラバラになるわ(・д・))って、呟きながら見ておりました(笑)

 

 

  

 

 

ねんどろいどニュート・スキャマンダー、キタ~~❗

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出荷遅れてたねんどろいどニュート・スキャマンダー、ついにキタ~~❗

 

ねんどろいどは 忘れた頃に やって来る🚶

 

  でもいいや~、先週ネトフリで『シカゴ7裁判』見て、エディ・レッドメインのイケメンぶりに久しぶりにクラクラしたばかりだから、ヲタク的にはJimmy Jonesの歌ぢゃないけど、今がGood Timin'です、うん♥️

Timin' is the thing.

It's true.

Good timin' brought me to you.

 

タイミングが重要なんだ
良いタイミングが
君を僕のもとに連れてきたことは

事実なんだから🎵

 

  ニュートの表情は3種類❤️元々箱に入っているのは、左のトネリコとライムの杖持った凛々しいバージョン(写真下)なんですが、今はほっこり癒されたいので、ニュートもほけっとリラックス、ボウトラックルのピケットちゃんといっしょのバージョンに変えました(おイタをしようとしているニフラー見て焦ってるニュートもめちゃくちゃ可愛いけど😍)

…っていうか、じぶんでバラしたものの新しいお顔が首に上手くハマらず、忙しそうな夫をつかまえてムリヤリ組み立ててもらった(笑)

 

  瞳のグリーンが綺麗なの…(うっとり)

ヲタク的にはソバカスつけたくなっちゃうけど(笑)


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玉木宏 The ダークヒーロー『桜の搭』~主題歌は『Sha ・la・ la・la』(宮本浩次)

  玉木宏が、警察機構の中で頂点を目指す為に手段を選ばないダークヒーローに❗

 

  銀行で改造銃を使った強盗事件が発生。犯人は多数の人質を盾に立て籠り、その中の一人に重傷を負わせて逃走。逃走を防げなかった警察の失態を関連部署のトップ同士がなすり合う事態に。その逃走した犯人逮捕という、言わば「貧乏くじ」的な捜査の陣頭指揮を任されたのが、警視総監レースで一番遅れをとっていると言われている千堂刑事部長(椎名桔平)の腹心の部下・上條漣(玉木宏)だった。上條は鋭い推理とプロファイリング能力で犯人を追い詰めるが、そこには二転三転のどんでん返しが待っていた…。

 

  いやぁ、玉木さんくらい顔といいスタイルといい声といい完ぺきなイケメンには、ダークヒーローがよく似合う❗

あれだけ完ぺきなら、ダマされても、劇中のヒロスエみたいに背負い投げされてもおーるおっけー😊水樹爽(広末涼子)は、漣の幼なじみで正義派の熱血ノンキャリ刑事。漣の、血も涙もないやり方に反発してよく突っかかっていくんだけど、なんと言い争いの途中で背負い投げくらってたんですよね。えっ❓そこで幼なじみ投げ飛ばす❗❓ってカンジなんだけど、玉木さんなら許す…って思っちゃうところが…

イケメンの威力、おそるべし(笑)

っていうか、玉木宏広末涼子という超美男美女が幼なじみな設定で、安易にレンアイ関係にならないのが、ヲタクとしては◎😊

 

  次期警視総監の椅子を狙う熾烈な出世バトル(椎名桔平 vs. 吉田鋼太郎 vs. 光石研)がなかなか面白くて、一緒に見てる夫は謎解きよりそっちの方に興味シンシン(笑)警察版『ハウスオブカード ~野望の階段』かな😊  千堂刑事部長の娘・優愛に仲里依紗。独特の雰囲気がある、ヲタク大好きな女優さんで、これから漣にどう絡んでくるのか?漣が野望達成の為の手段として近づいていきそうな気配なんだけど、どうしてどうして優愛も世間知らずのお嬢とは程遠いしたたかな感じだから、はて、どうなることやら(笑)

 

  現在、NHK大河ドラマ砲術家高島秋帆を演じている玉木さんですが、その『青天を衝け』組がけっこう出ているのが、ヲタク的には嬉しいところ。まずは漣の少年時代を演じているのが、『青天~』で渋沢栄一(幼少期)を演じた小林悠仁くん。相変わらず凛々しくて可愛い…なんであんなに瞳が澄んでいるのかしら…😊岡田健史くんが正義感溢れるキャリア組の新人刑事、また渡辺大知さんが漣の同期を演じています(メガネかけてて最初わからなかった😅)

 

  そしてそして、主題歌は宮本浩次さんの『Sha・la・la・la』❗ラスト近く、バックに流れる宮本さんの歌声はひたすら伸びやかで爽やかだった。そこで思い出すのが、ドラマ『後妻業』の主題歌だった『冬の花』。ヒロイン(木村佳乃)は、孤独な老人を騙してお金を巻き上げる、いわゆる「悪女」なんだけど、宮本さんは当時「ヒロインの健気さ、哀しみに着眼して『冬の花』を作った」っておっしゃっていて、(そうか、だからこんな哀切な、だけど最後には希望の光が感じられるような楽曲なんだ)と、宮本さんの着眼点の凄さに驚いたものです。主人公の心情を主題歌という形で表現するって、ある意味凄くないですか❗❓

 

  今回も、ストーリーを聞いてもっとダークな曲調なのかと想像していたんですが、宮本さんのことだから新たな視点で、主人公・上條漣の隠れた一面を歌で表現しているのかなぁと思いました😊

 

 先の見えない権力闘争バトル、これからますます目が離せない❗

 

 

  

 

  

 

 

ダン・スティーヴンスのロシア訛りにきゅんです♥️~Netflix『ユーロビジョン歌合戦』


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(Iceland from Pixabay)

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 本年度アカデミー賞歌曲賞にノミネートされている『ユーロビジョン歌合戦~ファイアー・サーガ物語』。ファイアー・サーガとはアイスランドの辺境の村フーサヴィークに生まれた主人公のラーズ(ウィル・フェレル)が、いつかビッグになることを夢見て、幼なじみのシグリット(レイチェル・マクアダムス…40を過ぎても相変わらずキュートでカワイイ)と組んでいるバンドの名前。まずのっけから、アベンジャーズマイティ・ソーよろしく、バイキングの衣装に身を固めたラーズが、アイスランド雄大な自然をバックに

ボルケ~~ノマ~~ン 私の溶けるハートをトリコにしたぁ~~

火山から来た守護者 永遠のヒーローも人を愛するぅ~~🎵

と歌いまくるシーンでハートぶち抜かれたわ(笑)

 

  村の居酒屋で細々とライブをしている二人。それがひょんなことから、ユーロビジョン歌合戦のアイスランド代表に選ばれ、さらにひょんなことから(詳しい経緯は省きます=笑)スコットランドエディンバラの本選に出場できることになり…という、「オトナの夢の叶え方」コメディ。ユーロビジョン…。欧州放送連合主催のコンテストで、各国代表アーティストはライブ放送で自らの楽曲を披露、参加国が他国に投票して大会の優勝者を決定します。日本ではあまり知られていませんが、ヨーロッパではけっこう毎年話題になります。ホンモノのコンテストさながら、ユーロビジョンのライブシーンがスゴイ迫力。個人的には準決勝に出てきたベラルーシデスメタルバンドが好き♥️

 

 ストーリーは ウィル・フェレルお得意の下ネタ&ドタバタ満載😅、だけど全編を彩る楽曲の数々は素晴らしく素敵なものばかり、アカデミー賞歌曲賞ノミネートも納得❗

(ノミネートの歌曲は「Husavik(My  hometown)」。アイスランドの自然の素晴らしさと望郷の念を歌い上げる感動的なバラードは、掛け値なしにアカデミー賞に相応しい❗素晴らしいです)

 

  そしてそしてヲタクのお目当てダン・スティーヴンス🎵(『ダウントン・アビー』『美女と野獣』『レギオン』等)ヒロインのシグリットにグイグイ迫る、本選優勝候補のロシア歌手、アレクサンドル・レムトフ役。半裸のムキムキマンたち引き連れて、若き日のジョン・トラボルタみたいなラメ衣装で歌い踊るは『愛のライオン』❗

 

結ばれよう 俺は恋する獅子 愛の狩人さ🎵

サバンナで君を高く掲げる

(↑なんて力持ちなの、ステキ😍)

あの空の上へと

 

でもってここでオトコたちがアレクサンドルのキラキラ衣装を剥ぎ取る~(*´ェ`*)

(ギャランドゥも出血大サービス、しかも手にムチ持ってる)

萌えるわ、サイコー♥️(←バカ😅)

おまけに全編見終わった後も、レムトフのリハと本選のシーンだけリピしてるヲタクはただの危険人物(笑)

 

  彼のロシア訛りの英語も完ぺきです😍ピュアでクレバーなシグリットちゃんが最後までラーズにぞっこんで、アレクサンドルにはぜんぜんなびかないのがいまいち理解できん🤷ヲタクならソッコー行っちゃうけど(笑)『シカゴ7裁判』で、アメリカン・イングリッシュを早口でまくし立てるエディ・レッドメインに萌えたばかりのヲタクですが、そう言えばダン・スティーヴンスもエディと同じケンブリッジ大学出身。大学の演劇サークルで鍛えられ、様々な訛りもお手のもの😊…しっかし、ユーロビジョンにエントリーしたアーティストを集めたパーティーで、「イギリス代表はどこ?」と聞くレイチェル・マクアダムスに、ダン・スティーヴンスが「イギリス人は世界中の嫌われ者だから来てないよ」って答えさせる脚本っていったい…(笑)


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  ピアース・ブロスナンがラーズの実直で頑固者の父親役でイイ味出してます😊髭面でアイスランドの漁師、初めは彼とはわからなかった(笑)それでも若々しくて、ウィル・フェレルと並ぶととてもじゃないけど父子に見えずに困った(笑)また、ちょい役ですが、Netflixのミステリードラマ『トラップ~凍える死体』(シリーズ2まで配信中)で主人公アンドリ警部を演じているアイスランド人俳優・オラフル・ダッリ・オラフソンが出てきたのは嬉しいサプライズ🎵

 

  はじめは『私というパズル』(ヴァネッサ・カービーがアカデミー主演女優賞にノミネート)を見始めたんだけど、あまりにも辛く苦しい最初の30分で挫折😢代わりに見始めたのがこの映画。癒された~(笑)『私というパズル』は、心身共に元気な時に再挑戦しようと思っています。

 

(おまけ)シグリットはエルフ(妖精)の存在を信じていて、何かというと山あいにあるエルフの可愛いおうちにお祈りしてるのがツボ(笑)

 

  

 

本命はいつだってゲイリー・オールドマン♥️~Netflix『Mank/ マンク』


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(Hollywood from Pixabay)

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  ゲイリー・オールドマン、『裏切りのサーカス』、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』に引き続きアカデミー主演男優賞三度目のノミネート❗(『ウィンストン・チャーチル』では悲願の初受賞)

 

  長い間、ハリウッドでは「無冠の帝王」だったゲイリー。『シド&ナンシー』で、セックス・ピストルズの伝説的ベーシスト、シド・ビシャスを驚くべき憑依的演技で演じ切り、鮮烈デビューを飾って以来しばらくの間、カミソリのような狂気を秘めた、あるいは心に闇を抱えた屈折した人物を演じさせたら右に出る者はいませんでした。幾つものラブアフェア、アルコール依存症、家庭内のトラブル…。様々な人生経験を経て、いつからか酸いも甘いも噛み分けた自由闊達な演技、声高に叫ばなくても目の表情だけで全てを語る抑制された演技を見せてくれるように。何かに開眼した…と言うか。その分岐点が『裏切りのサーカス』だったかな😊

 

  今作品では、頑固で皮肉屋の飲んだくれ、でもシンは優しくて憎めない反骨の脚本家ハーマン J  マンキウィッツ(愛称マンク)を、かなり体重増量して(チャーチルの時はハリボテ使ったみたいだけど😅今回はあのお腹回りはホンモノみたい=笑)愛嬌とユーモアたっぷりに演じています。

 

  第二次世界大戦前、ファシズムの不吉な足音が世界に響き出していた頃。マンクは、天才オーソン・ウェルズの依頼によって『市民ケーン』の脚本作りに没頭していました。ところが、そのモデルが当時の新聞王ウィリアム・ハースト(その強大な権力を行使して、政治介入や情報操作も行っていた)だった為、彼には映画業界の大立者ルイス B. メイヤー(MGMの創設者で、彼の怪物的エピソードは枚挙にいとまがない)から様々な圧力がかかってきます。(『市民ケーン』の配給会社まで買収して妨害しようとするんだから、何をか言わんや…)

 

  一方で、当時はカリフォルニア州知事選たけなわ。「カリフォルニアから貧困をなくそう」をスローガンに、作家のアプトン・シンクレアが世界恐慌後の生活逼迫に苦しむ民衆から人気を博しており、共和党候補は旗色が悪くなっていました。メイヤーやMGMのプロデューサー、アーヴィング・タルヴァーグたちは反シンクレアの一大キャンペーンを張り、なんと彼を陥れる為のフェイクニュースまで製作していたのです。その事実を知ったマンクは、何としても『市民ケーン』の脚本を書き上げようと決意します。当時の映画人たちはある意味、上層部の権力のままに、表現の自由を奪われていたわけですよね。(今でも世界のそこかしこで起きている出来事なのかもしれませんが😅)そこにマンクは筆一本の力で抵抗しようとする。かっこいい。太っちょで飲んだくれ、口から先に生まれたみたいなかなり変則的なヒーローだけど(笑)個人的にはシェイクスピアのフォルスタッフ、思い出すなぁ😊映画会社のお偉いさんたちが会食してるとこにマンクが殴り込み?に行って、『市民ケーン』の製作意図を滔々と演説するシーンがそのクライマックス。

 

  だけどヲタクは、メイヤーやハースト、オーソン・ウェルズと丁々発止と(アルコールのせいで多少足元ふらついてますが=笑)渡り合う反逆児のマンクより、彼の「女性に弱い」フェミニストの一面が好き♥️

 

  特に、脚本の口述筆記を担当する、親娘とも年が違うイギリス人秘書リタ・アレクサンダー(『エミリー、パリに行く』のリリー・コリンズ)が、婚約者が前線で行方不明になった知らせを受け、ショックを受けるシーン。彼女をさりげなく労るマンクの眼差しが限りなく優しい😊

 

  また、マンクにいつも献身的に尽くしている為、「可哀想なサラ」と呼ばれている妻(タペンス・ミドルトン)がそのじつ、自立したキャラっていうのもちょっとしたツボだった。『市民ケーン』公開のめどが立たず、窮地に立たされているマンクにサラは…。

「子供たちは私一人で育ててきた。あなたの自暴自棄なお酒やギャンブル、浮気にも耐えてきた。あなたは私に借りがある」

「じゃあ、なぜ俺と一緒にいる?映画スター並の顔?口の上手さ?」(←マンクはこの手のジョークをいつも言ってます😅)

「あなたといると退屈しないから。ここまで尽くしてきたからには、最後まで見届ける」

20年という夫婦の歳月の重み、大人の会話。大好きなシーン😊

 

あっ、あとハーストの愛人の女優マリオン・デイヴィス役を演じるアマンダ・サイフリッド(アカデミー助演女優賞ノミネート)がどこからどう見ても1930年代アメリカの退廃的な香りふんぷん。映画『市民ケーン』を模したモノクロ画面…っていうのもあるんでしょうけど。ジャズ・エージのビッチ感満載で『グレート・ギャッツビー』のデイジー役とか似合いそう。しっかし新聞王ハースト、女優を愛人にするならわかるけど、そのために?映画会社まで作って愛人を女優にするって…。当時の財界の怪物、さすがにやることがぶっ飛んでるわ(笑)

 

   アカデミー主演男優賞、愛しのゲイリーは全く下馬評に上がって来ないけど(笑)、ヲタクの本命はいつだってゲイリー・オールドマン

 

 

  

 

  

インド社会のリアル❗❓~Netflix『ザ・ホワイトタイガー』

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(From Pixabay)

インドを舞台にした映画と言えば、突如として歌と踊りが始まるボリウッドスタイルがすぐさま思い浮かびます。しかしこれは歌も踊りもない、インド社会の「今」を鋭く抉った社会派ドラマであり、かと思えば『スラムドッグ$ミリオネア』を思い出させる一人の青年の「成り上がり」の物語でもある、なんだかとても先鋭的なインド映画といった趣。(主人公が、「クイズに勝って億万長者になるなんて、(実際には)起こりっこない」なんてセリフも😅)

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カースト最下層に生まれたバルラム(アダーシュ・ゴーラヴ。これがデビュー作だそうですが、新人らしからぬ演技❗)。彼のモノローグ「下層のカーストに生まれた者はニワトリ小屋にいるニワトリと同じ。いくら狭くても外の世界を知らないから、逃げようとも思わない。そして最後は人間に食べられてしまう」は、映画全体を貫くテーマ。彼が閉じ込められているのは身分制度という檻だけではありません。仕事に就いたら、一族郎党20人近くを養わなくてはならないという二重の檻。…大多数がそれを運命と疑いもせず甘受しているのに、バルラムは、ニワトリ小屋が自分の唯一の世界だとは到底納得できなかった。彼は、運命に従い、全てを受け入れて生きる大多数の人々の中では異質の「ホワイトタイガー」。バルラムは、「インドのカーストはたった2つ。腹が膨れている者とぺちゃんこの者」と言い放ち、腹一杯食べることのできる生活を目指して行動を起こします。地元一の富豪の家に下っ端の運転手として潜り込んだ彼は、あらゆる(時には汚い)手を使って「ご主人様」に取り入り、憧れの生活を手中にしようとしますが…。

 

  彼が仕えたのは、富裕な家に生まれ、アメリカに留学して経営を学び、アメリカ育ちのインド人の妻を伴って母国に帰国したアショク(ラージクマール・ラーオ)。アショクは「アメリカ第一主義」で、ゆくゆくはアメリカで起業を夢見ています。バルラムは、そんなアショクのアメリカ志向を内心(時代遅れだ)と思っているフシがあり、インド独自のビジネスモデルを立ち上げるべきだと考えるのです。そんなある夜、アショクと妻のピンキー(ミス・ワールド出身のプリヤンカ・チョープラー。ゴージャスなセレブ感ムンムンで息苦しいくらい=笑)のお供で出かけたバルラムは恐ろしい出来事に遭遇し、彼の運命の歯車は大きく変転していきます。

 

  夫も私もそれぞれインド人と仕事をしたことがありますが、カースト制度と宗教がいまだに彼らの意識、価値観、生き方全てを縛っているような印象を受けましたね。当時娘が看護師を目指していたので(結局方向転換してしまいましたが😅)、夫がインド人の通訳の女性(上層カースト出身)にそれを話したところ、「まともな家の女性はそんな職業につくべきではない」と言下に切り捨てられて、真底驚いたそうです。戸籍制度も整っていないので、出先で行き倒れても、身元がわからない場合が殆どだそうです。その話を夫から聞いた時、大国インドが遠くない将来、中国に互して世界経済の覇者になるだろうと言われながら、中国のリードを許しているのも、こんなところに理由があるのかな…と思ったものでした。

 

  この映画は、バンガロール(インドのシリコンバレーと言われている街)で起業したバルラムが、どうやってここまでのしあがってきたのか、自らの半生を振り返るストーリー展開。アメリカ第一主義だったアショクとは真逆で、中国とのビジネスを始めようとしている彼。「世界は茶色(インド)と黄色(中国)に支配されてるんだ❗」という彼自身のナレーションが入りますが、パキスタン問題等を内包する現在のインドと中国の微妙なバランス関係を考えると、一見成功者に見えるバルラムにも、危うさを秘めた将来が予見されるような気が…。

 

  同じインドを舞台にした映画でも、まるでアメリカンドリームをインドで体現したようなアーミル・カーンの一連の作品とは真逆の、ブラックで苦い後味。彼が今の地位に上り詰めるきっかけになる出来事、ネタバレになるのでここには書きませんが、彼が「ニワトリの檻」から逃げるにはこの方法しかなかったのか?…と考えると(彼自身は、「この方法しかなかった」と断言していますが)、いまだにインド社会が抱える問題の根深さに戦慄します。

 

  これだけリアルにインド社会に根深く存在する格差を描いた作品ながら、脚本・監督を担当したのはイラン系アメリカ人のイラン・バーラニ。ちょっと離れた視点に立ったほうが客観的に物事を描けるのかもしれませんね。

 

アカデミー賞脚色賞にノミネートされている作品です😊

チャドウィック・ボーズマンの衝撃~『マ・レイニーのブラックボトム』

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(Chicago from Pixabay)

「 ブルースの母」と呼ばれた実在の歌手、マ・レイニーがシカゴでレコードを録音する、スタジオでの1日を描いた映画。

劇中で披露されるのがレコードの中の1曲『ブラックボトム』なのです。

 

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冒頭の、南部のテント・ショー、子飼いのバンドやダンサーたちを侍らせ、人生のパワーと楽しさを爆発させるように歌うマ・レイニー。観客もマと一体になって、そこにいる誰もが幸せそう。当時、南部諸州では交通機関、学校、レストラン、娯楽施設などで黒人分離政策が適用されていました。「隔離はしても平等」の名のもとに…。勿論これは詭弁であって、理論的にはこれ以上の差別はありません。しかし、黒人のみで「隔離された」テントの中で歌い踊るマ・レイニーの弾けるような笑顔…。

 

  ところがどうでしょう。レコーディングで北部シカゴにやって来たマは、高級車に乗りきらびやかな衣装は身に付けているものの、目は虚ろで常にイライラし、白人のレコード会社の重役やマネージャーにはハナからケンカ腰。確かに、白人と黒人の融合政策がとられていた1928年当時の北部でマは白人たちと交わるようになった。ところが、彼女の口から語られるように、「(白人の)マネージャーから自宅に呼ばれたことなんて一度きり。あいつらは私の才能を食い物にしているだけ」それは、自らの才能だけを頼りに、業界の白人たちと渡り合い、ねじ伏せる闘争の日々の始まりでした。

 

  一方、マを待つ間スタジオで待機しているバンドマンたちの間でも、さまざまな人間模様が展開し、同じ境遇だからと言って必ずしも1つになれない、はじめは小さな亀裂だったものが、時間が経つに連れそれが大きくなり、取り返しのつかない分断になっていくさまが乾いたタッチで描かれていきます。

 

  幼少期に母親を白人の若者たちにレイプされ、そのトラウマから「いつか有名になって白人たちをひざまずかせてやる」という一念に取り憑かれているトランペッターのレヴィ役に、先頃43才の若さでこの世を去ったチャドウィック・ボーズマン。登場した時からもう、涙が止まらない😢なぜって、ガンに蝕まれた彼の身体は痩せ細って『ブラックパンサー』の時と比べると半分くらいになってる…。自らが置かれた境遇を受け入れられず、天に向かって「神などいない❗いるなら今この俺を殺してみろ❗」と絶叫するレヴィは、栄光の最中に世を去らなければいけなかったボーズマン自身に重なり、心抉られて画面を正視できませんでした😢

 

 

 

  自由の国アメリカ、平等の国アメリカ。能力さえあれば人種を超えて「成功できるはず」だったアメリカ。しかし、その果てにあったものは…❗❓

 

  レコーディングを終え、ギャラの200ドル(たったの200ドル!)を受け取って再び高級車に乗り込むマ・レイニー。その虚ろな視線の先には何があるのか❓…一方、マお抱えのバンドマンたちの間には、取り返しのつかない悲劇が起きようとしていました…。

 

  差別とか、ヘイトとか、時代のせいだとか、そんな単純な言葉では言い表せない様々なテーマが、「スタジオでの1日」にぎゅっと凝縮されたような映画。チャドウィック・ボーズマンの人生を最後に彩った入魂の演技をぜひ❗(マ・レイニー役のヴィオラ・デイヴィスも素晴らしい)

 

  ジャズ好きにはたまらない、当時のレコーディング風景と、マ・レイニーがいみじくも「人生そのものだ」と語る、哀切で憂いを帯びたブルースの調べが魂に染み入ります。そして、映画の最後にマ・レイニー自身の当時の貴重な音源が流れます😊

(Netflixで配信中。)