オタクの迷宮

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カンヌ映画祭衝撃の問題作、WOWWOWで放映①~『クラッシュ』

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(映画『クラッシュ』の舞台となるカナダ・トロントのハイウェイ…Pixabay)


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カンヌ映画祭で賛否両論、観る側の気持ちもざわつかせる問題作が、WOWWOWで7月に続々と放映されます。

 

  まずは『クラッシュ』(1996) R15

7/8(木)22:45~ WOWWOWシネマ

 

同名の作品(2004年…ある交通事故によって引き起こされる人種差別の問題を真正面から取り上げた社会派ドラマ)がありますが、1996年のデヴィッド・クローネンバーグ版は内容的には全く違います😅

 

  妻と倦怠期を迎えている主人公の青年(ジェームズ・スペイダー)はある日高速道路で衝突事故に遭い、そのクラッシュする瞬間、激しいエクスタシーを感じた。その後彼は事故の相手の妻ヘレン(ホリー・ハンター)と車中で性的関係を結び、彼女に誘われ、妻と共に謎めいた男ヴォーンが主催する、『クラッシュマニアの会』なるものに参加、ますますクラッシュエクスタシーに魅了されていく…というトンでもないストーリー展開(笑)だいたいクラッシュマニアなんて存在も、「自動車事故とは、破壊的ではなく生産的な現象なんだ。性的エネルギーの解放なのだ。事故で強烈な死に方をした人間の性的エネルギーを感じ、自分自身もそれを経験することだ」というヴォーンの教義❓も、こうやって後から冷静になって改めて書いていると、全くリアリティからは程遠いように感じますが、観た当初は凄く衝撃を受けたし、この映画の持つ奇妙な魅力とパワーに圧倒されました。死と隣り合わせになった瞬間にしか生きる実感が湧かない世界って、確かに存在するんだろうな…というね。

 

  その時の、奇想天外な世界観に対して奇妙に納得しちゃう感覚って、クローネンバーグ監督の脚本・演出はもちろん、クラッシュ・エクスタシーの教祖❓ヴォーン役、イライアス・コティーズの奇っ怪な演技によるところも大きいし、また何と言っても主演がジェームズ・スペイダーだからね。今でこそ髪の毛なくなっちゃって、お腹周りのお肉もタップリ、ドラマ『ブラックリスト』でイライアス・コティーズ顔負けの怪演をカマしてるスペイダーくんですが、この頃は水も滴る細身のイケメンだった……(遠い眼)

  でもただのイケメンじゃない、そのじつ、物凄くこじらせた、人間の暗黒の一面を表現できる人で。

 

  1980年代の彼は、トム・クルーズとかロブ・ロウ、ロバート・ダウニー・ジュニア等ブラットパックと呼ばれた若手俳優たちの青春映画の常連で、イヤミな金持ち坊っちゃん、かませ犬的な役回りが多かった気がする(笑)

 

  本人もそんな立ち位置には満足しなかったらしくて、1990年代に入ってからは、恋人を失った喪失感から年上の、しかも全く境遇の違う女性(スーザン・サランドン)に溺れていくユダヤ人ヤッピーの役とか(『僕の美しい人だから』)、得体の知れないオタク青年(『セックスと嘘とビデオテープ』…スティーブン・ソダーバーグの実験的な処女作で、カンヌ映画祭パルムドール。スペイダーくんも主演男優賞受賞)とか、秘書を奴隷化するヘンタイ社長(『セクレタリー』)とか、一筋縄ではいかない役ばかり(笑)

 

  この映画でも、アメリカでは「blank eyes」(今ふうに言えば「死んだ眼」❓😅)な三白眼の魅力全開、観ている私たちを、あっと驚く衝撃のラストまでぐいぐいと引っ張っていってくれます。(R15)


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