オタクの迷宮

映画・ドラマ・舞台レビュー、ケルト文化、滅びの美学、推し活のつれづれまで── 観て、感じて、考える。 "好きなモノ・人"についてしか語らない偏愛のブログ。そして今日もどこかで、ヲタクが迷走中。

『愛情は深い海の如く』感想〜“愛とは何か”に答えを出せない人たちへ

 DVDにて、『愛情は深い海の如く』(2011年)鑑賞。

 

 愛欲に塗れた男女の、どうしようもない腐れ縁を描きながら、どこか静謐で硬質な美しさを纏った映画でした。

 

--------それはなぜ❓️

 

 その答えを探るためには、まずこの作品を生み出した監督について触れておく必要があるでしょう。

 

★監督は、寡作の巨匠テレンス・デイヴィス

 監督は、英国の故テレンス・デイヴィス監督。生涯で発表した作品が9本とひじょうに寡作ながら、英国ガーディアン紙には「英国の偉大な監督の1人」と評されるなど、巨匠と言っても良いと思います。

 

 先日、我が激推しジャック・ロウデンの日本未公開映画『Benediction 祝祷』を英国から取り寄せて鑑賞したのですが、実はそれがデイヴィス監督の遺作だったんですね。(監督は癌のため2023年に逝去)

 

 ジャックの「近来まれに見る的確な映像表現の1つ」(映画評論家 ジョーダン・ホフマン氏)と評された見事な演技はもちろんですが、デイヴィス監督の、流れるような映像美の中に苦く厳しい人生の真実を描き出す監督の手法に深く魅了されたヲタク。監督の作品で観たことがあるのは、『エミリ・ディッキンソン 静かなる情熱』1本のみだったので、配信されている他作品を探し始めました。

 

------------ところが、殆んどが配信中止(泣)っていうか、もともと配信もされてなかったの❓️^^;

そこでDVDを購入することに。

 

 今回購入した『愛情は深い海の如く』は、主演が今をときめくレイチェル・ワイズとトム・ヒドルストンだと言うのに、どこにも配信されていない⋯。

 

 しかし見終わった今、ヲタクの心は満足感で満たされています。気軽に配信で観るのではなくて、気に入った映画はDVDで購入し、お気に入りのコレクションを増やしていくのもいいなぁ⋯。と思わせてくれた作品でした。

 

 ----------というわけで、早速レビューしていきましょう💗

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★『愛情は深い海の如く』あらすじ

 1950年、第二次世界大戦の爪痕がそこかしこに残っている英国、ロンドン。ある見すぼらしいアパートの一室で、一人の若く美しい女性が、遺書をしたため、ガス栓をひねって自殺しようとする場面から、この映画は始まります。

 

 女性の名はヘスター・コリア(レイチェル・ワイズ)。裁判所の判事であり、貴族の出でもある名士コリア卿(サー・サイモン・ラッセル・ビール)の年の離れた妻です。

 

 彼女は、異変を知って駆けつけた大家のエルトン夫人(アン・ミッチェル)のお陰で一命を取り留めますが、エルトン夫人は何故かヘスターのことをペイジ夫人と呼ぶのです。「ペイジ夫人」と呼ばれ、一瞬、表情を曇らせるヘスター。

 

 ----------そう、彼女は夫がいながら、不倫相手のフレディ・ペイジ(トム・ヒドルストン)と、世間の目を隠れて同棲中なのです。しかし、情熱に任せて同棲を始めたものの、教養がありプライドも高いヘスターと享楽的なフレディは何かにつけて激しい喧嘩を繰り返すようになっており、その朝も、自分の誕生日も忘れてゴルフ旅行に出かけたフレディにあてつけるように、ヘスターはガス栓をひねったのでした。そして-----------。

 

★愛とは何か?----三者三様の愛のかたち

 この映画は、愛を“ひとつの答え”としてではなく、“すれ違い続ける三つのかたち”として描いています。

 

 作品は、ヘスターとコリア卿の結婚生活、ヘスターとフレディの同棲時代(過去)と、ヘスターの自殺未遂後(現在)との間を行きつ戻りつ、描写されていきます。『Benediction 祝祷』や『エミリ・ディッキンソン 静かなる情熱』も同様でしたが、デイヴィス監督の「過去の積み重ねがあってこその現在がある」というメッセージが透けて見えるようで、それをモノローグやナレーションで語るのではなく、過去の場面をフラッシュバックのように挿入していくのが、監督の手法なのかな⋯と思いました。

 

 ヘスター、フレディ、コリア卿と、三者三様の思惑が複雑に絡み合う、息詰まるような会話劇の中で、繰り返しヒロインのヘスターが私たち観客に問いかけてくるのは、

 

愛とは何か❓️

 

という、究極的な命題です。

 

 親子とも年の違うコリア卿との、平穏でも退屈な結婚生活に飽き足らず、人誑しのイケメン・パイロット、フレディとの不倫に走ったヘスター。彼女自身、フレディとの関係が愛と呼べるものなのか、それとも孤独感を埋める一つの方法に過ぎないのかわからず、言わば「愛の迷い子」状態です。

 

 彼女との生活に飽きが来ているらしいフレディの気持ちを繋ぎ止めるのに必死なヘスターは、別れたとは言え(正式な離婚はまだ)、ヘスターの社会における評判だけは守ろうとするコリア卿の責任感を理解する余裕はないし、ましてや寝たきりの夫を介護している大家のエルトン夫人の「⋯愛ですって❓️そうね、毎日おしめを替えてあげることかしら」という悟りの境地に到達できる心境ではありません(笑)

 

★トムヒという名の危険物(笑)

 自分宛の遺書を読んで、(男として愛する人を守れなかった自分)に激昂、当の相手のヘスターに逆ギレして別れを切り出すフレディもいいかげんお子ちゃまなんですよね(笑)ヘスターに別れを告げ、テストパイロットとして南米に旅立ったフレディですが、サヨナラ言ったクセに部屋を出て行く時、"I miss you"って涙ぐんでたから、どうせ仕事が終われば「やっぱり僕ちゃん寂しかった〜😭」って帰ってくると思う。演じてるのが、私生活でもコミュ力オバケってウワサのトムヒだし(笑)

——だからこそ、ヘスターがどうしようもなく彼に溺れてしまうのも、どこか理解できてしまう。

 

 この2人、「あなたは私の気持ちなんてちっともわかんないのよ」「ちょっと学があるからって俺をバカにすんな。俺は空の英雄なんだぞ」って痴話喧嘩と離縁復縁を繰り返しながら、結局はおしめを替えるまで連れ添うんじゃないかと思うのはヲタクだけ❓️(笑)

 

★シーツの海の中で

 作品中特筆すべきは、ヘスターとフレディのベッドシーンの美しさ。シーツの海の、2人の絡み合う四肢だけで表現するのは、これまで見たことがないですね🤯ヲタク今まで史上最も美しい愛の交歓シーンは、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013年 ジム・ジャームッシュ監督)だと思っていたけど、それに匹敵するかも。-------あっ❗️2作品ともトムヒがヒロインの相手役だわ(『オンリー〜』のヒロインはティルダ・スウィントン)。何かの偶然かしら。--------でも、彼の、ギリシャ彫刻のような肉体の、冷たい、石膏のようなイメージが、生々しさを感じさせなくてヲタク好みなのかもしれない(笑)

 

★男と女のあいだには

 しかしね、ヲタクが恋愛映画を観るたびに必ず思うこと。

 

男と女のあいだには

深くて暗い河がある

誰も渡れぬ河なれど

エンヤコラ今夜も舟を出す

 

 河の深さや暗さが怖くて、舟を出す勇気が無かった(今ももちろん、無い 笑)ヲタクには、元来恋愛映画を語る資格は無いのかもしれないね(笑)

 

★今日の小ネタ⋯トムヒの恋愛模様

 トムヒと言えば、あの恋多きディーヴァ、テイラー・スウィフトの元カレ。テイラーはカレシと別れた後、元カレへの恨み節を新曲で語るクセがあるので有名だけど、トムヒの場合、それやられてもノンシャランとして気にもせず、ますます俳優のキャリアを磨いて一流に上り詰めたのはアッパレ至極(笑)つい最近別れたばかりのジョー・アルウィンなんて、テイラーと別れ、しかも新曲のネタにされたかとでかなり精神的にキテるってウワサだし⋯。

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※アツアツだった頃のテイラー・スウィフトとトム・ヒドルストン

 

 今回、よくよく考えるとかなりクズ野郎なフレディ役でも、愛嬌があってどこか憎めないのは、ひとえにトムヒのあのスウィートなスマイルのせい(笑)